第3話
そして従妹の爪切りが終わると、叔母は切った爪の乗った新聞紙を捨てに部屋から出て行った。従妹も叔母に付いてどこかへ行った。俺は靴を脱いで縁側から部屋に上がり、新聞紙の上に乗らずに畳に飛んでしまった従妹の爪が落ちていないか探し始めた。
まるで変態のようなことをしているが、大人になった今とは違って当時は普通に接している時にはじっくりと見ることのできない従妹の可愛い爪を手に取って眺めてみたいと思っただけで、性的な欲求に動かされて行った行動ではなかった。
その頃はまだ爪ではなく、普通に従妹(女)を愛せていたのだ。切った爪を探し求めた奇怪な行動は、その気持ちゆえの所業であった。幼いながらも俺は、従妹の爪は従妹本人の体の一部であって、愛しい人の『愛の付属品』だと信じていたのだろう。
まだ愛や恋に目覚めていたわけではなかったが、あの頃のことを思い出すと、どうにかして従妹の爪を通じて、親戚という関係以上に親しくなりたいと思っていたのではないかと、自分自身のことを分析してしまうのだった。そしてその後どうして大人になった自分が変質的に爪を集めるような人間に成長してしまったのかが不思議に思えて仕方がなかった。
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