第6話 早く着いた

 彼女を事務所に送った。

 出勤早々に予約が入ったようで、店から電話が来ていた。

「早く来いって…行きたくない…着いたら、少しゆっくりしたいのに…」

 彼女は風俗嬢。

 彼女と表記しているが…恋人とは程遠い関係だ。

 この夜、彼女は生理も近く、イライラしていたのだ。

「そういう日ってあるでしょ!」

 この夜、幾度かそんなセリフを聞いた。


 待つこと1時間…途中で『同僚』からボヤけた写真が送られてきた。

「なんなんだろう…」

「なに?」と返すと、メニューの写真が送られてきた。

「だからなに?」と返すと「今、ラーメン屋」と返信されてきた。

(ホントになんなんだろう)


「待ったか?『同僚』がどうしてもラーメンが食いたいってわがまま言うから、俺のおすすめの店に行ったんだ」

「そうか…オマエ…歩いてるな…」

「ん…そしたら閉まってるの」

「土曜の8時に閉まるのか…やる気ないんじゃないか?」

「ホント…そして、2軒回ったの…全部閉まってて…いつものトコにしたわ」

「うん…オマエ、足くじいて歩けないんじゃ…」

「どうした?行こうぜ」

「オマエ…足…」

 僕は同僚に

「アイツ足、歩けないって」

『同僚』は笑っていた…。


「桜雪!ソコは俺の指定席だ」

 僕が座ろうとした場所は『通』の指定席らしい。

 そういえば…暗黙で、いつもそうだったような気が…。

 しかし…僕がソコに行ったのは…ソコが空いていたからだ…『通』が一番最初に部屋に入り違う場所に座ったからだ。

 座り心地が悪かったのかもしれない。


『同僚』が無言で曲を入れる。

 コイツはコイツでマイペース…実は一番サイコな性格だと僕は思っている。


「とりあえず…飲み物を頼みたいんだが…」

 2人は聞いてない…。

「おい…僕だけ頼むぞ…」

 受話器をあげると…

「俺、生!と『同僚』はプーアル茶のセットだ」

 どんな組み合わせだ…飲茶と生を同時に頼むのか…。


 プーアル茶は美味しかった。

 そして減らなかった…結局4時間ほど居たのだが、最初から最後まで絶えることは無く注がれ続けた…。


「俺…チャゲに似てない?」

「うん…ファンに謝れ…まずは…」

「俺…自分でそう思ったの、コレ見て」

 通がポケットからCDを取り出した。

(わざわざ持ってきたのか…)

「似てるわー…俺チャゲだわー」

(お前はチャゲじゃない…ハゲだ…)

「まぁ…オマエが何であれ…チャゲは大変だよな」

「あ~飛鳥がね…あーだから」

 歌い終わった同僚が話に混ざる。

「アスがなークスリだからな…よし俺歌うわ、モーニングムーン」

(古!…)

 自称チャゲが歌いだす…。

「なんか雰囲気が…桜雪…アスを歌え」

 僕にマイクを渡す『通』

(どうでもいいけど…飛鳥はアス扱いなんだな…)

 歌いながら思った…この頃からやってたんじゃないかな…明け方の月…倒れ込む女…。


「シャブ&飛鳥…シャブアス」

 ボソリと僕は呟いた。


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