奇跡のその先へ(仮)
@NIAzRON
第1話綺麗な羽
「はぁ…はぁ…はぁ…シロナ…シロナ助けてよ…」
山の中を駆ける少女が居た。
その少女は長く綺麗な黒髪をなびかせながら木の枝で体が傷つくのも気にせずただひたすら走っていた。
後ろを確認しながら走る姿はまるで誰かに追われてるみたいだった。
「きゃっ!」
ドタ
少女は剥き出しになった木の根に引っかかり転ぶ。
その少女にゆっくりと近付く人物がいた。
「いや、来ないで…」
泣きながら悲願する少女
その悲願は虚しくも叶わず少女の前には鈍器を構えた人物が到着する。
そしてその人物は手に持った鈍器を振り上げる
その動作を確認した少女は涙を流しながら悲鳴をあげる
「きゃあああああああ!!!」
ドガッ!
だが無残にも少女の頭には鈍器がめり込む。
ドガッ!ドガッ!
何度も何度もその行為は繰り返されやがて少女は動かなくなるのだったーー
周りは自然に囲まれていて空気も美味しい田舎の村だ。
都会のようにデカイビルやゲームセンターなどの遊び場やコンビニみたいな24時間営業の店なんかは当然無く
今の時代に慣れた人からしたら住みにくい村なのかもしれない。
でも小さな村だからこそ皆協力しながら生活をするので人との関わりは大事にされていた。
「…でね?…って聞いてる?シロくん?」
肩まで伸びた綺麗な黒髪をした少女が隣で一緒に歩いてる男の子に話しかける
シロくんと呼ばれた男の子は
「ん?わりぃ…考え事してた。…で、なんだっけミズ?」
と、返事を返す。
それを聞いたミズと呼ばれた女の子は
「も〜〜」
と、頬を膨らまし怒ってみせた。
「今のはシロナが悪い!」
と腰まで伸びた綺麗な黒髪をした胸の大きな少女が割って入る
「それよりミズ!セリナ!時間がない!走るぞ!」
そう言って女の子2人に挟まれて歩いていた男の子は走り出す。
「ちょ、ちょっと待ってよシロくん!」
そうして2人の女の子は先に走り出した男の子を追いかけるのだった。
男の子の名前は
スポーツも勉強もそこそこ出来るいたって普通の中学生だ。
中1の時に
「まったく!何が時間がない!よ…全然余裕だっての!」
と、悪態をつきながらセリナはシロナを追いかけていた。
「あ、セリちゃんも早いよ〜待ってよ〜」
そして最後尾を走るは
弓華ミズはシロナの幼馴染で、シロナとはセリナよりも長い付き合いがあった。
ミズとシロナは家が近いので親同士も仲が良かった。
その為ミズとシロナはいつも一緒に学校へ行っていた。
「おやおや…今日も元気だねぇ〜」
3人の走る姿を見て田んぼで作業をしていたおばちゃんが笑顔で呟いた。
「あ、
そのおばちゃんに気付いたミズが立ち止まり挨拶をする。
「ミズちゃん
と、走る動きをし若者に負けずと元気を見せる
「シロくんもセリちゃんも早いよ〜」
と、ミズは言い田んぼにいるおばちゃんに手を振り走り出す。
奇才村分校
建物は長広い作りでここに通う子供は小学生から中学生まで居て総勢42人しかいない。
前までは小学生組と中学生組でクラスを分けていたのだが年々子供達が減っていき
今では1クラスに纏めて小学生も中学生も一緒に授業を受けている。
校舎は昔ながらの木製で出来ており壊れれば修復を…また壊れれば修復を…の繰り返しで何とか形を保っているが、とてもボロくなっていた。
グラウンドにはブランコなどの遊具は何もなく子供達はこの広いグラウンドを走り回ったりして遊んで過ごしている。
分校の入り口には門は無く誰でも入れるようになっていた。
それも不思議な事はない。
この小さな村で学校に不法侵入するような輩は居ないので門を設置する意味がないのだ。
……それほど奇才村に住む人達は、お互いを信頼しあっている。
「っっしゃあ!1番だぜ!」
分校の入り口に着いてそう叫ぶシロナ。
その後にセリナが到着し息切れしながらシロナに言葉を発する
「先に走り出したんだから当然でしょ!」
そして膝に手を付き息を整えながらシロナは言う
「それでも1番は1番だ!」
そんなやり取りをしてる二人の後方から声が聞こえてくる
「もー!早いよー!」
そう言って二人の元へ駆けつけたミズは二人よりも平気な感じで息を整える事もしなかった。
そんなミズを見てシロナは言う
「結構距離あったのに全然疲れてない…流石体力オバケだ」
「あー!オバケって言った!シロくんのばかー!」
と、不機嫌になりミズはさっさと校舎の中へと入っていく
「ミズに体力オバケは禁句でしょ!シロナのバカ!」
そう言い残しセリナもミズの後を追うように校舎に入っていく。
その光景を近くで見ていた少年がシロナの肩をポンと叩き
「結局最初に来た奴がドベなわけね」
と言い残し校舎へ入っていく。
「カゲト居たのかよ!」
そう言ってシロナも校舎へと入っていった。
下駄箱に靴をいれ上履きに履き替えてシロナは廊下を進む
歩く度{ぎぃ}と音を鳴らす床に注意を払いながらクラスへと辿り着く。
クラスの扉を横にスライドさせ中へと入っていく。
「あ、シロ!」
と、言ってシロナに近付く女性がいた。
この女性の名前は皆城クロネ。
シロナの実の姉で1つ上の中学3年生だ。
長く綺麗な黒髪をしていて年上らしい落ち着きさを持つ面倒見のいい皆のお姉さん的人物だ。
