第5話お兄ちゃん

「落ち着いたか?」



「うん…」


泣き止んだリオは少し恥ずかしそうにしていた。

まあ、そりゃ誰だって泣き顔見られら恥ずかしいよな。



「それで…何があったんだ?」

俺は静かに聞いた。


「あのね?」

そう言うも言葉を詰まらせるリオ



「俺はお前の味方だ。何でも言えよ」


俺のその言葉を聞き意を決してリオは口を開く


「私やっぱりおーー」



キキィィ


外で車のブレーキ音が響く。

どうやらおじさんが帰って来たみたいだ。

リオの部屋の時計を見ると時刻は17時半になろうとしていた。


学校が終わったのが16時ぐらいだったからもう1時間以上経ってんのか。


なんて思いながらリオを見ると表情を硬くしていた。



「リオ?」

心配になり俺はリオの名前を言う



少しの沈黙の後、リオは俺の方を見て笑顔を見せる


「大丈夫だよ。それよりもうこんな時間!シロナ帰らないと」


「いや、待てよ!それよりも話が有るんだろ?」


「ごめん…今日は帰って…」


そう悲しそうに言うリオにこれ以上何かを言う事は出来なかった。


俺はリオの頭をくしゃくしゃと撫でて


「今日は帰るよ。でも必ず話してくれよ」

と言って部屋を出た。


部屋を出る瞬間{ごめんね}と聞こえた。

そして1階に降りマオさんとおじさんに帰ると告げ俺は家へと向かった。



帰り道リオの事を考えていた。

俺はリオの為に何が出来る?どんな話にしろ俺はリオの味方だ!

でも話を聞いたとして俺に出来ることがあるのだろうか?


分からない。

考えても考えても何も分からない。

それから俺は家に帰り着いた。


家に帰りくろねぇに遅かったねと言われたが適当に話を返し俺は2階の自分の部屋に籠る

時刻は20時を過ぎていた。


この後風呂入って寝るかな…なんて思いながら布団の上でゴロンとしていたら



「……リ…が…ない…」



どこから声が聞こえた気がした。



「気のせいか…」

そう呟く



「…………が危ない!」



また声がした。

危ない?何が危ないって言うんだ?



「春……オが危ない!」



謎の声はだんだんとハッキリ聞こえてくるようになって



「春風リオが危ない!」

と、確かに聞こえた。



リオが危ない…?



「リオが危ないってどう言う事だよ?」



だが、謎の声は俺の問いには答えてくれなかった。


「くそっ!」


嫌な予感がした。

今ここで動かないと後悔するような気がした。


俺は1階に降りて懐中電灯を持った



「シロナどこ行くの?」


母親の声を無視し外へ飛び出る。


外は月明かりに照らされていて思ったより暗くはなかった。

だが、山道は暗いはずだ。


俺は懐中電灯を手にリオの家へ走った。




「はぁ…はぁ…」


息切れをしつつも頑張って走り抜ける。

流石田舎の村だ…この時間帯外には誰も居ない。

村の要所要所に街灯は有るがそれでも村全体を照らすには足りない程だ。



「はぁ…はぁ…」


やっと分校を通り過ぎた。

ここからリオの家までは後少しだ。


一体あの声は何なのか…リオの何が危ないのか…色々と気にかかる部分はある。

だが、たとえ空耳だろうとリオが危ないって聞こえたら助けに行くべきだろ!


行って何もなかったらそれはそれで良い。

問題は行ってがあった場合だ。

どんな事が起きても良いように覚悟だけはしておこう。


そして俺はリオの家に着いた。


リオの部屋の電気はついていた。

とりあえず何もないのか…??と思いながらも


ピンポーン


チャイムを鳴らす。



だが返事がない。

オカシイな普通ならマオさんが出るはずだ。

いや、マオさんが出ないにしろ必ず誰かしらは出るはずだ。


俺の心臓は{バクバク}と鼓動を早める。


覚悟はしたはずだ…でもこうも違和感があると躊躇いが出てくる。


これはオカシイ事だ。

何かがあったはずだ。


勇気を持て!!!



