第75話 DDRパフォーマンス大会 その4

「さぁ各国のエロい方々・・・間違ったエロい方々・・・得点をどうぞ!」


視界のお姉さんの煽りであるが各国の偉い方々は悩んでいた。

高得点を付ければ自らがエロいと認める事になる、だが低得点にするには惜しいパフォーマンスであった。

チラリと互いを同時に見て伸びた鼻の下をお互いに見て慌てて正面を向くコンマイ国王とナコム国王。

そんな中、唯一の女性であるメロディーは驚きに固まっていた。

直ぐ隣に座る魔獣王ライオルが腕を組んだままオッキしたアレで机を持ち上げていたからである。


「我が生涯に一片の悔い無し!」


その宣言に野生の漢を見たのか他の男達もオッキを隠さずに真っ直ぐに立って彼に拍手を送った。

まさしく皆が一丸となった瞬間であった・・・


「いいからさっさと得点入れろよ!」


いつの間にか最初の女装姿に戻ったリズムが司会に復帰して司会者達に活を入れる。

それでやっと各々が得点を記入し始めたのだが・・・


「それで、ロクドーさん解説は?」

「あっやっぱしなきゃ駄目?」


場の盛り上がりで流せるかと思っていたロクドーであったがリズムに詰め寄られもう1人の司会の女性も思い出す。

そう、ロクドーは解説を最初に頼まれていたのだ。


「皆さん、美少女3姉妹の素晴らしいパフォーマンスでしたね!ですがエロではないです。これは芸術なのです!」


そう言いながらロクドーは前に出てマイクを受け取って語りだす。

パフォーマンスとしては非常にアドリブ要素が多く得点は非常に低いが魅せると言う一点では素晴らしいパフォーマンスであったと宣言したのだ。

それを聞いた採点する面々は得点を真面目に入れた。


「採点が完了したようです!それでは読み上げます!8点、7点、10点、5点、8点・・・合計38点!暫定1位が入れ替わりました!」


ワアアアアと歓声が上がる中、ライオルの得点が妙に低いのに数名が気付いたが何も語る気の無いライオルは腕を組んだまま目を閉じる。

そう、オッキはしたが彼にとって三姉妹は姪っ子なのである。だからこそ素直に得点を入れられなかったのだ。

シレーヌからの睨みつめるような視線に気付かない振りをするための態度、だがそれでも暫定1位と言う事でシレーヌは気にしていなかったりする。

各々の興奮も冷めない状態では在るが司会が声を上げた。


「続きましてエントリーナンバー4番!無手格闘ギルドのギルドマスターと門下生どうぞ!!!!」


無手格闘ギルド、それは素手での戦いをメインとした武術道場みたいなものであった。

武器を持たずに素手で戦う、魔物が存在するこの世界で頭がおかしいとしか思われて居なかった彼等であるが、ある日を境に彼等の評価は一変した。

ロクドーの音ゲーによって魔力が一気に鍛え上げられた事でその身に魔力を宿して戦う魔術格闘技を生み出したのだ。

その結果、武器を用いずに魔物と戦える事で門下生が一気に増えたのだ。

ギルドマスターと呼ばれているその男が筐体に上がりロクドーに一礼する。

スキンヘッドの強面の大男であるがその表情は穏やかであった。

それは純粋な感謝の気持ちである。


「それでは準備をお願いします!」


司会の言葉に2P側に立った門下生が選曲画面で曲にカーソルを合わせてそれを取り出した。

灰色の小さな物体、そう・・・メモリーカードである!


「師よ準備が整いました」

「うむ、では始めよう」


今大会最初のEDITパフォーマンス、一体どんなモノが飛び出すのか誰もが見守る中曲が決定されEDITデータが選ばれた!

曲目は・・・『KUNG FU FIGHTING(BUS STOP)』!


KUNG FU FIGHTING(BUS STOP)

邦題「吼えろ! ドラゴン」と銘打たれた、ジャマイカ出身歌手・カール・ダグラスの楽曲『KUNG FU FIGHTING』のカバー曲である。

初代DDRに収録された曲の中でも比較的スローテンポと言う事で当時プレイしたプレイヤーも多いであろうこの曲。

曲にメリハリがありパフォーマーが遊びやすい曲であった。


「それではどうぞ!」


司会の声に合わせて決定ボタンが押されゲームがスタートする!

ギルドマスターが筐体の上に腕を組んだまま中央で仁王立ちになり周囲に門下生が立つ。

プレイするのはギルドマスター1人かと固唾を呑んで見守る中、それは開始された!

観客席に対して礼から始まり流れる様な型を披露していく。

演舞、まさしくそれを見事にパネルを踏みながら行なうその姿は正しくプロであった。

裸足ですり足を行なった際にネジが引っかからないのかと一瞬心配する者も居たが何事も無く見事な体重移動であった。


「正中線我突!」

「「「「「応!!!」」」」」


曲の掛け声に合わせて一斉に門下生と共に技が披露される!

淀みなく放たれた拳が空気を叩く音が響き観客達は驚きに耳を疑った。


「流落の捌き!」

「「「「「フンハァッ!!!」」」」」


続けて披露される受けの型!

よく見ると手足の先が小さく光を放ち魔力が込められているのが分かった。

それは実戦を想定した演舞である!

対刃物、対魔物、対魔法!

どれが来ても素手で戦えると全身で証明するかのような真剣な演舞に誰もが目を奪われていた。

ギルドマスターも演舞を行ないながら観客の反応に満足していた。

このパフォーマンスが終わったら入門者を募集するつもりなのである。


「奈落落とし!」

「「「「「セイッ!!」」」」」


続けて掛け声に合わせて披露される演舞に何名かは入門を決め始めていた・・・その時であった!!!


ビュゥゥゥゥン・・・

「えっ?」

「「「「「えっ???」」」」」


曲が突然終了し画面が真っ暗に、そして表示される『GAME OVER』の文字・・・

固まる彼等・・・特に譜面を踏んでいたギルドマスターは何故死んだのか分からないのだ。

確実に作成した譜面を間違えずに踏んでいた筈にも関わらず終了してしまった事に理解が出来ない・・・

その彼にマイクを預かったロクドーが解説を始めた。


「残念です。最後まで是非見たかったのですが・・・ギルドマスターさん、このEDITを使用してのパフォーマンス初めてですね?」

「あっ・・・あぁ・・・だ、だが俺は間違えてなんか・・・」

「はい、非常に残念な事なのですが・・・EDITの強制変換にやられましたね」

「強制・・・変換・・・」


ロクドーだけが何故パフォーマンスを失敗したのか理解していた。

それはDOUBLEのEDITを作成した殆どの人が引っ掛かったコンマイの罠であった。


「DOUBLEでEDITを作成した時は3パネル以上離れた同時押しは全て中央同時押しに強制変換されるのです」

「なっ?!」


そう、これがEDITの強制変換であった。

例えば・・・



←   ←



  ↑   ↓


などの物理的にパネルが3つ以上離れた同時押しは全て


   →←


の同時に強制変換されると言う罠なのであった。

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