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姉様の所に戻って男を刺した剣をカランカランと投げ捨てた。
「姉様、もう大丈夫。その男は、もう姉様の目の前には現れないから」
「………………え?今、なんて…」
「死んだよ。その剣で」
姉様の目が、唇が揺れている。
そんな顔をさせている直接的な原因があの男だと思うと腹立たしいけど、仕方ないか。
今だけくらいは許してあげなきゃ。
姉様にも理解する時間は必要だろうしね。
「姉様も一人。僕も一人。やっぱり僕達は寄り添って生きるべきなんだよ。ね?だって僕達は双子なんだから」
「………あ、あ、あぁぁぁっ!いやぁぁぁぁっ!!レイ!!レイっ!!」
……………そう。
あの男の名前呼ぶんだ?
へぇ。
どんどん呼びなよ。
今のうちに。
どんなに呼んでも、あの男が生き返るわけじゃないけどね。
「姉様、姉様?辛い?辛いよね?そんなに辛いなら、記憶を消してしまおうか。悲しい記憶を全て忘れてしまえば、楽に生きられるよ?」
これは悪魔の囁き。
いつもの姉様なら、こんな誘惑には乗らない。
でも大丈夫。
恋人の死に理性を忘れた姉様はきっと……。
「本当?本当に…忘れられる?」
…………クスッ
ほらね?
「うん。どんなに幸せだろうね?辛いことのない世界は」
「ジョエル」
「なぁに?姉様」
わざとらしく首を傾げる僕。
可愛いでしょ?
もうすぐ。
もうすぐだ。
「私の記憶を消して」
ほら来た!!
その言葉、待ちかねたよ。姉様。
この日のために僕はずっと用意をしてきたんだから。
あの男達……僕を一人っきりで暗い場所に閉じ込めた両親や使用人達を殺し、姉様の恋人も罠で捕まえ、さっき殺した。
やっとその努力が報われるんだ。
姉様はスッと目を閉じた。
僕は姉様の目蓋に手をかざし、耳元に唇を近付けた。
「可哀相な姉様。でも大丈夫。じきにすぐ忘れるから。目を覚ましたら、ね?」
そのまま眠りについた姉様をゆっくりとベッドに横たえ、僕はベッドの横に跪いた。
姉様の髪、柔らかいなぁ。
僕と同じ金髪に、今は隠れて見えないけど、青い瞳。
やっぱり姉様は世界一綺麗。
姉様、僕は姉様が大好きで大嫌いだよ。
殺したいほどね。
でも同じくらい愛しているから、記憶を消す方を選んだんだ。
僕しかいない世界を作るために。
早く目を覚まして。
僕の大切なリアお姉様。
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