第25話

 不可解過ぎて理解できない状況と大切なペットボトルをどうするべきかという大問題をいきなり突きつけられた俺は低い唸り声を出しながら、白煙に満ちた部屋の床に膝まづいて頭を抱えた。


 消防に連絡するべきか、自分で何とかしてみるべきか・・・。部屋の中が煙で満ちているとはいえ、火の気は全くないのだから消防へ連絡しようもないし、説明も上手くできないような気がした。しかしそれ以上に俺は煙が噴き出しているようなペットボトルの中で、爪が一体どうなっているのかが気がかりでならなかった。俺の唯一無二の存在がペットボトルの中で得体の知れない何かに犯されていると考えるだけで気が狂うような感情に胸が潰されそうになった。


 悩み始めてからきっと数分しか経っていないと思うが、割と長く考えていたように感じられた。俺は必死に悩んだ結果、恐怖と不安に震える自分を叱咤し、最善の手段をとるための覚悟を決めた。もうこの状況で手をこまねいている場合ではないと判断したのだ。


 ふうう、と深呼吸をしてから引き出しの奥へと思い切って右手を突っ込み、白煙の中、手探りでペットボトルを掴み出した。今も相変わらず尋常ではない量の煙を吐き出し続けているペットボトルは煙を出しているところ以外、形も重さも普段と変化はなかった。その中身をよく見てみようと少し顔を近づけた瞬間、俺に向かって攻撃するかのように一層激しく煙が噴き出された。


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