第7話記憶のカケラ

グラウンドへ出ると{ドタバタ}と俺に近付いてくる人物がいた。


「シロナーー」



リオだ。

厄介な奴に見つかったな…さて何て言って学校を出よう。

…と、言うのも謎の声がする方向は学校から出た場所なのだ。

多分山の中だと思う。



「おーリオ元気だなー」


「シロナ!ドッヂボールしよ?」


「あぁ…悪いけどちと急いでるんだよ」


「え?どうしたの?」


「家に忘れ物してさ…取り行こうかと」


「何忘れたの?私ので良ければ貸すよ?」


「いやぁ…まあ色々とな…とにかく!今なら急げば間に合うんだ!じゃな」



そう言って俺は走って学校を出た。




声のする方向は、いつも俺達が行きも帰りも通る山道の所辺りだ。



「皆城シロナ」



ビンゴ!

さっきよりも俺を呼ぶ声が大きくなった。

って事は…この辺から山の中に入ればいい訳だな。


山の中は人が歩ける様には出来てない。

なので木々が密集する僅かな間を通ったり剥き出した根に転びそうになったりしながら俺は進んでいた。



進みながら思う事があった。

以前にもこの道通った様な気がする…。

気がするだけで気のせいなのは分かってる…でも…


頭の中でモヤモヤしつつも俺は進んで行く。

すると…



「なんだよここは…」


あれほど木々達が密集していたり剥き出しになった根や枯葉達の絨毯があったのにこの空間には


半径3m程の何も無い空間に俺は驚きを隠せなかった。

そんな時に



「よく来てくれました…私の声を聞ける者よ」



また謎の声が聞こえてくる。

周りを見渡しても誰も居ない。



「だ、誰だよ?何処にいるんだよ?」


そう問いてみるも返事はなく俺の頭は?で埋め尽くされていた。

空耳…だったのかな…なんて思い始めた頃



ぴかあぁぁ


と眩しいぐらいの光が俺の右ポケットから発せられる。

薄眼で開けるのがやっとなぐらいの光が辺りを包む中俺のポケットから何かが飛び出してきた。


それは一枚の白く綺麗な羽だった。

鳥の羽みたいな感じはするも鳥の羽よりも上品なその羽は眩しく光ながら上空へと舞い上がる。


一体何が…?

そう思いながらもその羽を目で追いかけ俺も上空を見上げた。

すると俺は今までで見た事のないような光景を目にする。



「皆城シロナ…私が見えるのですね?」


上空を見上げるとそこには人が居た。

左右に綺麗な白色の羽を広げその人物は空を飛んでいた。


気付けば眩しい程に輝いていた光は消え今ハッキリと俺の目に空を飛ぶ人間が映っていた。


その人物は{すーー}っと滑り落ちるように降りてくる。


「私の名前はラピア」

そして綺麗に優雅に地面に着地し


バササッ


と左右に広げていた羽を畳んだ。

その人物は白いワンピースの様な服装をしていて地面に付くほどの長く綺麗な金髪をしている女の子だった。

見た目で言えば俺よりも年下の様に感じる。



「君は…何者だ?」


「私はラピア」


「いや!そうじゃなくて!それは名前でしょ?俺が聞きたいのは人間なのか?って事!」



俺がそう言うと

「はて?」

と呟き頭を傾げる。



「君は人間なのか?俺を呼んだ理由は?何よりも君の羽が何で俺のズボンのポケットに?」


「待て…そういっぺんに聞かれても困る。」


「でもこっちだって頭パンクしそうなんだよ!」


「うむ…ならば1つ1つ答えてやろう」

そう言いラピアと名乗った少女は少し沈黙する。


でも割とすぐに口を開いたのだった。



「まず私は天使だ」


「はっ?天使??」

俺は思わず聞き返してしまう。



「うむ…私達の事を鳥人間と呼ぶ輩も居るが私は神に仕える天使だ。そして君を呼んだ理由だが…」



「は、は?ま、待てよ!神とか天使とかいきなり言われても全然分かんないよ!」


「じゃあどうすればいい?」

めんどくさそうに天使が聞いてきた。


確かに羽が有り空も飛んでいたこの子は人間ではないのかも知れない。

それこそ天使だって言うのならそうなのかも…と思える。

でも…理解が追いつかないんだよ。


いきなり目の前に空飛ぶ人がいて私は天使だって言われても簡単には飲み込めないだろ?

