第28話

「おかえり!」


思わず声が少し大きくなった俺は、満を玄関迄出迎えに行った。



満…。


まともに対峙したのは、1週間程振りだろうか。何故だろう、数日振り見る満は妙に色っぽく、以前よりよりいっそう艶かしく、美少年に俺の目には映し出された。



ただいまとだけ言って靴を脱いだ満は、そのまま自室へ向かおうとする。




俺は取り残された子犬の様な気持ちになって、満が階段を登り始めないうちに急いで話しかける。



口を開くとき、何故か弟なのに、緊張を覚えた。



「夕飯は?」



「食ってきた。」



「プリンあるぞ、食うか?」



「…いい。止めとく。」




俺は食い下がった。



「待てよ、どうしたんだよ、最近。何かあったのか?俺達もっと色々話したり、近かっただろ?」




暫しの沈黙の後、今迄下を向いて話していた満が目線をあげて口を開いた。



「…恋人出来たんだ、兄貴は多分…もうとっくに気付いてると思うけど、恋人は男。俺ゲイなんだ…そう言う事だから。」




そう言うと満はトントンと階段を上がって自室へ向かった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る