第4話 ビートDJマニアは酒場に置かれる事になりました。
MPを100吸い取られ買ったエーテルで魔力欠乏症を回避した衛兵は仕事そっちのけでビートDJマニアをプレイする。
「むぅ・・・この☆の数が難しさなのか?」
「えぇ、そうですよ」
「これでも生まれた村では楽器をやっていたんでな、5段階なら2つくらい余裕だろう」
そう言って選んだ曲はブレイクビッツと書かれた☆2つの曲『2 ゴージャス 4 you』だ。
この曲は続編となる2ndでとある曲の元ネタとして作られた曲なのだが知っている人は少ないだろう。
静かに曲が始まり後半になるにつれ強いベースやスネアドラムの音が登場するこの曲だが・・・
「ぬっくそっこっこいつっぬぁっ!」
一番やっかいなのはこれだろう、画面中央のムービーに現われる人影の様なものに意識が奪われるのだ。
そっちに目がいき始めると急に譜面が増え始めるこの曲。
しかも同時押しにずれた配置、更にはスクラッチのフリーゾーンと初心者の最初の壁でも在るのだ。
「ぬ・・・ぬぉおぉおお・・・ぬぉおおおお」
だがしかし打楽器だろうが触ったことがあるだけありリズム的には悪くなくギリギリではあるが衛兵はクリアしたのだ!
「はぁ・・・はぁ・・・どうだ!やったぞはははっ!」
テンションが妙に高くなっている衛兵。
その表情は物凄く嬉しそうでこの世界でも音ゲーは受け入れられると言う証明でもあった。
そして、気付けば奴隷商の入り口に人が大量に来ており中から流れる聞いた事も無いような音で演奏される不思議な曲に耳を傾けながらリズムを取る街の住人達。
そして、衛兵が2曲目に選んだのは・・・
「☆2つが出来たんだから☆3つもいけるだろう!」
と独り言を言いながら☆3つのテクノ曲『オーバードザー』である!
後ろから声を掛ける。
「そこの『エフェクト』ってボタンを1回押すとその曲は更に良くなりますよ」
「ん?これか?」
そう言って衛兵はスタートボタンの下に配置されているエフェクトボタンを1回押す。
ボタンが赤く光り驚く衛兵だがその意識を取り戻そうとしているかのように曲が始まる。
キュイ~ンと言うこの世界の音とは思えない音に引かれ衛兵は演奏を開始する。
この曲は基本的にドラムの音を演奏する曲なので打楽器を経験しているであろう衛兵には非常に相性が良かった。
最初の方は・・・
「これは・・・ぬぉっ?! な、なんだこのリズムは?!」
序盤は上手く演奏出来ていたのだが後半になるにつれ激しさを増し遂に衛兵の手が動かなくなる。
そして、ゲージが半分ほどしかいかず曲が終了した。
特にラストの2連打は難しかったのだろう、着ている鎧も少し重かったのかもしれない。
よく見れば少し汗もかいている衛兵は曲はクリアできなかったがその顔は晴れやかであった。
「これを作ったのは貴公だと言ったな?これは凄い、またやりたいぞ!」
「行きつけの酒場に置かせて貰う予定してますのでそこでまたやってやって下さい」
「本当か!?是非またやらせてもらうよ!」
そう言って衛兵はご機嫌で帰っていった。
この異常な存在がこの世界に認められたのか結局衛兵は何をしに来たのか分からないまま帰っていった。
音楽が消えて奴隷商の建物を囲んでいた者達も散りいつもの静けさが戻って来た。
「なぁ、ロクドー・・・これダイノに置くのか?」
「あぁ、ここじゃ皆がプレイ出来ないからな」
「そうか・・・うん分かった!それじゃ今すぐ交渉に行こう!」
そう言ってアリスは一度家に帰り運ぶ為の人間を用意してくれる事になった。
彼女自身ももう一度プレイしたいというのもあったが実はこれをプレイする為にMPが必要なので酒場でエーテルを販売するつもりだったのだと後から知らされたロクドー。
流石に魔道具屋を経営しているだけあって商売魂が逞しい彼女であった。
「あ、あのご主人様・・・」
「奴隷業は廃業だな」
「えっ?!」
「これからは音ゲー製作の魔道具屋をやっていく事になりそうだ。」
「そ・・・それじゃあ私たちは・・・」
「だから俺に付いて一緒にやっていってくれるか皆に聞かないとな!」
「は、はいっ!」
ロクドーに捨てられるかもしれないと少し考えたエミであったがそうではなく全員をそのまま従業員として雇い続ける形で考えていたロクドー。
そして、その仕事に全員付いて行くと答える奴隷達。
この世界の奴隷は現代日本で言うバイトみたいなものであったのも幸いした。
ロクドーはまだ気付いていなかったがこの音ゲーの存在は既にこの時、衛兵から貴族や王族にまで伝わっていたのであった。
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