第8話 国を賭けたビートDJマニアエキスパートモード対決後編!
6曲目『11月20日』
ビートDJマニアの曲の中でも最高難易度の曲で一番人気のこの曲!
最初から最後まで耐えず続く譜面の嵐に加え後半の開始にある縦連打で数々のプレイヤーを絶望へ叩き込んだ伝説のこの名曲が開始される時コンマイ国王は点差をつけて勝っている現状に終始笑みを浮かべていた。
この試合はコンマイ国とナコム国の戦争なのだ。
観戦している殆どの人々はその事を忘れるくらい熱狂しているが現実は変わらない。
互いに曲を見事に捌き点差は殆ど開かぬまま辿り着いたHOUSEの滝と呼ばれる難所にてそれは起こった。
通称『BADハマり』である。
音楽ゲーム全般に起こりうる恐怖の現象の一つで、同じボタンを連打する事が必要な箇所でタイミングを1つ早く押してしまう事で続く譜面全てでBADを出してしまう現象である!
「あーー!!!」
「のぉーーーー!!!」
「おまいがー!!!!!」
ここが異世界だと言う事を錯覚するような叫びが聞こえコンマイ国代表のトムのゲージが大きく減少した。
基本BADハマりした時は1つ譜面を抜くのが基本なのだ。
空打ちと言って鍵盤の無い箇所をワザと叩いてタイミングを強制的に合わせるテクニックが有効なのだがまだ音ゲーに対して全く発展途上のこの世界の人々はそんな事を知るわけも無くあちこちから絶望の悲鳴が上がる!
まだ救いなのはこの11月20日は譜面数が多く1つ1つのミスに寄る点の減少がそれほど大きくない事だろう。
そして、最後の繰り返しゾーンで真っ青になったトムはとにかくミスを無くして演奏する事を心がける。
ミスはまだ挽回できるがもしクリアが出来なかったらその時点でもう1曲アトランが演奏できるので勝ち目は完全に無くなるのだ。
そして、なんとかトムのゲージはクリアラインに奇跡的に到達し最悪の事態は避けられた。
だがこの次の最後の隠し曲『良いモーション』でそれほど点差が開くとは思えない。
現状の点差が殆ど結果に繋がると言っても過言ではない状況なのだがクリア時の点差を確認したコンマイ国王は絶望にその顔を染める。
約3000点の点差で勝っていたのがこの11月20日で9000点程の点差が開いたのだ!
結果的に6000点の点差でコンマイ国が負けている状況で6曲目が終了した。
場は静寂に包まれる。
慌しく経理大臣が画面に表示される点数を記入していくが誰もが言葉を発しない。
ほぼ敗北が確定したと言っても過言ではないのだ。
だが最後まで何が起こるか分からないのが勝負の世界だ。
トムだけは諦めず筐体に集中していた。
そして、レベル?の最後の7曲目『良いモーション』が開始された!
殆どのプレイヤーはこの曲を知らないのだろう。
初めて聞く曲を聞き込もうと耳を傾けていた。
だがここまでやりこんだ二人の点差がそれほど開くわけが無かった。
確かに初見(初めて見る譜面)だったらこの曲のリズムは難しく点差は開くだろうが二人はやり込んでいた様で殆どミス無くギリギリトムがGOOD1個の差で勝利を収めた。
誰も言葉を発しなかった。
ただクリアした事に対して拍手は送られたが現実は非常だ。
この勝負は曲ごとの勝利数ではなく合計得点での勝敗なのだ。
それを考えるとトムの6曲目のBADハマりによるミスは致命的であった。
「しょ・・・勝負あり!これより集計に入りますので暫く、暫くお待ち下さい!」
誰も言葉を発しない中、ナコム国王がコンマイ国王の下へ近寄り嬉しそうに語りだす。
「コンマイ国王、勝負は決しましたな。いや、しかしこれは物凄い魔道具ですよ。これが我が国の今後の国産品として扱われると考えると感謝の言葉を送らせてもらいますよ」
「・・・ぬ・・・ぬぅ・・・」
コンマイ国の敗戦となればこの国は世界から消える。
これがこの世界のルールだ。
全国民は支配主が代わるくらいにしか考えてないがその実情は税金は辛くなるし法律も変わる。
様々な恩恵が与えられるのは極一部の人間だけと言う事実を殆どの国民は理解していないのだ。
そして、集計が終わり結果が発表される。
誰もが敗北を確信している中、ロクドーのみが結果はまだ確定していないのを理解していた。
「えー結果を発表します。ナコム国代表アトラン、総合計得点『633200点』対してコンマイ国代表トム総合計得点・・・」
笑みを強くするナコム国国王、絶望に顔色を染めるコンマイ国国王・・・
「ご、合計得点・・・『633400点』・・・こ、コンマイ国の勝利です!」
場は静寂に包まれて固まった・・・
誰もがおかしいと感じたからだ。
11月20日のミスで約9000点の減点があったはずなのに勝ってる筈が無いと誰もが考えたからだ・・・
「い、イカサマだ!」
ナコム国国王が大きく声を上げて同じくナコム国の人間が立ち上がり各々叫びだす!
集計している経理大臣が数字を弄ったと考えたのだろう。
だがそれを説明出きるわけも無く経理大臣は表示された点数を記載して計算したに過ぎない。
場はざわめき立つ、国を駆けた決闘でイカサマなどしたら国単位で住人が奴隷に落とされても仕方ないのだ。
だが誰もこの集計結果に納得がいかないのは確かなのだ。
それはナコム国国王だけでなくコンマイ国の住民も同じなのだろう。
「ちょっと待って下さい、今から説明をさせていただきます!」
ざわめく会場の中ロクドーが立ち上がり声を発したのであった。
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