第10話 大まかにも限度がある
本屋で悩んでいた…。
僕は、外国の絵本を集めている。
『ジャケ買い』という感覚で気に入った本を買って、リビングに飾る。
そう僕にとっては『本』は読むだけでなく…インテリアでもある。
大事なものなのだ。
アナログではあるが、紙媒体の良さというものは確実にあると信じている。
ちなみに仕事では紙媒体反対派だ。
無駄だし…かさばる探すのが嫌だ等の理由からだ。
大体、ECO活動とか掲げておいて、その告知を紙で貼りだす行為に矛盾を感じないのだろうか?
という社内アンケートを書いたが…その返信は未だにない。
きっと総務部に嫌われたと思っている。
まぁいいけど…。
問題は、この本を買うか…否か…。
割と高い…2800円…。
転職前なら迷わず購入しただろう…今は…う~ん…だ。
そういえば、昔、『通』に絵本集めを話したとき。
「ソレいいな…おしゃれだ」
などと言い、彼も絵本を購入していた…たしか『ももたろう』だったか『浦島太郎』だったと記憶している。
伝わっていない…そう思った。
そんなことを考えながら、本屋を愉しむ…本屋とは静かで好きだ。
店内に流れるクラシックは静かで、決して空間の邪魔にならない音量を保っている。
本選びは何者にも邪魔されたくない、僕の大事な時間だ。
そして…僕の大事な時間を邪魔するのは、大体、『通』である。
時間は午後8時…待ち合わせまで1時間あったはずである。
「おう!桜雪?なんかね…早く着いちゃった、早く来て! あとね、俺の友人2人連れて来たから…えっ?いや、お前の知らない奴だけど」
(マジか…初対面の人とカラオケ…僕には敷居が高いな~)
困った…行きたくない…。
すでに3時間近く待たされて…あげくに初対面の人とカラオケ…なんだろう…ストレスが半端ない。
カラオケってストレスを発散できるものでは無かったのだろうか…なぜにストレスを感じるために、僕は3時間も待っていたのだろうか…行きたくない…帰りたい…。
もう…本どころじゃない。
カラオケで頭がいっぱいになった。
アクセルを踏む足取りが重い…なんなら、目の前で橋が落ちてくれないかな~とか思ったりする。
なんだかんだで、カラオケボックスに着くと、『通』が待っていた。
「いやぁー遅いよ! だいぶ待ったぞ」
(待っていたのは僕の方だ…そして遅くは無い…30分以上前倒しで来ているんだ)
「わりぃ、わりぃ、GWでさぁ~地元の奴と会ってたんだわ、それでお前の話したら、会いたいって言うから連れて来ちゃった」
(なんの話をしたんだろう…初対面の人に会いたくなる話って…相当なエピソードじゃないだろうか…)
そして…言う割には、『通』のツレは車から降りてこない…興味無いじゃん。
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