第121話犯人


「準備オッケー!」


おとりは、交通科から志願してくれた白石優衣だった。

 

白石は太郎が大好きなのである。


たっちゃんと太郎がドラゴンフッシュの居場所を突き止めた。


無線でニイクラ、喜一郎、健太郎にたっちゃんは指示を出した。


公園横の道を白石は歩いていた。


しかし、突然暗闇から出て来たドラゴンフッシュに白石は背中とお腹を刺された。


まず、木陰からニイクラと喜一郎が飛び出したがドラゴンフッシュは白石を人質にして逃げようとした。


太郎と春男は、木陰から一部始終を見て飛び出した。


「動いたら、この女を殺すぞ!」


ドラゴンフッシュは、後退りした。


白石の出血が酷い。


そんな時に健太郎がドラゴンフッシュの顔面を蹴り飛ばして馬乗りになってナイフで刺した。


「おい!殺すなよ!」


春男は、返り血を浴びた真っ赤な顔になった健太郎に言った。


白石もドラゴンフッシュも病院で眠っていた。


ギリギリのところで命をとりとめた。


しかし、ドラゴンフッシュは目を覚まさない。


太郎と春男で白石のお見舞いに行った。


「木村さんの役に立てて良かったです。」


「すまなかった…。」


白石は、頭を下げる太郎を見つめて涙した。


春男は、太郎を殴った。


「お前!女の子を傷つけてすまなかったで済むか!」


「喜多島さん、良いんです。」


白石は、小さな声で春男に言った。


病室を出て太郎は珍しくシュンとしていた。


「あのくらいしないと白石がかわいそうだろ?」 


「春男ちゃん、ありがとう。」


一週間経過して、白石優衣は退院した。


ドラゴンフッシュは、逃亡中である。


まだ動けない体のはずが血痕をベッタリとつけて窓から逃げたらしい。


「ふー、やられたな。」


春男は、太郎に言った。


太郎は、眠たそうにしている。


たっちゃん、ニイクラ、喜一郎、健太郎、ユミもドラゴンフッシュの病室に来た。


「派手に逃げたな。」


たっちゃんは、血を舐めて言った。


「何か違う気がする。」


健太郎が言った。


「何が?」


ユミが、健太郎に聞いた。


「五階から、カーテンを使って降りたようだけどそんな力出ないだろうなと思ってね。」


健太郎は、太郎を見て言った。


「木村さん、知りませんか?」


健太郎は、眠たそうにしている太郎に聞いた。


「知らないね。」


「もしかして太郎を疑ってるのか?」


春男が健太郎に詰め寄った。


「だって動機はあるでしょ?部下があんな目にあったんだ。」


「部下じゃない、同僚だ。そう、犯人は俺だよ。」


病室に静寂が流れた。


「な、何言ってるんだよ?太郎…。」


春男は、太郎に聞いた。


「俺は、白石さんを刺したドラゴンフッシュを許せなかった。だから窓から落として埋めた。」


「やっぱりな。」


健太郎は、呟いた。



「春男ちゃん手錠。」


太郎は、自ら手首を差し出した。


春男は、動揺して手が震えていた。


警察署の牢に太郎は入って屁をして寝転んだ。


「太郎!説明しろ!」


春男は、格子に掴まって吠えた。


「俺が、ドラゴンフッシュを殺した。それだけだ。」


春男は、イライラしたまま病院の病室に戻って来た。


血痕が生々しく残っている。


おかしい…太郎はこんなバカな事はしない。


俺が解決してやると春男は誓った。

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