第2話無力

今のは間違いなくセリナの声だ…あの感じ普通じゃない!


俺は声のした方へ向かった。


セリナの声は山の中に響き渡ったから詳しい場所なんて分からない。

でも俺を追いかけて山の中に入ったのは間違いない。


あの声の大きさを感じると距離的には、そう遠くないからだ。

でも俺の通って来た位置ではないので、途中で迷ったのか?


そうこう考えてるうちに声がした、と思われる場所に着いた。

多分この辺と思うんだが…



「セリナ!どこだ!?」


声を張り上げるもセリナからの反応はない。

…に、してもこの場所…不自然だ。


いや、別にこの地面とかが不自然って訳じゃなく俺を追って山の中に入ったにしては不自然だ、って意味だ。


…と言うのもここは俺が不思議な羽を拾った場所から大きく外れてるのだ。


普通俺を追ってきたんなら俺が通ってきた道からこんなに外れる訳がない。

だって、少なくともは有るのだからそれを追えば良い筈だ。


なのにこうも俺の通った道を外れるか?

確かに、そりゃあ確かに山の中に入ると迷ったりはするよ?

でもこの山に入るのは初めてではないしセリナも山の感覚ってやつはある筈だ。


なら、ならばこそこんなに外れる訳は無い。

まるでこれは…… と、嫌な事を思いそうになるが顔を振りその考えを捨てる。

とにかく!今はセリナを探すのが先だ!



「おーい!セリナー!」


声をあげ探すもセリナからの返事はない。

この場所じゃなかったか?もう少し先とか…?

そう思い始めた時に



ガサッ

と、誰かの足音が聞こえた。


セリナか?と思いその足音のした方へ進むと…



そこには……




「う…そだ…ろ…」


俺の目の前には、とても信じられないような光景が広がっていた。


そこは今まで通ってきた道の様に木々が密集していて地面だってぬかるんでて…でも確かに違う事があって…



「セリナ…おい!セリナ!」


俺は頭から血を流し倒れているセリナに近付き声をかける。


目は開いていて涙も流してたのか泣いた後があって…

頭が半分潰れていた…。


勿論息はしていない。

一回殴っただけでこうも頭が潰れる訳ない…多分何回も殴られたんだと思う。



「だっ、誰がっ!?」


俺の頭は混乱し我ながら情けない声を上げていた。

目の前のセリナの死体を見て怖くなりその場から立ち去ろうと足に力を入れようとした。



その時だった



ザザッ



誰かの足音が背後から聞こえた。



誰だ!?と振り向こうとした瞬間




ドカアァァ!!!



頭に強烈な痛みを感じた。



かろうじて後ろを向く…そこには血で染まった鈍器のような物が見えた


違う…俺が見たいのは…俺を殴った奴の顔だ…


そう思いつつも視界がサァーっと動く…


そして俺はセリナの上に倒れこんだ。


目の前は真っ暗で何も見えない。

感覚ももう無くなってきている…



死ぬ…のか…



俺はこのまま死ぬのか…




くそ!



何も分からないまま死んじまうのかよ俺は!


セリナの仇も取れず無様に殺され…こんな事認められない…認めたくない!


せめてこうなる前に戻りたい!

そして何があったのか知りたい!

そんで犯人を捕まえてやるんだ!!!





でも……




もう駄目みたいだ…



俺は恨むぜ俺とセリナを殺した奴を!

そして俺の無力さを!





……………







この日二人の中学生が死体となって見つかった。

1人は皆城シロナ。


奇才村分校に通う中学2年生の男の子である。

何故こんな山の中に居たのか不明だが、犯人から逃げようとして迷い込んだ…と言うのが警察の見解だ。


そしてもう1人の被害者 由良セリナ。

シロナ君と同じく奇才村分校に通う中学2年生だ。


このセリナさんとシロナ君は付き合ってたらしい。

シロナ君がセリナさんの上に覆い被さるように亡くなっていたのを見て先にセリナさんが殺されたのではないかと警察は考えている。



そして2人と一緒に帰宅していた弓華ミズさんは2人の死体が見つかり2日経った今でも行方不明だ。


多分弓華ミズさんは犯人に捕まり殺されたのではないかと警察は考えていた。


その事件とは別に更に奇才村で殺人事件が起きた。

…いったい奇才村で何があったのか我々警察は真相を知る為に事件の調査を行なってます。


亡くなった人達の為にも必ず犯人を捕まえる為にーーー

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