第82話 DDRパフォーマンス大会 その11
鳴りやまない拍手!
止まらない歓声!!
それら全てが混ざり合った会場の熱気!
まさに至高のパフォーマンスが行われたその場!
だがそれが突如ピタリと止まった・・・
「えっ・・・?」
突然の静寂、口を開けたまま停止する周囲の人間。
ロクドー一人だけが驚き周囲を見回していた。
「時間が・・・止まってる?」
立ち上がり抱き合ったままの魔王サタンに視線を向ける・・・
その時であった。
『突然こんな形で失礼します』
その声と共にロクドーの目の前に光が集まり人型になった。
青く長い髪に青い目の青年がそこに突如出現した。
『初めまして、私は精霊アメスタシアと申します。突然なのですがロクドーさんにお願いしたい事があり・・・』
「駄目だ!」
『えっ・・・?』
アメスタシアと名乗った人物の言葉を最後まで聞かずロクドーは拒絶の言葉を発した。
いきなり断られるなんて思っても居なかったアメスタシア、驚きに目を見開いた。
「今はDDRのイベント中だ!それをこんな形で放棄は認めない!」
『いや・・・しかし・・・』
「分かったらさっさとこの時間停止を解除しろ!」
『・・・わ、分かりました』
ロクドーが怒りと共に発した威圧、恐るべき魔力の濁流にその身を晒したアメスタシアは怯みながら返答を返した。
それと共に静寂が一瞬にして歓声に変わった。
それと共に目の前に居たアメスタシアの姿はどこにも無かった。
「一体なんだったんだ・・・?」
混乱するロクドーであったが司会の大きな声が会場に響き意識を切り替えた!
「お待たせしました、それでは結果発表です!」
騒がしい会場がその言葉で静かになる。
まるで先程止められた時間の中に戻ったかのような錯覚を覚える中、ロクドーの耳にそれは届いた・・・
「ただ今の得点・・・10点、10点、10点、9点、9点! ご、合計48点!!?だ、ダントツの一位です!」
その言葉に再び会場は大歓声に包まれた!
その中、司会の女性が次の人物の名前を呼ぶ!
「どんどん行きましょう!続いては・・・ザナップさんどうぞ!」
冷めぬ会場の熱気、しかし名前を呼ばれたのにも関わらず誰も前に出ては来なかった・・・
「あれ?ザナップさん!ザナップさん?!」
再度名前が呼ばれるが誰も前には出てこない・・・
それもその筈、DDRのパフォーマンスイベントと聞いて参加登録を行ったザナップは他のパフォーマンスを見て理解したのだ。
(あっ参加登録するんじゃなかった・・・場違い過ぎた・・・)
そう、あまりにもレベルの高すぎたパフォーマンスを見て彼は逃げ出したのだ!
しかし、他のパフォーマンスは絶対に見たいと考えた彼は離れた場所でこっそり覗き見ていたりする・・・
ビデオ録画などが存在しないこの世界だからこそ見逃したら二度と目にすることは出来ないのだ。
だからこそ選ばれたのであった・・・
「えっ?!あっ?!」
突如体が硬直し意識が闇の中へ沈むザナップ。
そして、その目が青く光り駆けだした!
「えっ?」
観客が裏返った声を上げるその上を1回転して飛び越える一人の男。
そのまま筐体の上に異常な程足音を立てずに着地する。
「あっザナップ選手ですか?」
「『はい、そうです。すみません遅れました』」
「いえいえ、それでは早速曲を選んで初めて下さい!」
二重に重なったその声、それはロクドーの耳に届きロクドーだけが気付いた。
会場はサタン夫婦がラブラブしながら用意した椅子を片付けている姿に意識が行ってて気づかない。
明らかに普通の人間ではないその声に・・・
「さぁそれでは準備が出来次第始めちゃってください!」
司会のその言葉でザナップは決定ボタンを押した!
決定された曲名は・・・『PUT YOUR FAITH IN ME(Jazzy Groove)』
PUT YOUR FAITH IN ME(Jazzy Groove):通称プットジャズ。
コンマイオリジナルソングで同時収録のジャズバージョン、イントロからいきなり裏打ちリズムを要求される難易度と背景から・・・
ジャズ兄貴と呼ぶ者も多数居たこの曲、1曲目と2曲目で曲が変わると稼働当初は話題になったりもした。
大人な感じの曲ながらベーシック難易度から3連打を要求される初心者泣かせな曲である。
誰もが選曲、プレイヤー知名度、格好を見て期待していなかった。
先程のサタンのパフォーマンスが凄過ぎたのだ。
だがそれでもあのパフォーマンスの後でプレイしようとするその姿勢は評価していた。
そして、曲が始まって誰もが驚愕した!!!!
難易度ベーシックのシングル、それを観客側を向いておもむろに上半身に着ている衣類を脱ぎ捨てた!
そして、ありえない程膨れ上がる上半身!
筋肉!そこに現れたのは抜いた瞬間とは明らかに違い過ぎるマッスルボディーであった!
「『ぬぅんんんん!!!!!!!』」
膨れ上がる筋肉!浮き上がる血管!そして、今にも折れてしまいそうな下半身・・・
あまりにもアンバランス、だがそれが逆に興味を引いた!
「えっ?」
最初に気付いた一人のその声で他の者も気付き出した!
ザナップは腕でポージングをして筋肉を披露しているだけにも関わらず、スコアが増加していたのだ。
そう、ずっと見ていた筈なのにいつパネルを踏んだのか分からなかったのだ。
その中には勿論、前回のパフォーマンスで魔法を使ってパネルを反応させたサタンの娘達を知っている者も居た。
だからこそ驚いたのだ、魔法が一切使われた感覚が無かったから・・・
そうしている間にもゆっくりと筋肉を披露するザナップ!
それと共に踏んでも居ない筈なのに反応するパネル!
踏まれたその瞬間、パネルが一瞬光るからこそ明らかにおかしいことに気付いた。
だがどうやって反応させているのかが全く分からないのだ!
「『ふんっ!!』」
ダブルパイセップスと呼ばれるポージングを行い最後の矢印が消えた。
そして、まるで風船から空気が抜けている様に突如しぼんでいくザナップの体。
唖然とする会場はサタンのパフォーマンスと真逆の結果を生み、会場は唖然とする者達の静寂に包まれたのであった。
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