第7話

 稀に自ら爪を渡してくる女がいた。  


 本来爪とは、


 「会えない時も君を身近に感じていたいから、ほしいんだ」


 「君の爪は美しいね。本当にきれいだ。僕の宝物にしてはいけないかな?」


 などという、つまらないねだり文句を言ったり、金をチラつかせるなどして、懇願して得られるものなのだが、遠回しに女の爪が好きだと言っただけで、自分の爪を持っていてほしいと渡されたことが今までに数回あった。


 爪を自ら渡してくる女というのは特別、愛に溢れた優しい人間だったわけではなく、俺という存在に依存している精神的に弱く、尽くすことが恋愛の本懐であると勘違いした女だった。変わった女だな・・とは思ったが、気にしなかった。本体がどうであれ、爪は爪だ。渡してくれるものが爪であればそれでよかった。しかし進んで渡された爪は苦労して集めた爪よりも価値は低い感じがした。それでも渡されるものを拒むほど俺は自制していなかったのでありがたくいただいておいた。


 

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