19 ヒカルとふたりで④

 ひとつボタンが外されるたび、ドクンドクンと胸から大波が押し寄せて息が苦しくなる。

 今にもシューシューと湯気を立てそうなほどに、百子の顔と耳、首も指先も、全部が真っ赤になっていく。

 ワイシャツのボタンが全て外されて袖を抜かれた。ブラの上に着ていたキャミソールも、裾から引っ張り上げられ脱がされる。

「ああっ、だめ、もうだめ! しんじゃう!」

 限界を迎えた百子は、はだけた上半身を腕で覆いその場にうずくまった。

「えっ、あれ!? 百子ちゃん真っ赤! もしかして恥ずかしかった? ごめんね!」

 とヒカルは慌てて謝った。その直後、

「でも百子ちゃん、普段とのギャップがすごくて可愛い。超新鮮。こんなすぐ照れたり恥ずかしがったりするところ、あたししか知らないよね」

 そう続けて彼女はニマッと笑った。

「なんか嬉しい」

 百子の目の前にしゃがみこんで、俯く顔を覗き込む。

 改めて言葉にされるとものすごく恥ずかしくて、百子はますます真っ赤になった。

「や、やめてよそんな。からかわないで」

 困った顔のまま、弱々しくヒカルを睨みつける。

「まあまあ、とりあえず着よっか!」

 とヒカルは話を強引に戻してごまかすと、さっきのワンピースを手に取り、ふわっと百子にかぶせた。

 百子はしゃがんだまま、スリップドレスとやらに腕を通した。

 胸元と裾の繊細なレースが特徴的だ。

「わーッ! すごく可愛い! ね、これも着て着て」

 と彼女は白いクロシェットをそっと百子に着せた。

 全て身につけ終え残りの制服を脱ぐと、百子はその場で立ち上がり、くるりと一周してみせた。

「超似合ってる〜! やっぱり丈は少し長いけど、それはそれでいいかも」

 ヒカルは頷きながらその姿を目に焼き付けた。

「ありがとう……」

 なんだかんだで百子も友達の服を借りられたのが嬉しくて、思わず笑みをこぼした。

「さてあたしも着替えるか!」

 そう言って彼女は百子とは対照的に、ぱっぱと脱いでささっと服を選び、あっという間に着替えを終えてしまった。下着姿に三秒と見惚れる余裕すら与えてくれなかった。その手際の良さを目の当たりにし、百子は恥ずかしがった自分が恥ずかしくなった。

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すきのカタチ 相浦チカ @chi_a76

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