第12話疑惑 3
「そんなこと初めからわかってたじゃん。
大体30過ぎて金髪でサングラスぶら下げてるような奴なんて、何処も雇ってくれないよ。
それに口を開けば二人で下品な会話ばっかりしてさ。
壁は薄いし部屋は隣だし、私だってうんざりしてるんだからね!
あんな男出て行って貰ってよ」
今まで我慢していた糸がプッツリ切れる。
「何もそこまで言う事ないじゃない。お姉ちゃんの好きな人をけなす気なの?」
「お姉ちゃんだってさ、本当にあの男が好きで一緒に居るわけじゃないでしょ!
今まで誰にも相手にされなくて、初めて自分に声をかけてくれたから一緒に居るだけで、結局はヒモみたいなモンじゃない!」
「お姉ちゃんがアンタと違って頑張ってるの!素直で優しいからあんな男に引っかかって・・・・・」
「素直で優しい?何処が?
あの人はあの男と一緒にいつも私の事をバカにして嘲笑ってるんだよ!全然優しくない!私にとってはただの足手まとい!
家族でも何でもない!」
「アンタがお姉ちゃんの事をけなす権利なんてないの!
そういう所がお父さんに似て可愛くないんだから!
早く出てって!」
そう怒鳴ると、母は私の事をリビングから追い出した。
「・・・・・はぁ」
溜息しか出ない。
久しぶりに母と会話出来たかと思ったら、最後にはこうなる。
母と会話した5分。
5分あれば岡野さんへメールを1通送れた。
無駄な時間を過ごした。
この家では私に意見を言う権利なんて無かったんだった。
でしゃばったマネをした私が悪い。
早くここから抜け出したい。
・・・・・・・・・・・・岡野さんと?
岡野さんと真剣に向き合ったら、私はこの家から抜け出す事が出来る?
この家から抜け出し、私の事を心から愛してくれる人と一緒に生活出来たら毎日が幸せだろうな・・・・・。
母と口げんかをした後なのに、妙に気分が落ち着いている。
それはきっと岡野さんのお陰。
岡野さんが居る事で、私は明るい将来について想像する事が出来たから落ち着いていられるんだ。
無駄な時間を使っちゃったし、早くシャワーをして部屋に戻ろう。
1通でも多く岡野さんにメールして関係を近づけたい。
そしてこの家から早く抜け出したい。
To 大西舞子
Sub 無題
Text 私は岡野さんと距離を縮める事が出来ますかね^^;;
送信。
そんな事を聞かれても困るよね。
でもきっと彼はこう答えてくれる。
To 岡野裕也
Sub 無題
Text 出来ます! 何度も言い過ぎてしまって 嘘っぽく聞こえてしまうかも知れませんが
僕は大西さんと真正面から向き合って 幸せにしたいと思っています
真面目に頑張ってる人は 幸せになる権利があります
僕が必ず大西さんを幸せにします
すぐに返事は届いた。
嘘じゃないんだよね?
信じたい。
私はその手を取り、一刻も早くこの家から抜け出したい。
全部投げ捨てて、私の事を愛してくれる人と ゼロ からやり直したい。
暇さえあれば、たくさん岡野さんへメールを送信した。
岡野さんもマメにメールを返してくれた。
一刻も早く岡野さんとの距離を縮めたい。
自分の事を知ってもらいたいから?
岡野さんの事を知りたいから?
早くこの家から抜け出したいから?
どれが正解か?なんて考えない。
ただ私はとにかく一刻も早く一歩前に進みたかった。
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