第10話 DDR出現!
コンマイ国が世界的にビートDJマニア2ndMIXを公開し様々な国からコンマイ国への移住者が増えた。
それにより国の税収は増えコンマイ国は過去に類を見ないほど栄えだしていた。
一応ナコム国にも専用のお店が建てられ2台設置されたのだがそちらは国民のみの利用が義務付けされていた為開放はされていなかった。
「ったくふざけんじゃねーぞ!」
冒険者ギルドの入り口で一人の魔道士が剣士に怒鳴られていた。
彼等はワイバーンの羽拾いと言うチームだ。
その名の通り彼等の主な稼ぎは魔物の死体漁りであった。
他の冒険者が倒して剥ぎ取りを行なってもどうしても拾いきれない物は見捨てる。
彼等はその見捨てられた残された素材を回収するのを生業としているチームだ。
「まぁそう怒鳴ってやるなリーダー」
シーフの男性がなだめる。
彼等は3人でチームを組んで仕事を行なってきた帰りなのだがリーダーが怒るのは無理もないだろう。
偶然にもオークの新鮮な死体を発見し肉の剥ぎ取りを行なって帰る最中にゴブリンの集団に襲われたのだ。
なんとか逃げる為に走ったのだが魔道士は基本的に運動能力が低い。
しかもこの魔道士はドジであった。
逃げてる最中に何もないところで転んで追いつかれ乱戦となってしまった。
魔道士を諦めて逃げれば良かったかもしれないがそうもいかない2人は追加で乱入してくるゴブリンたちに向かって回収したオーク肉を投げた。
倒す獲物よりも豪勢な肉であるオーク肉の香りを嗅ぎつけたゴブリン達はそれの奪い合いを始めそのおかげで3人はなんとか逃げ延びる事が出来て町まで戻ってきたのだが・・・
「これじゃあ今日の宿代にもならねぇよ・・・」
剣士が持っているのは僅かな肉の破片。
他は殆どゴブリンに向けて投げ捨ててしまったのだ。
「ご・・・ごめんなさい・・・」
魔道士がフードを深く被ったまま謝罪する。
元々魔法がそれほど使える訳でもない魔道士は彼等が居ないとまともに生活も成り立たないくらい弱かった。
「クビだ・・・」
「えっ?」
「お前はクビだって言ったんだよ」
「そ・・・そんな・・・」
魔道士と言う事で本来なら遠距離から敵を攻撃するのが仕事なのだがこの魔道士は遠距離魔法が使えない、正確には生活魔法と呼ばれる水魔法で洗浄したり火魔法で木に火をつけるくらいしか出来ないのだ。
「つかさ、お前せめて運動神経もうちょっと上げないと話しにならない」
そう言い残して剣士は魔道士を見捨ててシーフと共に去っていった。
残された魔道士に突風が吹いて深く被っていたフードが捲れあがる。
「あっ・・・」
涙を一杯に溜めた青い髪の太った少女がそこに居た。
そして、直ぐ横に偶然座っていたボサボサ頭の男性がそれを見ていた。
「あ~ここで偶然会ったのも何かの縁だがちょっと良いか?」
フードで隠してはいたが体格が非常にイイ少女は行く宛てもない、その豊満な体を見れば暫く食事を取らなくても死にはしなさそうだがそれでもこのままだと行く先は野垂れ死にだろう。
彼女は天涯孤独な身の上であった。
そして、チームを追い出された彼女の行く末はもう見えていた。
「あははは、もうどうでも良いわよ!なに?私の体が目当て?」
「そうだ、お前の体が目当てだ」
「っ?!」
男に直接そう告げられた少女は太った体を自ら抱き締めた。
自らそう言ったのだがそれでも直接体が目当てだと言われて混乱したのであろう。
「俺の名はロクドー、奴隷商をやっていた。」
「やって・・・いた?」
「あぁ、ちょっとこれからとあるイベントに行く事になってな。お前みたいな人間を探していたんだ」
その後、少女はとんでもない事を聞いて目を輝かせてロクドーの後を付いて行く・・・
ロクドーは自ら言ったのだ。
今話題になっているビートDJマニア2ndMIXを作ったのは自分だと。
ビートDJマニア2ndMIX、それはこのコンマイ国の窮地を救った音ゲーと呼ばれる魔道具で今世間を騒がせている物だ。
酒場や宿屋に限らず様々な場所に設置され彼女も触ったことはあったが・・・
彼女は☆2の曲すらクリア出来ないほど不器用であった。
その為、もっぱら彼女は見るの専門でいつも他人のプレイを眺めていた。
その彼女にロクドーは言ったのだ。
「新しい音ゲーでお前を半年で一流の冒険者と並べるようにしてやる、だから力を貸してくれ」
そして、彼女はロクドーと共に広場の人だかりの中央に来ていた。
看板には『新作音ゲーお披露目正午から』と書かれている。
その人だかりの中央でロクドーは手を翳し謎の呪文を唱える。
彼女は気付かなかったがそこには異国の身分の高い者やコンマイ国の大臣クラスが居た。
その中でロクドーはスキルを発動し音ゲーを出現させた!
「スキル『創造具現化』を発動!」
まばゆい光の粒子が集まりそこに巨大な物を形作っていく・・・
一同はその様子を見て唖然としていた。
特に魔道士の彼女はそのとてつもない魔法力を肌で感じ体の震えが止まらなくなっていた。
そして、徐々にロクドーの記憶の形が再現されそれは完成したかに見えたが・・・
「まだだ・・・」
その本体と思われる物から更に光の線が延びてもう一つなにか大きな物が形作られる。
そして、光が落ち着きそれは姿を現わした。
ふらついたロクドーを何処から現われたのか分からない二人の女性が支えた。
魔道士の少女には感知出来ない程完全に気配を消していた2人の女性、エミとアリスである。
実はずっと一緒に居たのだがロクドーが勧誘を超えたナンパをしないように見張っていたりする。
「お疲れ様です。」
「ロクドーさん、これを」
魔力欠乏症に陥ったロクドーにアリスはハイエーテルを飲ませる。
ロクドーのこの魔道具を出現させる為に使用したMPは100万を超えていた。
エーテルで回復できるMPは120、ハイエーテルで1200である。
まさに雀の涙であるが意識を飛ばさない程度には回復したロクドーはお礼を良い立ち上がる。
そして、目の前に出現したそれを見て感動を覚えた。
「ほ・・・本当に出せた・・・」
巨大な本体と巨大な台の出現にその場は静寂に包まれた。
そして、誰もが思う・・・
これは一体どんな音ゲーなのだろう?
そして、言われた通り魔道士の青髪少女はフードを脱いでその太い肉体を晒して筐体に上がった。
これが彼女がE級冒険者からA級冒険者に成り上がる切欠となった伝説の音ゲーとの出会いの瞬間である。
その伝説の音ゲーの名前は・・・
『DANCING DREAM REVOLUTION』
通称『DDR』であった。
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