第11話

はぁー、俺の心臓、バクバクする。




「一年ていま数学Aどこやってるの?」


「三角関数!」


「これはもう公式丸暗記だからなー。後は応用。よし、これからやるかー」




兄貴との距離が近い。いい匂いがする。顔の角度はノートを見る振りをしながら、目だけ動かして兄貴の横顔をそっと除き込む。



茶色い綺麗な髪の毛、透き通る様な綺麗な白い肌。長いまつ毛、顔のうぶ毛。




兄貴、色っぽ過ぎる。




俺の心臓はMAXで鼓動を打っていた。誰かに和太鼓のバチで思い切り連打されてる錯覚を覚える。




「…で、ここがこうなって、…ってお前聞いてる?」



「き、聞いてるよ!」



思わずどもってしまった。だって、だって、この距離で兄貴と見つめ合ってるんだから。



「授業中もボーっとしてたんだろう、どうせ。あー、もう今日はこれ分かるまで終わらないからな。」






「はーい。(やったー!)」





ピピピ、ピピピー。


その時、兄貴の携帯が鳴った。




着信画面を横から覗くと、山科唯だった。

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