第8話異物混入 1
目をゆっくり開いた。
真っ白な天井。
ここは、保健室・・・か?
起き上がる為に、手を動かそうとするが・・・・、動かない。
まだ、寝ぼけているのだろうか?
手が動かないのなら、顔だけでも・・・・。
周囲を確認する為、横を向こうとしても、首も動かない。
金縛り?
なんなんだ?
段々目がはっきりしてくる。
見た事がない真っ白な天井。
いや、天井だけじゃない!
カーテンも壁も、全てが真っ白だ!
ここは、保健室じゃない。
保健室なら、白以外の色があるから。
じゃあ、ココは何処なんだ?
目は見えてきているのに、相変らず指一本足りとも動かす事が出来ない。
「・・・・っ!」
声も出ない。
俺、どうしちゃったの?!
さっき倒れた時に、頭を打って、全身麻痺とか?!
死なずに、生き残ったんだ・・・・・俺。
死ぬ事も出来ず、これから俺は、自分の意思で、指一本動かす事が出来ないんだ。
もう、俺、何の為に生きるんだろう?
絶望感に追われた。
ガラガラ・・・。
ドアの開く音が聞こえる。
耳は正常に機能しているみたいだ。
音を認知出来たとしても、そちらを向く事が出来ないから、意味がないといえば、意味がないんだけど。
でも、音が聞こえるだけ、幸せって奴か、そう自分に言い聞かせた。
カツカツ・・・・。
ヒールの音。
段々こちらに近づいてくる。
ガシャ!
カーテンを勢いよく開ける音が聞こえると同時に、聞きなれた声が聞こえた。
「まさか、アンタが役に立つ日が来るなんてね」
母の声だ。
「・・・・」
声は出ない。
「アンタって、本当に可愛くない子だわ。
でも、アンタにしては、お手柄じゃない!
アンタが親孝行出来る子供だとは、思わなかったわ。
これから、また検査するみたいなんだけど、痛い所とか病気な箇所は言うんじゃないよ?
めんどくさい事になるから。
黙って寝てなさい、わかったわね?」
それだけ言うと、母親は室内から出て行った。
静まり返る部屋の中。
そんな事、わざわざ忠告しなくても、俺は喋る事が出来ないのに。
母が言う親孝行って、俺がこのまま一生ベッドの上で生活する事を指しているのだろうか?
もう、母は、俺の面倒を見るのも嫌なんだ。
じゃあ、これで良かったのかも知れない。
俺は、このままベッドの上で死んでいくのがお似合いなんだ。
・・・・・耳なんて、聞こえなくていいのに。
目から涙がこぼれた。
あぁ、俺は 泣く って事も出来るんだね。
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