第28話 春人 神の神殿へ
神の塔を制覇した春人一行。そのまま次の塔も無事制覇。
アクセルは戦士として成長し、立派にシキガミとして頭角を現していた。
新たに救い出した神の名付け親として、ミリアが選ばれる。
「本当にわたしが……わたしでいいの?」
「ええ、よろしくミリア。あなたにもらったルナという名前。大切にするわ」
ピンク色の髪を持つ、ミリアとうりふたつの神ルナ。
同調も成功し、ミリアは銃火器に優れた戦士へと成長する。
「これで二人だな」
「残る名無しの神はあと一人だ」
シーラのいる司令室で会議に入るおなじみメンバー。
「最後の一人は教祖の神殿にいる」
「自分の手元で管理しようってことか」
「隠し玉があるのかもしれないわ」
「確かめたいことがある。シーラ」
「なんでしょう?」
「俺の言う通りに動け」
そして春人とシーラの話し合いが始まる。
モニターではグラースによる演説が始まっていた。
『楽園の諸君。今週もシキガミの力により無事、生き延びることができた。この平穏を維持できるのも……』
「代わり映えのせんやつだ」
「あのヒゲオヤジはどうしてボスになったんだい?」
「もともと生き残った軍人の中でも階級が高くて、この楽園の増改築にも深く関わっているからです。この楽園はオーガに襲撃されることも少ないですから」
「それをあのヒゲの恩恵だと感じている、か」
「襲撃がねえのは確かだぜ。ザコはたまーに来るけどな」
『続きまして、シキガミの装備が大幅に強化されました。これにより、オーガ討伐の難易度は……』
演説が終わり、キャスターによるニュースが淡々と告げられる。
「明日だ。明日、全てに決着をつけよう。いけるなアクセル、ミリア」
「当然! シンとオレなら楽勝だぜ!」
「無論だ。決着をつけよう」
「わたしはルナと一緒ね」
「いいところを見せるわよ」
そして朝から準備を整え、春人一行は敵の宮殿へとやって来た。
座標をシンとルナから聞き出し、次元の裂け目を作って移動。
春人ならではの手段である。
「うーわ……こいつはわかりやすいな」
「まさかここまでシンプルに宮殿とは……なんの捻りもないな」
ギリシャの古代宮殿そのままである。
荒廃し続ける世界で、新築のように綺麗な宮殿は、異様な存在感を放っていた。
「春人様、なんだか……いやな場所です」
『映像キャッチ。こんなものが存在していたなんて……』
「シーラ、とりあえず全てを記録しろ」
『はい。どうかご武運を』
シーラは楽園から戦いを記録する係である。
「行くぜ、今日で全部終わらせる!」
宮殿内に踏み込んだメンバーを待ち受けていたのは、さらに種類をましたオーガの群れであった。
「よくもまあ、これだけ集めたものだねえ」
「だからって、止まってなんていられねえ!」
「教祖の位置はわかるか?」
「ああ、一番奥だ。そこに神と祭壇がある」
「よかろう。アルファ、オメガ。露払いを頼む」
春人はアクセル達に教祖を倒させ、力を見せつけることで、この世界の人間が平和を守っていくという意志を芽生えさせたいらしい。
「ザコは散らしてやる。元凶である教祖は始末しろ」
「いいぜ、オレ達の世界の問題だもんな!」
同調したアクセルとミリアを連れ、春人は駆ける。
「オーガはここまで。春人様の邪魔はしないで」
花が来た道を塞ぎ、触れたオーガを取り込んで爆発させる。
「はいはい、春人くんに逆らう愚か者の末路がこちらだよ」
闇が輝き、オーガを溶かし、潰し、砕く。
二人にとってこれは戦闘ではない。どちらが春人にアピールできるかの勝負である。
「この先の大聖堂だ」
「よっしゃあ! 派手にいこうぜシン!」
『任せろ!』
大きな扉に向けて、炎を纏った蹴りを叩き込むアクセル。
景気づけに放った一撃は、扉を爆音とともに粉砕した。
「いってらっしゃい春人くん」
「春人様、がんばれー」
「うむ、全て作戦通りにな」
二人に見送られ、春人・アクセル・ミリアは大聖堂へと踏み込んだ。
「随分と騒がしいお客様だ。ここをどこだと思っている」
祭壇に立つは白い服を着た教祖。白髪の生えた四十代の男であった。
「お前が元凶か! よくもオレ達の世界を!」
「新たなる世界の神にむかって元凶とは……なんと不敬な」
「お決まりの三下台詞だな。貴様こそ、全世界の希望であり救世主である俺にむかって頭が高いぞ」
「…………どうコメントしたらいいのかしら」
「気にしないのが一番だぜ」
この場で一番偉そうなのは、もちろん春人である。
「なぜ……なぜ世界を滅ぼそうとするの!」
「滅ぼす? 違う、ワタシは救世主だ。神の存在を証明し、使命を受けた!」
「使命だと?」
「そうだ。神の器となり、この世界の想像と破壊を司るという尊い使命だ」
白いローブの下には、機械と神の出す光が混ざってうごめいていた。
かつて、教祖は神をその目で見ようとした。