ピンポーン



震える体を鼓舞し何とか2回目のチャイムを鳴らす。


だが、やはり何も返事がない。


このままじゃラチがあかない。

俺はドアノブに手をかける。


この家のドアはドアノブを下ろして引くタイプだ。

俺はそっとドアノブを下ろす…そしてドアを引く。



ガチャッ


!!?

ドアが開いた?

てっきり鍵をかけてると思ったが閉めてないのか?

とりあえず俺は玄関へ足を踏み入れる。


玄関に入ると


ザシュッ!ザシュッ!


と言う奇妙な音が鳴り響いていた。

それ以外は静か過ぎて不気味さがあった。


ザシュッ!ザシュッ!


奇妙な音のする方へ進んでみる。

どうやら音は夕方案内されたリビングの方で鳴り響いているようだった。


ザシュッ!ザシュッ!


音が大きくなる。

そしてリビングへと着いた。


リビングにはテーブルがありソファもあり夕方見た景色と同じだった。

でも真っ先に夕方見た景色と違う景色に目がいった。


何度も何度も夕方案内された事を思い出す。

でもやはり違う。



リビングのフローリングは血で染まっていた。



俺の体は震えていた。


ザシュッ!ザシュッ!



あーもう!なんだよこの音は!


そう思い周りを見渡す。

すると何か動くものを見つける。


それは何かの上に跨っていて上下に動いていた。

よく見ると知った顔が倒れていた。


リオのおじさんだ。

リオのおじさんは人形のように無機質な顔をしていて身体中から血を流していた。


そしてそのおじさんに跨ってる人物はポニーテールをしていた。

おじさんの横にはマオさんが血を流して倒れていた。


って事は…



「り…お…?」


ザシュッ!ザシュッ!


リオは手に持った包丁をおじさんの胸に刺したり抜いたりを繰り返していた。


「リオやめろ!」


そう言ってはみるも俺の声は震えていた。

その直後リオの手が止まる。


おじさんの上に跨っている少女は{クルン}と首を回し俺の方を見る。


その少女は返り血がべったり身体についていて

顔も血に染まっていた。

そんな少女が目を見開いて俺を見てくる



「あ…あぁ…」

俺は恐怖し


ドタッ



その場で尻餅をついてしまう。



「シロ…ナ…?」

リオが俺の名を呼ぶ。


だが俺は恐怖のせいで声が出せずにいた。



「シロナ…そうかシロナか…」

そう言い{すーー}と立ち上がり近付いてくるリオ


「シロナが悪いんだよ…」


ぺちゃ、ぺちゃ


血溜まりの上を歩いて近付いてくるリオに俺は恐怖する事しか出来なかった。



「シロナなら私を救ってくれるって…」


やがてリオは俺の目の前までやってきた。


「そう信じてたのに…」


そしてリオは手に持った包丁を振り上げる。



「や、やめーー」


ザシュッ!


「あああああああああああ!!」


リオの振り下ろした刃物は俺の左肩に刺さる。

その痛みに耐えきれなくなり俺は大声を上げた。



「ねぇ…シロナ…私ね?」


そして俺の左肩に刺さった包丁を抜き今度は右肩にそれを刺す



ザシュッ!



「があああああああ!!!」


あまりの痛さに俺はもう意識が飛びかけていた。



「シロナの事…お兄ちゃんみたいだって思ってたんだよ?」


リオが何か言ってるがその言葉は俺の耳には届かなかった。



「なのに!!!」


ザシュッ!ザシュッ!


リオは手に持った包丁で俺の身体中を刺していく。

もう今は痛さが感じなくなっていた。



「シロナは私を助けてくれなかった!だから!!!もう死んじゃえ!!!」


ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!



薄れゆく意識で俺はリオの顔をみていた。

俺に対する激怒を露わにした表情をしながらも涙を流す少女はまるでような顔をしていたーーー

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