シーズン1 あとがき
シーズン1 あとがき
魔術師ゾディアス・リブレウスの言問い、そのシーズン1を通読していただき、ありがとうございます。いかがでしたでしょうか?
本小説では登場人物が必ずしも固定されておらず、出入りがあります。主人公ゾディと屋敷への永住を決めた魔女アラウスカを除けば、屋敷に残ったソノー、メイ、エルスとて、いずれは屋敷を出る定め。使い魔も含め、必ずしも屋敷付きではないんです。たくさんの旅立ちを見送らなければならないのが、魔術師の因果。ゾディが示す一種の無常観のようなものは、そこから出てきます。
しかし最初から辛い別れを予見していても、新たな出会いを忌避しない。そこがゾディのゾディたる
さて。ゾディは見えるものを変えられます。自身の見てくれも老人から美青年に変えていますし、必要に応じて女性に
ですが、ゾディ自身は特に美醜にこだわりません。それはいくらでも変えられる皮相的なものに過ぎないからです。メイの傷を消したように、外見を変えることの大きな利があれば魔術を使うこともありますが、ゾディがこだわるのはあくまでも心。見えない心です。そして、いかなゾディでも心を魔術で変えることは出来ません。自分の心を含めて、です。ですから、魔術を使うならば自分にも依頼主にも益があるようにしたい。それがゾディの信念ですね。依頼と報酬というセットにこだわる意味も、そこにあるんです。
◇ ◇ ◇
シーズン1では、ゾディ、シア、テオというトリオでの生活にソノー、メイ、ジョシュア、アラウスカ、エルス、そして最後にシアの後釜グレタが加わり、賑やかになりましたね。その一方で修行のためにテオとジョシュアが屋敷を離れ、使い魔のシアが退場しました。
心の交流が深い分、どうしても別れが辛くなります。しかし、それはいかな大魔術師ゾディであっても回避出来ない運命。これからも彼を悩ませ続けます。万能に見えて、実は寂寞感をいつも引きずっているゾディの姿は、それほどわたしたちと変わらないんじゃないかと。わたしは、そのつもりでゾディを造形しているつもりです。
常識の範囲内にすっぽり収まるように見えるゾディですが、魔術を悪用する者たちに向ける敵意は尋常ではありません。普段は極めて温厚なゾディが、その時だけはリミッターを外します。もっとも、ゾディの基本姿勢は敵から受けた攻撃をそのまま切り返すこと。自分の方から仕掛けることはほとんどないんですが、返し方に一切の容赦がないので、それが残虐な結末になることがあるんです。まあ、そこらへんについては今後の展開の中で触れていきます。
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主要な登場人物の概要をまとめておきましょう。
主人公のゾディアス・リブレウスは年齢不詳の魔術師ですが、第一話で自身に再生をかけているので見た目は二十代前半の若者です。しかし語調が示すように、中身は完全にじじいです。美形ですが、依頼以外の用で遠出することは稀なので、見てくれが第三者から評価されることはほとんどありません。髪はブラウンでやや長く、
ゾディは、筋の通らないことを徹底的に嫌います。凄腕ゆえに請願は山のように来ますが、魔術を使う必然性のない依頼は絶対に請けません。そして、権威や恫喝、賄賂に屈することは決してありません。頑固一徹ですね。その頑なさに不用意に触らない限りは、鷹揚で優しいです。ただし魔術を悪用する者に対しては、アレルギーに近い過激な敵対感情をぶちかまします。
ゾディはいつも見送る立場なので、屋敷を旅立つ住人の未来が出来る限り明るくなるようにと心を砕きます。そこが本小説を貫く中心軸になりますね。
すでに退場してしまいましたが、シーズン1での重要メンバーだったシア。使い魔なので姓を持ちません。ベースは大ムカデで、プロポーション抜群のエキゾチックな美女です。シアの方からそうしてくれというリクエストがあったのでしょう。見た目の年齢は二十代後半くらい。ゾディと変わらないほどの長身で髪は赤のロング。切れ長の目で瞳色は赤。時々大あごをむき出しにして、ゾディに怒られてますね。
性格は直情径行、がさつ、母性爆裂、ダメんず大好き。実務も趣味も家事。礼儀とか慎みなどは燃えないゴミの日に出してしまったようで、ご主人様であるゾディすら無遠慮にこき下ろします。しかし、シアには裏表や邪気が全くありません。屋敷の誰からも、頼れる姉貴として慕われていました。ゾディの言葉ではないですが、まさに余人をもって代えがたいメンバーでした。
修行の旅に出てしまった騎士のテオ。正式名はテオドール・フレデリクセン。髪は亜麻色でショート。瞳色はブロンズ。めちゃめちゃハンサムです。第十二話でガタレの竜の紋章を
年齢は23歳。その年齢に似合わず騎士としてはすでに成熟していて、武芸、品性、知性、精神力はどれも群を抜いています。しかし女に騙されたことが元で、心に深い傷を負っているようです。見てくれと腕前に似合わずとてもシャイで、緊張するせいか会話がどうしても堅苦しくなってしまいます。当意即妙のやり取りが苦手なため、無遠慮突っ込み型のシアを大の苦手にしていました。屋敷ではミニサイズになり、ほとんど鼠穴の奥に引っ込んで過ごしています。ひっきーですね。趣味は読書と思索ですが、騎士としての素養を磨くために武芸の鍛錬にも常日頃励んでいます。
