第三夜
第9話 ラーメン屋の失態
同僚から遊びに誘われた。
世の中は、GWど真ん中…僕は休日出勤真っ最中である。
「夜ならいいけど…メシでも食いに行く?」
「通も誘ってみて」
同僚がそういうものだから、通にメールを入れる。
通はガラケー派だ、こういうときに面倒くさい。
いや…こういうときだけではなく、面倒くさいのだが…。
「田植え手伝うんだ」
そうだった、通のGWは実家の田んぼの手伝いだった。
「7時ならいいぞ」
「いいんだ…」
仕事を終え、僕は隣の市まで移動する。
同僚から連絡が入る。
「9時にカラオケボックス集合」
「9時?」
やることがない…帰ろうかな…3時間近く他人を待つ…オッサンを待つ…。
カラオケボックスに集合と言うことはメシは無いな。
僕は、ラーメン屋で早めの夕食を済ませた。
「大盛り無料ですが」
「あっ、じゃあお願いします」
雑誌を開いてラーメンを待つ。
「お待たせしました。ライスでございます」
ライスが先に来たということは、ラーメンもすぐ来るんだろう。
僕は席を立って雑誌を戻しに行った。
「ありがとうございました」
「えっ?」
店員が代わる代わるに「ありがとうございました」を繰り返す。
「えぇー」
滅茶苦茶、席に戻りにくい…。
食券制で無かったら…心が折れて帰っていたかもしれないほどのダメージ…。
そっと席に戻る…。
「お待たせしました、淡麗塩ラーメン大盛りでございます」
「あっ…はい」
なんだろう…すごく食べにくい…。
早く食べて出なければならない…そんな気持ちになってくる。
(早く立ち去りたいのに…なぜに、大盛りに…)
きっと店員も全員思っていたはずだ。
『早く帰ってくれないかな~』
そのくらい、店内の空気は淀んでいた…。
ここのラーメン好きだったんだけど、しばらく来れないな~。
この時ばかりは、美味いとか、不味いとか、考えていられなかった。
食べ終わると、僕は席を立ちあがる。
「御馳走様でした」
若干小声でお礼を言って足早にラーメン屋を出ようと出口へ向かう。
「あ~りがとうございましたー」
当然、繰り返される店員さんからの御返礼…心なしかいつもより声が小さいような…間が悪いような…。
(気のせい…気のせい…)
僕は、早歩きで店を出る。
(先払いで良かった…ここで、お会計とか、ちょっと耐えられない)
なんで僕が恥ずかしいと思わなければならないのか…。
車でしばらく走って、僕は本屋さんに向かった…。
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