第7話 エビ刺さる

「つまみが欲しい…」

 生飲んでるからね。

『通』が希望したもの…「川エビのから揚げ」「枝豆」。

 うん…THEおつまみだね。


 それにしてもプーアル茶が減らない…5~6杯分?とっくに超えてる…独り5~6杯ってことか…。

『通』に言わせると『同僚』は鈴木雅之に似ているらしい。

 そんなことを言い放ち、ロンリーチャップリンを歌わせていた…。

「俺が女の方を歌う!」

『通』の18番だが…相変わらず聞くに堪えない。


『通』の好きなアーティスト 鈴木雅之 吉川晃司 ユニコーン バービーボーイズ。


 歌いながら思い出を語る…曲の途中でだ…ほぼ歌ってない。

「あの娘覚えてる?俺、あの娘をカラオケ行ったとき、コレ歌ってーフラれたんだわ」

 バービーボーイズの『目を閉じておいでよ』

「桜雪、女のとこ歌って!」

 歌ったが…まぁ『椿鬼奴』しか脳内再生されない…なんなら『RG』もチョイチョイ入ってくる。


『通』はTVを観ないのだろうかというくらい、流行を知らない。

 僕も疎い方だが…まぁ知らない。

『同僚』は流行歌しか歌わない。

「知らない…誰?」

 の連発。

『ピコ太郎』も『PERFECT HUMAN 』も知らない。

「お前ん家…もしかしてTV無い?」

「あるよバカ!」

「いまだアナログとか?」

「バカにするなよ!」

「いや、ほらっ、お前の地区、土曜日夕方に飲食関係が閉まる地区だからさ」

「うん…そこはホントどうかと思う…」

「うん…何処でも良かったんだけど…3軒回るとは思わなかった」

 同僚が呆れたように言う。


「ところで…この川エビのから揚げ…やたら刺さらないか?軽く血の味が混ざるのだが…」

「美味いだろ?」

「うん…美味いよ…だが刺さるんだが…」

「そういうときは枝豆で中和だわ」

(なんで?何を中和するんだ?)

「レモン掛けたら味変わるんじゃないか」

 同僚は川エビに飽きたらしい。

「味の問題じゃないんだ…刺さるという問題なんだ」

「レモンかけちゃえよ」

 かけてみました…。

「エビの生臭さが増したな…」

「…………」

 僕の一言で黙る2名…。


「プーアル茶…まだ出るな」

『通』は注ぐたびにこぼしている…1杯目からこぼさず注げたことはない。

「魔法だな…ここまで出ると…あんなにこぼしているのに」

 僕がコーラを飲みながら呟く。

「あぁ…無限ってことはないよな?」

『通』が真顔で言う。

「あぁ…ドラえもんじゃあるまいし…どうせなら、プーアル茶じゃなくて金が湧く茶器が欲しい」

「金は欲しいね…」

 同僚が枝豆を食いながら頷く。

「実は…親父に多額の借金があってな…最近、弁護士事務所通いなんだよ」

 僕が溜息混じりにしゃべる。

「マジで!…うん…うん…オマエの人生って…イベント多いよな…」

『通』が頷く。

「そういえば、『同僚』!オマエ自己破産したよな?」

「うん」

「マジで?」

 僕は知らなかった…。


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