第73話 DDRパフォーマンス大会 その2

時は数日遡る・・・


「ふむ・・・DDRのパフォーマンス大会とな?」


帝国の国王にプレステを献上した商人が再来したと聞いて謁見を許可した国王。

その前に跪く商人は一通の手紙を届けにきていたのだ。

差出人はコンマイ国王である。


「地方の小国でありながら音ゲーを生み出した事で類稀なる発展をしたあの国か・・・」


プレステを入手してからコンマイ国の事は勿論調べ尽くしていた。

隣国ナコム国との親交、戦闘国家ガム国との同盟、そして魔族が暮らす国との交易・・・

世界の中心と呼ばれた帝国もコンマイ国の発展によって人口と領土が広いだけの国と陰口を叩かれるのも理解していた。


「本来であれば向こうから頭を下げて来るべきだとは思うのだが・・・」


そう目の前の商人に睨み付ける様に告げるが勿論本心ではない。

なによりも目の前に居る商人1人の魔力が既に帝国の筆頭魔術師クラスの力を持っているのだ。

そんな異常な国と事を構えれば敗北するのは目に見えている、まず勝てるわけが無いと考えていた。

だが帝国の国王として下手に出るわけにもいかない、それはコンマイ国王も理解していた。

だからこそ、その商人に帝国との橋渡しを行なわす為にプレステを1台無償提供したのだ。

そして、見事に音ゲーの魅力に取り付かれた帝国国王はコンマイ国王の思い通りに思考誘導されていた。


「では私とポポロと希望者を共にコンマイ国へ向かう許可を出そう」

「ありがとうございます」


帝国領土から外へ出るには国王の許可か正式な申請が必要である。

帝国内での犯罪行為を行なった者を外へ逃がさない為に設定されているルールであるがそれを緩和させる発言に帝国内の貴族達は驚いていた。

一体コンマイ国王は帝国国王にどんな文面で招待状を送ったのかと話題になるほどであった・・・

こうして帝国とコンマイ国が旅の扉で繋がり交流が始まったのがほんの数日前、当初帝国国王はこの機会にコンマイ国の技術力を引き抜き自国を更に発展させるつもりであったのだが・・・





(流れに身を任せて今日と言う日を迎えてみればなんだこれは・・・)


最初のパフォーマーであるチルコとポルコの巨大ゴーレムに愕然と固まった帝国国王。

あのゴーレム1体で下手をすれば帝国は大被害を被るのは確実、あれだけの精度で自由に動かせるゴーレム・・・

しかもそれを音ゲーのネタに使うだけと言う使い方に理解が及ばなかった・・・


(ガム国の天才か・・・敵に回すと厄介どころの騒ぎではないぞ・・・しかも周りの反応がおかしすぎる・・・)


先日のドラゴンを目にした者はあの程度のゴーレムごときで恐れる事は勿論無かった。

しかもゴーレムは制御できるものである、そしてここにいる音ゲーを愛する者達は数人掛かりであればあの程度のゴーレムは何とかなる。

それほど音ゲーで遊ぶ事が日課になっているこの国の人々は魔力を上げていたのだ。


(今のを10点満点で採点しろだと?突っ込みどころが多すぎて全く意味分からん・・・)


そう、ここ数日の回想は帝国国王の現実逃避であった。

見たままに気楽に採点をすればいいと用意された席に座ったのだがいきなり度肝を抜かれて思考が定まらなかった・・・

そして・・・


「おぉーっとチルコとポルコ選手の採点結果が出ました!左から・・・10点、6点、5点、6点、8点・・・合計35点!」


割れんばかりの歓声!

コンマイ国王だけが満点と言う評価に帝国国王は唖然とする・・・

無難に点数を表示したつもりが各々の独断と偏見で評価しているのを理解し驚いていたのだ。

更にその様子に周囲が全く疑問も抱かない事にも訳が分からなかった。

それはそうだろう、帝国で同じ様な事をすれば貴族の者の反感を買ったりするのは目に見えていた・・・

そして、思考が定まらないまま帝国国王を放置してイベントは続く・・・


「エントリーナンバー2番!アリオとルイーヅ選手どうぞ!」


出て来たのは前回のイベントでも登場した配管工っぽい赤と緑のヒゲ兄弟コンビであった。

割れんばかりの歓声!そして選んだ曲は・・・『ボーイズ』

徐々に歓声が小さくなっていくなか、二人のパフォーマンスが始まった。

その動きは正面を向いて前回同様普通に踏んでいるだけ・・・


「お・・・おいおい・・・まさか・・・」


観客の一人が声を上げた。

それはそうだろう、目の前で行なわれているパフォーマンスに見覚えが有ったからである!


「おぉっと1Pと2Pのプレイヤーが入れ替わった!?」


見慣れた光景、スイッチと呼ばれる入れ替わりプレイで見た事が無い人々は驚いているが前回のイベントで見た人はテンション駄々下がりであった。

あまりに両極端に二分した周囲の雰囲気に帝国国王は戸惑いながらも驚くべきテクニックとして賞賛していた。

そして、曲が終盤に差し掛かった時に予想外の事が起こるのであった!


「えぇっ!?」

「おぉぉおおお!?!?!?」

「すげぇええええええ!!!」

「なんじゃありゃああああ!!!!」


今の今まで白けた雰囲気で見ていた人々も驚きに次々と声を上げる。

最初は前を向いたまま同時にジャンプして入れ替わるだけだった二人の動きが変わった!

アリオが中央で中腰になり、その背中に手を置いてルイーヅがそれを飛び越える!

そう、馬飛びである!

新たなるレパートリーとして組み込まれたスイッチの技に誰もが驚きの声を上げた!

しかも台となっているアリオが足を斜めに2枚抜きを行なう形で中央の同時とその後の1歩までを処理しているのだ!

予想外の大技に大歓声が上がりそのままフィニッシュ!

やりきった二人に盛大な拍手が贈られるのであった。

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