それが普通だろ!?

でも…天使だって言うのなら天使だし深く考えても意味はない…なら受け入れるしか無いよな…



「わるぃ!取り乱した!話を続けてくれ」

思う所は確かにある…でもちゃんと一通りの話を聞こうと思った。



「皆城シロナ…君を選んだ理由だが、それは単純な話だ。君が私の声を聞けたから呼んだまでさ」


「うん…それも理解する。でも1番大事な事が残ってる!」


「そうだな…シロナが何故私の羽をだな?」


「俺はあんな羽拾った覚えないからな!なのにいつの間にか俺のポケットに入ってた…それは何でだ?」



「うむ…」

そう呟き天使は俯く


「これは正直説明が難しいな」

そう呟くも俺は何も言わず見ていた。


そんな時だった。

{ポン}と手を叩き何かを思いついた様に口を開く。



「シロナに直接もらうか。」

そう言って{バサッ}と羽を左右に広げる。


「な、何をするんだ!?」


「まあ良いから…」

そうして天使の左右に広げた羽が綺麗に白く輝きだす。

今回はとても目が開けそうに無いほどの眩しさだった。







気付いたら変な空間にいた。

周りは何もなく真っ暗だ。

まるで暗闇に飲み込まれた様な感覚。



ビキ



突然暗闇の空間にヒビが入る。



ビキ、ビキキ


そのヒビはどんどん広がっていきやがて空間全てにヒビが入る。

そして



パリィーン


と、空間が割れそこから光が現れる。


パリィーン


空間全てが割れ俺は眩いほどの光に包まれる。

その瞬間だった。



「っっしゃあ!1番だぜ!」


「先に走り出したんだから当然でしょ!」



「羽…?鳥の羽か?」


「きゃあああああああああ」


「セリナ…おい!セリナ!」


ドカアァァ!!!


俺はこのまま死ぬのか…

何もわからないまま死んじまうのかよ俺は!

せめてこうなる前に戻りたい!何があったのか知りたい!!


でも…駄目みたいだ…恨むぜ俺の無力さを!



「それでね今度の休み遊びに行かないかな?って…」


「良いぜカゲトにリベンジしないといけないからな!」


「ずっとお前の事見てたよ」


「ば、バカ!キモいこと言わないで!」


「シロナの事は先輩とは思ってないから!」


「私…もう無理だよ」


「うわああああああああん」


「大丈夫だよ。シロナ帰らないと」


「それよりも話が有るんだろ?」


「ごめん…今日は帰って…」


「シロナなら私を救ってくれるって…そう信じてたのに…」


「私ね?シロナの事…お兄ちゃんみたいだって思ってたんだよ?」


「もう死んじゃえ!!!」



俺の知らない筈の記憶が俺の頭に入り込んでくる。

知らない筈なのに知ってる記憶…なんだよこれ!







「はぁ…はぁ…」


気付けば膝と手を地面に付き汗をポタポタと落としていた。


「理解しましたか?シロナ」


頭上から声がする。

理解するも何も…今の記憶は…


「観た通り貴方は2回死にました」



その言葉通り俺は2回死んでいた。

最初羽を拾った時は誰に殺されたのかは分からないが2回目はハッキリと思い出した。

リオだ…俺はリオに殺された…



「思い出したよ…でも何でリオはあんな事を?」


「そうですね…その答えになると思いますので私の話を聞いてください。」


天使は静かに語りだすのだったーーー

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