第11話異物混入 4

「そういえばね、コレ。

涼君の学校のお友達が、お手紙くれたのよ。


訓練が始まれば、学校に通う時間なんて無くなる。

お別れを言う時間を取ってあげたい所なんだけれど、そうもいかないの。


だから、先生に頼んで、皆に涼君宛てのお手紙を書いて貰ったのよ。

身体を起せるようになったら、読むといいわ」



そう言い、紙の束をベッドの端に置く。





あいつらの手紙なんて、見たくない。

どうせ、ロクな事、書いてないんだ。



訓練が始まったとしても、学校へ通う必要がなくなるのは、ラッキー。

もう、あいつらと会わなくていいなんて、生きててよかった。

人生で初めて、生きている事に感謝する事が出来た。

その理由が、 学校へ行かなくていいから だなんて、笑える。




「捨てて下さい。読みたくないです」



「どうして?皆、涼君の事話したら、驚いていたわよ。

涼君は、この世界を救うヒーローになる為、訓練するって言ったらね。

皆、涼君と連絡を取りたいって、それは・・・・」




ヒーロー。

その言葉が、頭に引っかかる。


今まで、ゴミ扱いされていた俺が、ヒーロー?

皆に必要とされ、感謝される存在になれるというのか?




「俺は、英雄になるんですか?」




「魔王を倒したら、英雄になれるわ。

でも、現時点では、ヒーロー止まり。

英雄になれるよう、一緒に頑張りましょうね」



そう言い、真鍋さんは俺の頭を撫でた。




・・・・頭を撫でられるなんて、子供に戻った気分だ。


「でも、そうなるには、まだ身体が不完全だわ。

まずは傷を治す事が先ね」



そう言い、ベッドの右側に回ると、布団の中に手を突っ込む。




え?ちょっと待って!

何する気なんだ?!




焦る俺を見て、真鍋さんは笑いながら・・・・。



「何もしないわよ、安心して。

君に見せたい物があるの」



そう言い、布団の中から、俺の右腕を取り出した。




「これ、見える?」



久しぶりに見た自分の右腕。

その腕には、腕輪のような物がくっついていた。




「これはね、脳に埋め込んだIDチップと連動しているの。

訓練により、ここから君は、剣を取り出す事が出来るのよ。

カッコイイでしょ?」



「剣・・・?」



あまりにぶっとんだワードに、脳がピンと来ない。




「詳しくは、訓練の時に話すわ。

この腕輪と脳のIDチップ。

これがあれば、君はきっと英雄になれる。

だから、今はゆっくり休みなさい」



そう言い、布団に右腕を戻した。

真鍋さんの手・・・暖かったな・・・・。


そんな余韻に浸っていると・・・




「疲れたでしょ?ごめんね。

また来るから、お大事に」



そう言い、室内から出て行った。




俺が英雄か・・・・。



あ!忘れてた。

トイレとか食事の事を聞こうと思っていたけれど、すっかり話忘れてしまった。



でも、まあいっか。

次会った時に聞ければ。



もう学校へ行かなくていい。

それだけでも、大収穫だ。



そして再び起こる強烈な眠気。

久しぶりに人と話したら・・・・眠くなった・・・・。



そのまま強制的に意識は途切れる。

今の俺は、まるで睡魔にでも、支配されているみたいだ。

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