第9話異物混入 2

天井を見るしか、やる事がない。

そういえば、俺、ご飯とかって、どうやって食べるのだろう?


トイレは?

風呂は?



浮かぶのは、疑問ばかり。





左上に点滴が見える。

感覚はないけれど、恐らく、俺は点滴をしている。


食事も、俺なんかにイチイチ食べさせるのは、面倒だから、

流動食とかにされちゃうのかな・・・・?




これからは、点滴が俺の命綱になるのか・・・・。







静かな室内に、



ガラガラ・・



再び、扉の開く音が鳴り響く。



また、母が来たのかな?

俺にわざわざ会いに来る人間なんて、母親しかいない。


何か言い忘れた事でもあるのだろうか?

・・・・って言っても、どうせ、愚痴に決まっている。

あの人は、俺を貶す事しかしないから。





目線を再び、天井へ戻した。

誰かがココに来る事を、俺は 楽しみ と思えないから。






「目、覚めたんだね」



母じゃない・・・・女の人の声が聞こえた。


俺は、視線を声のした方向へと向ける。

そこには、見知らぬ女性が立っていた。





「初めまして、北条涼くん。

私は君の管理担当者の真鍋です、よろしくね」



そういい、右手を差し出した。



握手をしようとしているのだろうか?


・・・って言っても、俺は指一本動かせなければ、声だって出ない。




「・・・・あ!そうだった。

まだ、動けないんだったわね、ごめんね」



そう言い、自分を真鍋と名乗った女性は、ニコっと笑った。


まだ、動けない・・・?

今、真鍋さんはそう言った。

って事は、俺は、動けるようになるのだろうか?


少し希望が芽生えた。





「偶然だった。

もう、運命としか言えなかったわ。

君に、出会えた事は!」



突然、ドラマでも始まったか?のように、真鍋さんは目を輝かせ、語り始めた。

真鍋さんが言う、 君 とは、俺の事なのだろうか?


疑問に思うけれど、喋れないから、一方的に聞くことしか出来ない。






「君がココに運ばれてきた時、身体に電流が走ったの。

この子しかいない! そう思ったわ。


それでね、DNAを調べてみたら、ピッタリ一致!

すぐに、IDチップを埋め込むよう、お願いしたの!」




DNA・・・・?IDチップ・・・・?



なんか俺、意識がない間に、とんでもない事をされちゃったりしてる?

全身に、冷や汗が滲んでくるのがわかった。






「脳に直接IDチップを埋め込んだから、今は動く事が出来ないけれど、

時間が経ち、傷が馴染めば、動けるようになるから、そうなれば、訓練開始よ!

それまで、ゆっくり休んでね」



言いたい事をいうと、満足した表情で、真鍋さんは出て行った。



ん?

んんん?



頭の中が混乱してる。



俺の脳には、IDチップが埋め込まれてるって事は・・・・・。

勝手に頭の中をこじ開けられたって事なのか?!




あまりの出来事に、冷や汗も消え失せていた。


なんか・・・・。

色んな事がありすぎて、理解出来ない・・・・。




難しい事を考えたら、急激に眠くなった。

どうせ指一本自由に動かす事が出来ないし、俺は眠る事にした。



身体が動くようになれば、詳しく事情を聞けばいい。

今は、何も考えたくない。

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