第30話 包囲されたエルフの里

「ここはエルフの村だ。勝手にお前等を入れるわけには行かない!」


エルフの里の入り口に立つ金髪の弓矢を背に装着した男性エルフがドワーフ達の進行を止めていた。

数時間交代をしながら荷車を運転していたドワーフ達は息も絶え絶えになりならがも一先ず落ち着いた状況に休憩していた。


「お前何考えてんだ?!」


荷車の荷台ではロクドーと共に飛び乗ってきた3人のドワーフが言い争いをしている。

エルフの里に入る許可を門番のエルフが取りに言っている間に互いに逃げる時に持ち出した物を見せ合って互いに罵倒していた。


「なんで枕なんか持ってきてるんだ?!何に使う気だ?!」

「しるか!慌ててて近くに在ったから迷わず手に取ってしまったんだよ!文句言うな!そういうお前なんか空のコップしか持ってないじゃないか!」

「まぁまぁ、いきなりだったから仕方ないってば」


2人の言い争いにもう一人のドワーフが2人をたしなめる。

ちなみにこのドワーフだけが保存食と水を持参していた。


「それより、聞いてくれないか?」


ロクドーが声を掛けてドワーフ3人は視線をロクドーに向ける。

彼等ドワーフはエルフに比べれば魔力の扱いは下手だがそれでも普通の人間とは比べ物にならない程の実力は持っている。

金属加工を行なう際に魔法も使用する為もあるのだろう。

だからこそロクドーが言おうとしている事も薄々感じ取っていた。


「あいつらはどうやら魔力を吸い取って仲間を増やしている感じだった。そして、間違い無く俺を狙っていた」

「あぁ、ロクドーさんの方をどいつもこいつも見ていたからな。あんたの規格外の魔力量なら仕方ないかもな」

「だからこそやつ等は俺達を追いかけて来ると思うんだ」

「「「っ?!」」」


ロクドーの発言に気付く3人。

荷馬車が駆けて距離を取ってもやつ等はこっちを見失う事無く向かってきていたのを思い出したのだろう。


「とにかくエルフの人達に事情を説明して対策を練らないとな」

「その前に協力してくれるか怪しいけどな・・・」


休憩していたドワーフが会話に加わってくる。

元々ドワーフとエルフは犬猿の仲なのは人間達も知っているほど有名であった。

その為、このまま追い返される可能性を考えているのだ。

だが幸いここにはロクドーが居た。


丁度その頃、エルフの長老の家では門番から話を聞いた長老が腕を組んで考えていた。

ロクドーの事に関してはギターマニアを設置した時にエルフの方に認知されており彼が居るならとドワーフを保護する方向で話は進んでいた。

こうして特に何事も無くエルフの集落に入りその日は互いに情報交換に勤めたのであった。








翌日、朝日が窓から射し込みベットの上で目を擦って起きるロクドーはその気配を感じ取っていた。


「ロクドーさん!やつらが来ました!」


そう、あのゾンビの様になったドワーフ達がエルフの結界のところまで来ていたのだ。

だがエルフの結界は招き入れられないと入れない仕様になっていた為にそれ以上の被害は広がっていなかった。

それでもここに来るまでに野生の動物や魔物に襲い掛かったのだろう。

エルフの結界周囲にはドワーフ達以外にも様々な魔物や動物が物凄い数集まっていた。


「これは本格的に不味いですな・・・」


寝泊りしていた小屋から外へ出たロクドーの前にはエルフの長老が立っていた。

ロクドーの方を見ずに口にしている事から独り言のようにも感じられたがロクドーは長老に返事を返す。


「長老、一つ提案したいことがあります」

「ロクドー殿、何か打開策があるのですか?」

「こいつ等は魔力を感知して襲い掛かり、魔力が尽きると操られる様子なのでこの状態のヤツに魔力を与えてみてはどうでしょうか?」

「そ、そんな事が可能なのですか?」


ロクドーはこの世界の音ゲーが魔力を原動力に動いているのを理解していた。

そして、音ゲーが稼動するとその周囲の魔力濃度が上昇する。

それはコンマイの国で様々な音ゲーが動く事でプレイヤー以外の聞いている人の魔力が上昇しているのを見ていたから気付けたことであった。

幸いここにはギターマニアをプレイできるエルフとドラムフリークスをプレイできるドワーフが居る。

この危機を互いに協力して乗り切れれば蟠りも少しは解消できるかもしれない!

そう考えエルフの長老にロクドーは提案をするのであった。


「ギターとベースを担当するエルフを2名、そしてドラムを担当するドワーフ1名の3人でセッションプレイをしましょう!」

「せ・・・せっしょん?」


聞きなれない言葉に首を傾けるエルフの長老であった。

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