第38話 第1回DDRフリースタイル大会 その4
曲が始まり画面中央から突如出現した矢印に驚きながら無理やり体を動かして慌てながら踏み始めるゲオルグ。
それを見ていた誰もがそのおかしな動きに驚きを隠せない。
暗記している筈なのにまるで慌てながら踏んでいるようにしか見えないのである。
サドゥンオプション:画面中央付近まで矢印が画面に表示されず中央ぐらいから出現するオプションでヒドゥンとは逆の性質を持つ。
異様な様子のプレイスタイルに誰もが言葉を忘れ見詰める中ゲオルグは必死に踏み続ける。
その中でただ1人、ロクドーのみが笑いそうになるのを必死に堪えていた。
もしもこれが狙って行なっているのであれば彼には特別賞を上げたいくらいの様子であった。
「なぁ・・・あれなんか・・・」
「そうだな・・・あれはまるで・・・」
プレイしている人間よりも見ている人間の方が余裕がありそれに先に気付く。
そんな中、ゲオルグは徐々にそれに気付き始めた。
そうなれば踏み方も安定してき、まるでプレイ中に一気に上達したように見える。
それもまた観客達にとっても非常に興味深く無言で彼のプレイを見続けた。
幸いだったのは人間よりもリザードマンは足が大きいのでベタ踏みと呼ばれる踏み方で無理やり矢印を捌くプレイが出来たことであろう。
そして・・・遂にゲオルグは曲をフルコンボでクリアしたのだ!
思わずガッツポーズを決めるゲオルグに一人・・・また1人と拍手が始まり、それはどんどん加速度的に増えていき場は拍手の音で埋め尽くされた!
エミが何かを言っているが拍手がその声を塗りつぶし何も聞こえないので先に集計を取りに行った。
拍手が落ち着いてきた頃合を見計らってエミは声を大にして告げる!
「ただ今のプレイの結果!5,6,5,8,10!合計34点!」
「「「「オオオオオオ!!!!」」」」
驚きの様な声が客席から漏れるが何よりロクドーが最高得点の10点を入れている事に驚く観客達。
その詳細が聞きたいがロクドーが解説するのは次の6人目が終わってからであるのは分かっていたので気分を入れ替えて観客達は次のプレイヤーを待つ。
「ゲオルグさん、ありがとうございました!それでは次の方どうぞ!」
エミの宣言を聞いて観客の前に姿を現したのは髪型をアフロにした1人の男性であった。
勿論この世界にアフロなんて髪型は存在しない、エミはまさかと思い男性に声を掛ける。
「お名前をどうぞ!」
「ナイトと言います。自分は自由に楽しく踊ってみたいと思いますので皆さん応援宜しくお願いします!」
そう言って頭を下げる、誰もがそのアフロを見詰める・・・
その視線に気付いたのかエミが直接質問をする・・・
「あの・・・その髪型はもしかして・・・」
「あっはい、DDRの背景で踊っている方の髪型を真似て魔法を使ってセットしてみました」
その言葉に会場は大爆笑に包まれた。
自らの髪型の為に火の魔法を使用して髪をチリチリにし上げたと言うのだからそれも仕方ないだろう。
これは音ゲーにより人々の基礎魔力が異様に高くなっているからこそこんな事が出来るようになったというのがあった。
音ゲーが異世界にアフロと言う髪型を実現させたのだ!
「それでは楽しく踊ってもらいましょう!」
エミに進められてナイトが選んだのは初代DDRのボス曲の一つ『トラップマシーン』であった!
それのANOTHERダブルが彼の選んだ内容である!
曲が始まって誰もがその動きに驚きを隠せなかった。
この世界には無いリアルダンスと呼ばれる動きがそこに再現されていたのだ!
これはナイトがDDRをプレイ中に背景で踊っているダンサーの動きを見て覚えたモノである。
何度も繰り返し見てその動きの特徴を捉え、実際に実現可能な動きを自己流にアレンジしつつ取り入れていたのだ!
その為、初めて見る動きにも関わらず見覚えのある動きに観客達もリズムに合わせて体を揺らし始めていた。
元々ANOTHERダブルのトラップマシーンは交互に踏む事が困難な配置が結構ある。
その為、それを交互に踏み続けるためにはターンや暗記して反転プレイなどが必要になるのだが、それを逆に利用して流れるように踊っているのだ!
そして、この曲の代名詞と言われる中盤の同じフレーズが4回繰り返すポイントがやってきた!
ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、ダダダン!
この難易度では譜面も左右対称で交互に1Pと2Pを行き来するだけの配置なので暗記すれば非常に踏みやすい。
それを狙っていたのだろう!
何と4回繰り返すポイントで完全背面で観客を煽るように両手を上で叩いてリズムを取りながら踊るその様子に客の手拍子や足踏みの音が重なって響く!
客を見方につけたナイトのノリは最高潮に達し4回目のフレーズが終わり「キューン」と言う音と共に腰を低くして構えた!
そして、ナイトは飛び上がった!
見事な後ろ回り、バク宙である!
それには観客も度肝を抜かれた!
そして、再び踊り出し最後の2連4回フレーズまで上手くターンを決めながらナイトは踊りきった!
「・・・・・・」
シーンと静まり返った会場に筐体からクリアの歓声が鳴り出すと共に観客からも割れんばかりの歓声が上がる!
ハウスも、ブレイクも、タップも全てごちゃ混ぜのダンススタイルではあったがこれこそがダンス系のDDRパフォーマンスだとロクドーは感動し立ち上がって拍手をしていた!
だがしかし、この世界でもこんな素晴らしいモノが見れるなんて夢にも思っていなかったのだから仕方ないであろう。
間近で見ていたエミは唖然とナイトのプレイに見惚れていたが、ロクドーの拍手と言う珍しいモノを見て我に帰り慌てて集計結果をまとめる為に動き出す。
「お待たせしました、ただ今の結果!9、8、9、7、9!合計42点!」
その得点が発表されて再び熱狂的な叫びと拍手の嵐がナイトに送られる!
ダントツの最高得点が出たのだからそれも仕方ないだろう。
照れつつもガッツポーズをしたままナイトはエミに誘導されて裏へ進む。
盛大な拍手が送られる中、誰もがそれに気付いた。
このイベントの参加者・・・これでまだ半分なのである!
そして、恒例の3名ごとのロクドーの解説の時間がやってくるのであった。
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