第30話

ノックの音に呼応して、ドアを開けると兄貴が立っていた。



「少し、話せる?」



中に入っていいかという意味だろう目線で部屋の奥を見ながら、兄貴は神妙に言った。



「いいよ…」



俺はそう言うと兄貴を部屋へ招き入れた。



ベットに二人で腰を掛ける格好となって、兄貴が話し始めた。




「さっき言った事、本当?」




俺は黙って頷いた。



話の方向性がまだ見えず、俺は少しびくつく。




「正直な、気持ちを言って…いい?」



俺はまた黙って頷いた。



「まず、偏見とか…そういうの…全然ない、俺。ここ迄は…いい?」



今度は兄貴の目を見て頷いた。




「次に…むしろ…」



兄貴がここ迄言って口ごもった。



むしろ?



俺は話の先が聞きたくなった。

 



「何、…兄貴、…言って?」




声にならない声で、俺が促した、もしかして?




もしかしてって馬鹿な俺は思ってしまう。




暫く俺達はお互いの気持ちを探るように、瞳を合わせていた。




どれ位の時間が流れただろう、また兄貴は目を潤ませて、いや、潤ませるを通り越して、今にも瞳から液体が溢れるんじゃないかって位目は滲んでいた。




ついに、沈黙を破って、消え入る様な声で兄貴が言った。



「むしろ、嬉しい…俺、満を、…そういう目で見てる。」




「え、どういう意味?」




「俺は…満が、…好きなんだ。」




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