第20話

 世の中にはフウコのように頭が悪く、貞操観念など生まれた時から持ち合わせたことがないような女が溢れている。そんな野生の動物と大差がない女という生き物はどこかで飼育されてしまえばいいのだ。


 女は絹の糸を体から吐き出す蚕のようなものだ。絹を身に纏う者たちは絹地の元となった蚕の姿や繭を想像することなどないだろう。糸を紡いだ後、蚕たちが打ち捨てられていくことも知らずに、手触りのいい生地をだけを愛でて他のことに関心は持たずに終わる。それと同じように女も俺に美しい爪を提供し、搾取された後は人知れず勝手に朽ちていけばいいと思っている。蚕のことのように、女のその後など俺は気にも留めない。


 「そうか。じゃあ手術の金は後日渡すから、明日にでも病院に行って来いよ」


 「手術はするよ。その代わり、しょうちゃん病院まで付いてきてよぉ」


 さすがに三度目の堕胎となると無能な女にも被害者意識が芽生えてくるものなのか。フウコは今まで一度も口にしたことのないような我儘を言いだした。


 「俺が付いて行ってどうするんだよ。ひとりで行け」


 「しょうちゃんの言うことは聞くから、今回は付いてきて」


 「我儘言うな。初めてじゃないんだからひとりで行けるだろ?」


 フウコはまた泣きだした。


 「一度でいいから三人で外を歩いてみたいの。一瞬でいいから家族になりたいの・・・家族でありたいのよぉ」


 俺は溜息しか出なかった。

 



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