第29話 鉱山より発掘されたソレ

ドワーフの職人達が鍛冶を行なう時に使う金属を発掘する鉱山。

ドワーフ領に在るそこには毎日多数のドワーフが発掘に出向いていた。

そして、その鉱山の奥深くにて事件は起こっていた・・・


「なぁ、この先ヤバクね?なんか掘れば掘るほど寒気がしてくるんだけど」

「馬鹿お前!この奥に地脈が流れている証拠に違いないんだよ!さっさと手を動かせ!」


2人のドワーフが更に奥まで発掘領域を広げようと掘り進めているその場所は明らかに他の場所と空気が違った。

掘れば掘るほど寒気を感じるのは2人の体温が奪われているからであるのに2人は気付かない。


「なぁ、なんか手足が痺れてきたんだけど・・・」

「根性無いやつだな!もっと大きく振り被って掘るんだよ!」


その振り被って降ろされたツルハシが岩盤を砕きその奥にあった何かにぶち当たった。

響く金属音に2人は顔を見合わせニンマリと笑ってさっさと掘り進める。

尖ったツルハシが刺さらず傷も付かない金属がそこに在る、鉄よりも硬い金属の発見だと喜ぶ2人は気付かない。

その金属が2人の魔力を吸い取っている事に・・・


「なんて綺麗な鉱石だ」

「しかも物凄く硬いぞ、まるでオリハルコンのようだ」

「もしかしたらそれよりも硬いかもしれないな」

「あぁ、これは世紀の大発見になるかもしれな・・・」


そこまで普通に話していた2人であったが、その会話は突如途絶えた。

そこが明るければ互いの顔色にもっと早く気付いて行動に移せたかもしれないが既に手遅れであった。

2人のドワーフは青白い顔をしたままその鉱石を大事に懐に入れて外へ向かって歩き出すのであった。






「おい、どうしたんだよ二人共?随分早く出てきたな、何かいい鉱石でもみつか・・・」


途中に居たドワーフが青白い顔をした2人に声を掛けて近付くと共にその顔色は一瞬にして青白くなり無表情となった。

そうしてそのドワーフも共に外へ向かって歩き出した・・・

こうして鉱山内に居た多くのドワーフが同じ様な状態となり外へ向かって歩を進める・・・

いち早く外で見張りをしていたドワーフ達は彼らの状態と近付くだけで取り込まれると言う情報を得て足止めとばかりにバリケードを張っていた。

しかし、リミッターの外れた力を振るうドワーフは素手でその作られたバリケードをどんどん破壊しながら突き進む・・・

まさにホラー映画のゾンビの様な光景に外に居たドワーフ達は恐怖でパニックとなるのであった。











「なるほど、手と足を別々に動かすんじゃなくて遅らせて踏むわけか」

「えぇ、交互に動かす場合も最初はそうやって意識してプレイすると上達しますよ」


ロクドーのドラムフリークス上達講座を受けながら3人のドワーフ達は交代で徐々にその腕を上げていた。

特にロクドーが過去に経験したコツを教える事でその上達速度は物凄い物であった。

何事にもコツと言う物がある、それを自ら会得するまでに時間が掛かるからこそ稼動初期から始めているプレイヤーと後から始めたプレイヤーに実力さが出来るのである


特にドラムフリークスの場合はフットペダルと呼ばれる足で踏む操作を叩くのと同時に行なわなければならないのが最大の特徴であろう。

前話でも軽く説明した通り、人間の神経と言うのはクロスして繋がっている。

歩く時に右手と左足が同時に出るのを見れば直ぐに分かるだろう。

その為、無意識に左手と右足が同時に動く物なのである。

だが座った状態でフットペダルに足を乗せたままプレイしているプレイスタイルが基本となるドラムフリークスでは同時に動かそうとすれば左腕が叩くと同時に右足が上がる事となる。

そこでロクドーが編み出したテクニックとして連打の途中でフットペダルが入ってくる譜面は左手ではなく右手で叩くと同時に踏むと言うのを意識する!ということであった。

実際にやってみると分かるが激しくプレイする途中に合わせる切欠となるポイントが在るとミスをしても修正が可能なので覚えておくと良いだろう。

そんなドラムフリークスに熱中しているドワーフの家に飛び込んでくる者達が居た。


「お前等なにやってんだ!早く逃げるぞ!」

「ここはもう駄目だ!あいつ等にこの集落は滅ぼされるんだ!」


驚いてそっちを見る3人のドワーフとロクドーは慌てて建物から飛び出す。

そして、ロクドーは寒気を感じてそっちをみて驚いた。

明らかにこの世界で異質な気配を感じ取りそれが猛烈な速度でこっちに向かってきているのに気付いたのだ。


「くそっ逃げるぞロクドーさん!」

「あ、あぁ・・・」

「とりあえずエルフの里まで逃げればなんとかなるだろ!あそこは結界があるからな!」


ドワーフの村で作られた巨大な荷車の荷台に乗り込むロクドー達。

少し離れた場所では現在も足止めを行なう為に残ったドワーフ達が次々と魔力を吸い取られ奴等の仲間入りをしていた。

その光景を離れた場所から見ていたロクドーは気付く・・・


「まさか、俺の魔力に吸い寄せられているのか?」

「出発するぞロクドーさん!しっかり捕まってろよ!」

「えっ?うわぁ?!」


そうして走り出した荷車はドワーフの集落を出てエルフの里がある森へ向かうのであった。

8人のドワーフによるペダルを漕ぐ事で前進する巨大な荷車は道中の悪路もものともせずに突き進む。

自分を目標に追いかけてくるゾンビ化したドワーフ達をどうするか悩みつつロクドー達は数時間後にエルフの里へ辿り着くのであった。

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