第30話
ノックの音に呼応して、ドアを開けると兄貴が立っていた。
「少し、話せる?」
中に入っていいかという意味だろう目線で部屋の奥を見ながら、兄貴は神妙に言った。
「いいよ…」
俺はそう言うと兄貴を部屋へ招き入れた。
ベットに二人で腰を掛ける格好となって、兄貴が話し始めた。
「さっき言った事、本当?」
俺は黙って頷いた。
話の方向性がまだ見えず、俺は少しびくつく。
「正直な、気持ちを言って…いい?」
俺はまた黙って頷いた。
「まず、偏見とか…そういうの…全然ない、俺。ここ迄は…いい?」
今度は兄貴の目を見て頷いた。
「次に…むしろ…」
兄貴がここ迄言って口ごもった。
むしろ?
俺は話の先が聞きたくなった。
「何、…兄貴、…言って?」
声にならない声で、俺が促した、もしかして?
もしかしてって馬鹿な俺は思ってしまう。
暫く俺達はお互いの気持ちを探るように、瞳を合わせていた。
どれ位の時間が流れただろう、また兄貴は目を潤ませて、いや、潤ませるを通り越して、今にも瞳から液体が溢れるんじゃないかって位目は滲んでいた。
ついに、沈黙を破って、消え入る様な声で兄貴が言った。
「むしろ、嬉しい…俺、満を、…そういう目で見てる。」
「え、どういう意味?」
「俺は…満が、…好きなんだ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます