第4話笑顔の裏側

キーンコーンカーンコーン


昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響く。

グラウンドへ出ると俺は大事な事を思い出した。



「リオさんお疲れ様でした」


「シロナが私に勝とうなんて100年早いのよ!」



その大事な事とはカゲトの事だ。

カゲトを見た瞬間俺は思ったね…{あ、詰んだ}って。


そしてリオを交えて戦いが始まるもなにせ2対1だ。

負ける気しかしなかったよね。


途中リオとカゲトが、お互いのおれに気付いて手を組んできやがった。

1人が鬼になったら2人で俺を追い詰め、俺が鬼になったらタッチする瞬間に片方が俺に飛びつき邪魔したり…


そうは行くかとセリナやミズを仲間に引き入れようとするが何故か2人とも敵になって…

最終的に4対1の過酷一方的なバトルになっていた。


そんでボロ負けした俺は罰ゲームとしてリオに敬語で話す事になった訳なのだ。


下駄箱で靴と上履きを交換してる時に


「ねぇシロナ私疲れちゃったから抱っこして!」

と、リオがほざいてきた


「おまっ!ふざけんな!」

と反論するも


「今日1日私の下僕でしょ?」

と切り返される


「はっ!?そんな罰ゲでしたっけ!?!」

と言いながら周りを見る



「そんな罰ゲだよ」

とセリナが言う。


「うん、そんな罰ゲだね!」

とミズが言う


「ま、頑張れ」

と俺の肩をポンと叩きカゲトが言う



そして3人はせっせと教室へと向かって行く。


「ほら!先輩達もそう言ってるでしょ!?」


ちぃぃ!あいつら完全に楽しんでやがるな!



気付けば賑やかだった下駄箱も俺とリオの2人だけになっていた。


「ほら早くしないと遅れちゃうよ〜」


「はいはい分かった分かった」

と俺はリオの前でしゃがむ。



「てりゃー」

と{どすん}って感じでリオは俺の背中にダイブする



「ちょっ、」

ダイブしたリオのせいで体勢を崩そうとするもなんとか踏ん張りそのまま立ち上がる。


「…に、しても床大丈夫か?」


「なにそれー私が重いって事!?」


「いや、普通に考えてだな!?床抜けないかな…」


「大丈夫大丈夫ゴーゴー!」

楽しそうなリオにどこかホッとしながらも俺は廊下を進む



ギシィィ


ミシィィ


ギギギィ



なんか今までに聞いたことのない音がするんですけど!?

と、ハラハラしつつもなんとか無事に教室の前に着く



「じゃ降りるね」

そうしてリオは俺の背中から降りる。


「ねぇシロナ?」


「ん?」


「ありがとね」



その感謝の言葉の意味は良く分からなかった。

でも俺は


「おう!」

と返事を返しておく。



それから時間は経ち放課後を迎えていた。

俺達は放課後残ってトランプをしようと言う話になったのだが



「ごめんなさい先輩達。今日1日シロナは私の下僕ですので…」


リオがそう言って俺の腕を掴み連れ出そうとする。



「お、おいリオ!?」


「さあ下僕早く早く〜」


こうして俺はリオに強引に連れ出される事となる。


その後ウチに来てほしいと言われ着いて行くことにした。


昼間何か思いつめてたみたいだし何か俺に相談事があるのかもしれないと察した。



「ーーに、してもあの連れ方はないだろ!」

俺は隣で歩くリオにそう言った。


「ごめんってば!明日先輩達には私から謝るから!」


「まあ、良いけどさ。…で、なんの用事だ?」


「それは…」



急に元気がなくなるリオに俺はかける言葉が見つからなかった。

そのまま無言が続き気付けばリオの家の前に着いていた。


リオの家は2階建ての綺麗な新築だ。この村からしたらそれはとても豪華な家で村人達からは豪邸と言われてたりもする。



「相変わらずの豪邸だな」


「ちょ!やめてよその言い方!」



そして俺は家へと招かれる。




「お邪魔します」


そう言うとバタバタと足音がして1人の女性が現れる。

人参を口に咥えたウサギの絵が書かれてあるエプロンをし前髪にはウサギの髪留めを後ろ髪はポニーテールにしたリオを成長させたような人だ。



「あらシロナ君!久しぶりね♪」


この人はリオのお母さんだ。


「マオさん久しぶり!」



一見するとリオのお姉ちゃんの様にも見えるマオさん。

リオの家庭は少し複雑で1度マオさんは離婚をしている。


あれはリオが小4とかの時だっけ。

それまでのリオは今とそう変わらず元気な子だった。


離婚した時も周りがびっくりするぐらいいつもの調子でリオは笑顔を見せていたっけ。



「シロナ!ちょっとお母さんと話しでもしてて!」

そう言ってバタバタと2階へと上がって行くリオ



「あの子も年頃ね。シロナ君ほら上がって上がって」


そうして誘導され俺はリビングへと招かれていた。

椅子に腰をおろしお茶を用意される。



夕飯の支度をしていたのか鍋に火がついていてマオさんはそのまま台所に立ち野菜とかを切り始める



トントントン

リズム良く聞こえる音に俺は心地良さを感じていた。



「ごめんねバタバタしてて」

マオさんがそう言ってくる


「いえ、お構いなく」

と、テンプレで返す俺



に、してもほんとに綺麗な家だよな…。

去年マオさんは再婚した。

旦那さんは優しそうな人で、旦那さんの貯金で、この家を建てたらしい。



大人達の噂ではお金の為に結婚したとかなんとか言われてたっけ。

だから子供の俺でも旦那さんの貯金でこの家を建てたって知っている。


マオさんはリオを育てる為に毎日頑張っていた。

離婚した旦那さんから養育費は貰っていたのだが、それでもそう簡単に生活が安定する訳ではなく

とても苦労していたみたいだ。


そんなマオさんの姿を見ていたからこそリオはマオさんの事が大好きなのだ。


お母さんとお揃いなの!と嬉しそうに髪留めを自慢するリオを思い出し思わず笑みが浮かぶ。



「なににやにやしてるの?キモいよ?」


「わあっ!」


気付けばリオが居て俺は驚き情けない声をあげる。



「お母さん聞いて!シロナって1人でにやにやしててキモいんだよ?」


「シロナ君もオトコノコだもんね♪」


「ちょっ!変な事言わないでくださいマオさん!?」


「ふふふ」


「それより部屋の掃除済んだんだろ?行くぞリオ」

俺はその場に居たくなくなりリオの部屋へと向かう


「あ、ちょ!シロナ待ってよ!」



こうして俺はリオの部屋へと入ったのだった。

リオの部屋には勉強机とか本棚とかベッドとかあった。

ベッドには何体か人形がありいつも抱いて寝てんのかな?とか思った。


カーテンもウサギの絵が書かれたもので布団もウサギ柄だ。

ほんとにウサギが好きなんだな…と思った。



「あんまりジロジロ見ないで」

そう恥ずかしそうにリオは言う



「女の子って感じの部屋だな」



リオの部屋に入るのは初めてではない。

中学生になっては初めてだが小学生の頃は割とよく来ていた。


俺は床に座りあぐらをかく



「で、どうした?」

俺は本題に入る為にそう切り出した。



リオはベッドに座り無言になる。


リオが口を開くのを俺は待つ事にした。

あのリオが……マオさんが離婚しても明るい表情を見せてたあのリオが、こんなにも悲しそうな顔をしている。


昼休み元気のないリオを見て思った。

何かとんでもない事があったんじゃないかと…


そして今目の前でこんなにも悲しそうな顔をするリオを見てやはり何かがあったのだと確信した。



「あのね?」



リオが呟くように言った



「ん?」


「私…もう無理だよ」


「どうした?」



そしてまた沈黙が辺りを包んだ。


リオが俺に弱音を吐くなんて…よっぽどの事があったに違いない。

でも無理に聞き出すのも良くない気がしたからリオが喋るのを俺は待つ事に決めた。



何秒経っただろう…それとも何分?とにかく時間がゆっくりと過ぎていた。


ふと顔を上げリオを見た。

すると



「リオ?」


リオは涙を流し静かに泣いていた。


「お、おい!リオ大丈夫か?」



「ごめん…ね」

涙を流し震える声でそう言うリオ



「謝るなよ…」

そう言って俺は立ち上がりリオの隣に座りリオを優しく抱きしめた。


「我慢すんなよ…泣いて良いんだよ。泣きたい時は思いっきり泣けよ!」



その俺の言葉がトリガーとなりリオは俺に強く抱きつき



「うわあああああああああん」


声を張り上げ泣き始めた。



リオが何を我慢してたのか分からない。

でも今はただリオが泣き止むのを俺は待つのだった。

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