第37話 第1回DDRフリースタイル大会 その3

4人目のプレイヤーはなんと初の2人組であった。

彼らは有名な兄弟DDRerで最近早朝に出没するプレイヤーであった。

その理由が練習をする為というのだ。


※DDRをプレイするプレイヤーをDDRer(ディーディーアラー)と呼びます。


「それではお名前を宜しくお願いします」

「はい、まず赤い服を着た自分が兄の『アリオ』で」

「緑の服を着た自分が弟の『ルイーヅー』です」


ロクドーは口の中に液体を含んでなくて良かったと安心していた。

牛乳的な液体を飲んでいたら間違い無く吹いていただろう。

間違いなくそれを意識したと思われるヒゲに心の中で突っ込みを入れていた。

この世界では存在しないはずなのに・・・


「お2人は兄弟なのですね!それでは張り切って宜しくお願いします!」

「「はい!!」」


威勢よくアリオが1P、ルイーヅーが2Pに立ち曲選曲画面でコマンドを入力する。

コマンドが成功した音が鳴り準備が整ったのでエミが声を上げる!


「ではどうぞー!!」


彼等が選曲した曲は『ボーイズ』である!

これはDDR2ndMIXの代表曲でデモでサンプルが流れる事から知っている人も多い名曲であった。

プレイヤーの2人がボーイズと言う意味なのかと言う突っ込みが入る前にプレイが開始された!

レベルはANOTHERで2P側がミラーオプションが入っている状態でのプレイに一体どういう意味があるのかと誰もが興味を持つ中・・・


「なんだ普通にプレイしているだけじゃねーか!」


観客の1人が突っ込みを入れた。

だがその突っ込みに同意をしようとした時であった。


「えっ?!」


気が付いたらアリオとルイーヅーが入れ替わっていたのだ。

1P側を踏んでいた筈のアリオが2P側に、2P側を踏んでいた筈のルイーヅーが1P側にいつの間にか移動していたのだ。

プレイを途中で中断したわけでもなくコンボも繋がったままなのは画面を見れば一目瞭然。

誰もが驚きに包まれている中、再び気付けば1Pのルイーヅーが2Pへ、2Pのアリオが1Pへ移動していた!

しかし、観客の数名はそれをしっかりと理解していた。

曲中の↑↑↓と言う8分の譜面を利用して二人は移動していたのだ!

画面上で表記するならこうである


  ↑   ↓

  ↑   ↓

 ↓     ↑


そう、2P側にミラーを入れていたのはこのためであった。

1P側が上だけを2P側が下だけを踏む事で互いにぶつかる事無く入れ替わる事に成功していたのだ!

スイッチと呼ばれるテクニックで譜面を利用すれば様々な配置で入れ替わりが出来るテクニックがここに実現していたのだ。

それを腕を組みながら満足そうに頷くロクドー、予想以上にこの世界のDDRプレイヤーのレベルが高くて驚いていた。

そして、数回のスイッチをこなして二人は曲をなんと共にフルコンボでクリアしていた!

割れんばかりの拍手と歓声!

登場した時とは打って変わって盛り上がる会場にエミの集計結果の声が響く!


「た、ただ今のプレイの結果!8,9,7,9,6!合計39点!」


今まででダントツの最高得点にシンクロしたガッツポーズを決める二人!

歓声に包まれながら二人はエミの誘導で控え室に戻っていく。


「場は大変暖まっております!この調子で行きましょう!次の方どうぞ!」


割れんばかりの歓声の中、出てきたのは目隠しをした爬虫類系の獣人であった。

人間よりも勿論運動神経の良い獣人がこのゲームをプレイすると有利と感じるかもしれないがそれは間違いである。

何故ならば人間と違い獣人は骨格から足の裏の形が様々でパネルが踏みにくい場合があるからだ。

当然この獣人も3本の指から伸びる爪がパネルを踏むのに適していないのは直ぐに見て取れた。

果たして一体どんなパフォーマンスを見せるのか、それに期待が膨らむ中エミが声を掛ける。


「お名前をどうぞ!」

「はい、ワシはリザードマンのゲオルグです。先程まで他の方のプレイを見ていてかなり緊張しています」


見た目と裏腹におっとりとした話し方であるが誰もがそんな事よりその目隠しはなんだと突っ込みを入れたいところであった。

それを感じ取ったのか、エミが話を振る。


「それで、その目隠しは今回のパフォーマンスに使われるのですか?」

「えぇ、自分にはこれしか出来ないので頑張らせてもらいます!」


そう言って筐体に上がってコマンドを入力する。

コマンド入力が成功した効果音が鳴り準備が整ったのを確認したエミが開始の合図をしようと考えた時であった。


「あっ、ちょっとお手伝いお願いします。エミさんでしたな?決定ボタンを押してもらえませんか?」

「えっ?あっはぁ・・・えぇ?!」


何のことか分からないままエミが画面に近付いて驚きの声を上げる。

それもその筈、選曲画面でカーソルはランダムにセットされていたのだ!


ランダム選曲、全曲の中からランダムで1曲プレイできる物で条件をクリアしていなかったりノーマルの曲がハードで選べたりするモノである。

ちなみに逆のノーマルでハードの曲は選べないのは意外と知らない人が多い。


「ここ・・・これで本当にいいんですか?」

「はい、自分このANOTHERレベルは全て暗記していますから」


驚愕の言葉が出る中、ランダム選曲様に作られたハイスピードリミックス曲が流れる曲に合ったカーソルを確定させる為エミの指が伸びていく・・・

そして、ドキュンッと決定音が鳴り響き画面にセットされた曲が表示されて驚きの声が上がる!

その曲は2ndのボス曲『パラノイヤMAX』であった。

カリンちゃんが先程クリアした曲を今度は目隠しでプレイする姿が見れるのかと誰もが期待の眼差しを見せる中、ロクドーだけが冷や汗をかいていた。


「まさか・・・あれは・・・」


この場に居るロクドー以外の誰もが気付かなかった。

画面に表示されているのが通常のパラノイヤMAXのレコードよりも紫色が少し薄暗い事に・・・

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