セリナの憧れの人でもあり元々短髪だったセリナが髪を伸ばしたのもクロネの影響だ。
「ミズちゃん怒ってるみたいだけどアンタなんかやったんでしょ!」
そうシロナにクロネは言う
「くろねぇ…なんでミズの不機嫌の理由に俺が関わってるって思うんだよ?」
「アンタしかいないでしょ!…で、何したの?」
俺しかいないと断言する姉に反論したい所だが、原因は俺なので正直に答える事にした。
「体力オバケって言っちゃった…」
それを聞いたクロネは
「もー!バカ!」
と言いシロナの頭を軽く叩く
「ほら謝ってきなさい!」
ミズは昔から走るのが遅かった。
でも何故か体力だけは異様にあって皆から体力オバケと言われていた。
それは決してイジメのような悪口的な意味ではなく凄すぎると言う意味合いで言っていたのだが
やはりオバケなどと言われるのは気分が良いものではなくミズはその呼ばれ方を嫌っていた。
それを知ってて不意に出たとは言えミズに言ってしまったのは流石に反省だ。
自分の席に座り隣の席のセリナになだめられてるミズの所へ行き
「さっきはごめん」
と、謝る俺
「許さないもん!」
そう言ってそっぽを向くミズ
横を見るとセリナが少し首を横に振る。
今はそっとしとけ、と言われた気がし俺は自分の席に座る。
この教室には総勢42人居て皆学年はバラバラだ。
小学生組が33人居て俺達中学生組は9人しか居ない。
その中で俺とタメの中学2年生は俺とミズとセリナとさっきのカゲトの4人しか居なかった。
同級生が少ないのは確かに寂しい気もするけど、その分仲が良いからそれはそれで良いのかな、と思う。
それにこの教室には42人居る!
何も寂しい事はないのだ。
席は自由に選べるのだが自然と同じ学年同士で固まる。
そして俺達4人は窓際の後ろの方に陣取っていた。
「シロナ昼休みちゃんと謝っとけよ」
隣に座るカゲトが言う
「分かってるよ!」
こいつの名前は
ワイルド系と言うのか…まあ少し不良っぽい感じの奴だが、この様に友達想いの根は良い奴だ。
髪を金に染めててその見た目のせいで人に怖がられたりもしている。
そのせいで街に行くと絡まれたりもするらしく喧嘩慣れしている。
最近は とある不良グループ に入ったとか良くない噂を聞くが、その辺大丈夫なんだろうか?
キーンコーンカーンコーン
あれこれ考えてるうちにチャイムが鳴り教室に先生が入ってきた。
さて…これから退屈な時間が始まるのだった。
※
あれから時間が過ぎ俺達は放課後の時間を楽しんでいた。
「だぁー!また負けだ!」
俺達は放課後トランプで遊んでいた。
そして俺は今、何回目かの負けを体験していた。
「トイレ行ってくるー」
そう言って俺は教室を出、トイレを済ます。
そして教室に戻る途中でくろねぇと会う
「そろそろ帰宅しないと外暗くなっちゃうからねー!」
「とか言うくろねぇはまだ居残るんだろ?」
「そりゃあね…色々あるのよ」
「終わるの待とうか?」
「大丈夫!じゃ、行くね」
そう言ってくろねぇは職員室へと向かう。
くろねぇが居た場所的に倉庫に行ってたみたいだな。
3年生は、くろねぇしか居ないので必然的に委員長を任せられる。
その為先生達の手伝いなんかもしていて遅くまで校舎に残る事になる。
でもあまりにも遅い時は先生に車で送ってもらっている。
さて…教室に戻るか。あんまり遅いと大きい方のトイレだと勘違いされちゃうしな。
そう思ってた時だった。
俺はふと誰かに呼ばれた気がして後ろを振り返る。
だが……
「誰も居ないよな…」
そう呟き教室へと戻る。
それから俺達は充分楽しみ帰りの道を歩いていた。
家の方向が違うカゲトとは入り口で別れ俺達は行きと同じく3人で帰り道の山道を歩いていた。
「でね!今度の休み皆で街まで出かけない?って思って!」
ミズが俺に聞いてくる
「お、良いじゃん!たまにはパーッとな!」
因みにミズとは仲直りしている。
それはもう昼休みに謝り倒したからだ。
あんなに土下座したのは人生初だったぜ…
なので普段通り談笑しながら俺達は帰っていた。
だが……
俺は後ろを振り返る。
やはり誰も居ない。
「どうしたの?シロナ」
セリナとミズが心配そうに俺を見る。
「いや、なんでもな…」
いよ、と言葉を続けようとしたがやはり誰かに呼ばれてる気がする。
「わるぃ!先帰っててくれ!」
そう言って俺は、横の道の無い木々達の中へ入って行く。
声のする方へひたすら走った。
人の通れるように処理されてない山の中だ…地面は濡れていて足を持っていかれそうになるし
枝が擦れて擦り傷も出来ている。
時には転びそうになりつつもただひたすらに走る。
そして俺は開けた場所に出るのだった。
山の中は間違いないのだが、ここ半径3m程の範囲に木々達はなく不思議な空間が出来ていた。
だが、何よりも不思議な物が俺の足元に落ちていた。
それを拾い上げる。
「羽…?鳥の羽か?」
そうそれは羽らしき物だ。
でもその羽は白く輝いていてとても綺麗な羽だった。
とりあえずポケットにしまいミズ達の後を追う為元来た道を戻ろうと振り返った瞬間
「きゃあああああああああ」
と、セリナの声が響き渡った
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