第一話で屋敷の執事に就任したソノー。ゾディの養女になるので、正式名はソノー・リブレウスです。外見は8歳の幼女。髪はブルネット。瞳色は紺。やや丸顔のぽちゃ系ですが、最初はがりがりに痩せていました。今はまだ子供顔で美醜を論ずる以前なんですが、成人した時にはかなりの美女になるようです。ソノーの中身は早春の精ニブラで、ニブラはすでに成熟した娘。ソノーはいつも身体と精神のズレを抱えているということになりますね。
まじめで優しいんですが、一方でとても臆病かつ怖がり。中身が親子概念のないニンフなので、孤児であることをあまり意識しないようです。人の心に寄り添うことが上手な反面、お人好しなので依頼人の強引さに押し切られることもしばしば。まあ、それも長所のうちでしょう。ソノーの感情表現は、派手さはありませんが素直でとても豊か。天然の入った和み系ですね。美声の持ち主で、歌うのが大好き。暑さを苦手にしています。
メイに行きましょう。ゾディの養女なので、メイリー・リブレウスが正式名です。シア引退のあと、ピンチヒッターの家政婦として屋敷の家事をきびきびこなしています。父親からひどい虐待を受け続けた末に捨てられ、村々の雑用を引き受けることで辛うじて生き延びてきた放浪少女で、ずっと発語出来ず、おしでした。ジョシュアの旅立ちの時に、やっと言葉が出るようになりましたね。
12歳。屋敷に来たばかりの時には骨と皮のがりがりでしたが、生活が落ち着いて少しふっくらしてきました。それでも、まだまだ痩せっぽちです。藁色の短い髪、そばかすの多い日焼けした顔、瞳色は緑。最初は虐待でつけられた傷跡が全身にありましたが、ゾディが魔術でそれを消したため、容姿は整っています。温和で辛抱強い反面、感情を出すことや積極的な自己表現が苦手で、すぐに俯いてしまいます。年齢差はありますが、ソノーとは実の姉妹のように仲がいいです。
次はジョシュア。正式名は、ジョシュア・ビクセン。サクソニア公国の第二王子で13歳。兄のグレアムが世嗣ぎのため、修行と称して国を出されています。金髪で瞳はライトブルー。まさに高貴な獅子ですね。少年体型ながら、先々筋肉質になること間違いなしの腕白坊主です。
性格は底抜けに明るく、やんちゃ。次男坊の典型かもしれません。しかし頭がよくて度胸があり、母親という存在に無上の憧れがあるためか女の子にはとても優しいです。行儀で押さえつけられるのが大嫌いなので、趣味は外で自由気ままに遊びまわること。テオに伴われて騎士としての修行の旅に出ました。当代のガタレの竜にとても気に入られ、巣を訪うための手形(竜鱗)をもらっています。
そして、西の魔女のアラウスカ。正式名はアラウスカ・タラノヴァ。しかし、姓の方で呼ばれることはありません。いつでもどこでもアラウスカですね。年齢不詳ですが、ゾディよりは若いです。しかしゾディと違って再生の魔術は使えないので、見た目そのままの小柄な老婆です。髪はざんばらで、白。瞳色は黒。腰が曲がっていますが、動きは俊敏です。ゾディほどではありませんが、魔術の使い手としては上位の実力を持っています。立ち回りの時には
情の深いアラウスカですが、異端者として忌避されている自分を斜めから見ているところがあります。すねてるんですね。そして、一度頭に血が上ると怒りが制御出来ません。喧嘩っ早いのが欠点です。ゾディの屋敷に住み着くことを決めてからは、ゾディのいい話し相手、相談相手になっています。
終盤に出てきた二人をさらっと紹介します。
まず、シアの後釜の使い魔グレタ。小柄でやや細め。長い黒髪で、瞳も黒。使い魔なので年齢には意味がないんですが、十代半ばくらいに見えます。容姿は標準的ですが、物覚えや要領が悪く、動作がとろく、家政婦としてはちっとも役に立ちません。シアやアラウスカにいつもがみがみ怒られていますが、まるっきり向上しません。ゾディも頭が痛いでしょう。
そして最後にエルス。この子もゾディの養女になるので、正式名はエルス・リブレウスですね。まだ一歳に満たない赤ちゃんです。屋敷を訪ねてきた瀕死の女性から後を託された、悲運の娘。でも、屋敷では誰からも面倒を見てもらえるので、登場人物の中では一番恵まれているかもしれません。髪はライトイエロー。瞳色はアンバー。アルビノではありませんが、色素が薄いので印象が淡くなります。
エルスが話中で動き出すのは、かなりシーズンが進んでからになります。
◇ ◇ ◇
シーズン1でタイトルに用いた言葉。気付かれた方が多かったと思いますが、十二星座から採っています。元々、ゾディアスという主人公の名前も、星座(ゾディアック,Zodiac)をもじったもの。季節に合わせてマンスリーで展開するので、これからも、こういうお遊び要素を盛り込んでいくつもりです。
シーズン2では、また違ったタイトルシリーズを展開しますので、お楽しみに。
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