そして器の中で混ざった神の力は、器ごと教祖に吸収されたのである。
『醜いな。そこにいるのだろう? 最後の神よ』
「無駄だよ。会話する能力はない。だからこそ、ワタシが神に代わり、世界をあるべき姿へと変えているのだ」
『神も、人も、そんなことは望んでいないわ』
「ならばなぜこの力はある? 世界を再生する。それこそが神となった私の使命。邪魔な人を排除し、新生物による楽園を作る!」
「しょせん異教徒にはわかるまい。そちらの二神もワタシの糧となれ!」
自身をクマ型オーガへと変化させ、アクセル達に襲いかかる教祖。
「こいつっ!? もう人間じゃないのか!」
「来るわよ!」
新開発されたマシンガンを乱射するミリア。ルナの力で弾丸の攻撃力は更に増す。
火花を散らし、オーガの体を傷つける。
「小賢しい真似を!」
全身が泥の用に溶けて歪み、ライオン型オーガへと変わる。
「なによこいつ……」
軽い身のこなしで弾丸を避け、ミリアに肉薄する教祖。
「させっかよ!!」
動体視力に優れたアクセルがそれを察知した。
がむしゃらに炎の剣を叩きつけ、爆風で教祖を壁まで吹き飛ばす。
「ぐがあぁぁ!?」
「ありがとアクセル」
『気を抜くな。さほどダメージは受けていないようだ』
「ふっ、やるなアクセル。その調子だ」
手頃な椅子に腰掛け、勝負を観戦する春人。
それにツッコミを入れるものはいない。
教祖は自分たちの手で倒す。春人はその保険。それが共通認識である。
「小僧なんぞに……神であるワタシが負けるはずがない!!」
「神がどうした! オレ達は人が二人、神が二人。自分一人で戦っているお前なんかに負けるかよ!」
ショットガンの連射でライオンオーガを壁に貼り付ける二人。
教祖は追い込まれて初めて全力を出した。
「舐めるな……全てを破壊してやる!!」
体のいたるところから銃口が伸び、黒いビームが二人を襲う。
巻き込まれた地面や壁は、爆風もなく削り取られた。
『いけない、あれは破壊の力よ』
「触れちゃダメってことね?」
『我らの力で軽減はする。だが当たり続ければ消滅するぞ』
「打たれる前にぶった斬る! フルスロットル!」
炎剣の勢いを最大まで上げ疾走するアクセル。
「援護するわよルナ」
『任せて』
ガトリングガンから赤い光を込めた弾丸を撃ち出す。
ビーム砲台を潰し、同時に教祖を怯ませる。
「ふざけるな! こんなことで! こんなところで終わっていいはずがない!」
白い羽を生やし、上空へと退避する教祖。
「飛ぶなんてありかよ!?」
『ならばこちらも飛ぶだけだ』
神のオーラが半透明な翼となり、アクセルを押し上げる。
『飛ぶのは任せろ。アクセルはやつを切り刻むことだけを考えていればいい』
「よっしゃ! それならできそうだ!」
「ルナ、一点集中。やれるわね?」
『当然よ』
スナイパーライフルに持ち変え、神のエネルギーをただ一点。教祖の羽めがけて撃ち込んだ。
「なにいいぃぃ!?」
片方の羽を消し飛ばし、教祖の体勢が崩れた。
そのスキを見逃すアクセルではない。
「終わりだ! 世界の、オレ達の怒りを思い知れ!」
「神の……神の力が足りない! なぜだ! 出力が下がり続けている……おのれ初めから……初めからこのために……」
「ゴオオォォッド! スラアアアァァァッシュ!!」
灼熱の刃は、教祖の体を両断し、断末魔の叫び声すら焼き尽くす。
「爆滅!!」
上空にて大爆発をおこし、教祖は消えた。
元凶は人と神の手で潰えたのである。
「やっ………………たぜええええぇぇぇ!!」
『君を選んでよかった。アクセル』
「やった、やったのね!」
『この日をどれだけ待ち望んだか』
主のいなくなった宮殿で、歓喜の叫びを上げるアクセル。
「見事だ。さて、ここからだな」
成長したシキガミ一同を優しい眼差しで見る春人。
だがその胸中には、これで全てが終わったわけではないという、半ば確信に近い予感があった。
「やったぜユウキ! どうだ見てたか!」
「ああ、素晴らしかったぞ。人と神の絆、この目で見させてもらった」
拍手を送る春人。そのまま教祖がいた祭壇の壁に手を触れ、超振動により砂に変える。
「なにやってんだ? ってうお!? なんだこりゃあ!?」
壁の先には部屋一面の装置。神の封印装置とは違う、もっとシンプルな何か。
「なるほど、これでどこかに神の力を転送していたな」
「転送? この神殿に送るのではないのですか?」
装置の中を走る力の流れから読み取る春人。嫌な予感は頂点に達する。
その時、全員の通信機にシーラの声が届く。
『みなさん! 聞こえますか!』
「シーラか、どうした?」
『オーガが……大量のオーガが楽園に!!』
戦いはまだ終わらない。
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