第4話
俺は電気の付いていない薄暗い和室で宝探しをするため縁側から差し込む夏の日差しの力を借りた。這うような低い体勢で畳に顔を近づけた。日差しが届いている部屋の明るい方に体と目を向け、その体勢のまま、ずりずり・・ずり・・と、畳に体を擦らせて目玉をきょろきょろ動かしながら、なり振り構わず俺だけの愛の付属品を求めた。その姿はまるで蛇のようだったと思う。
その時のことを思い出すと、親戚の家の中でしてはいけないことをしているという背徳感や、それに抗えないほどの好奇心が畳の匂いと共に蘇って、懐かしくも切ない気分になる。
そして純粋さを忘れ、欲にまみれた大人に成長してしまったことに対しての罪悪感も頭から離れることはない。幼い頃のまま、女を愛することができる男に育っていれば、爪など集めることなく、つまらないながらも人が在るべき真っ当な人生を送れていたのであろうと、もう一つの人生に思いを馳せることもあった。
しかしそんなセンチメンタルな思い出にいつまでも浸っているわけにはいかないし、今の俺自身が女を愛するような人間に変わることはきっとないだろう。つまり考えるだけ無駄ということなのだ。あの夏休みの思い出はあくまで、思い出。いつか頭の中に鍵をかけて封印しなければならない宝物であり、忌み物なのだ。
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