第87話警察学校


「喜多島!何タラタラ走ってんだ!」


春男は必死に走ったがまたビリだった。


「喜多島が遅れた分、あとに10周走ってこい!これは連帯責任だ!」


ため息が漏れる。


遠くから若き木村太郎は喜多島春男を見ていた。


マラソンが終わると喜多島にみんな憎しみをぶつける。


春男は、そのたびに頭を下げて泣いていた。


「なぁ、お前ら喜多島の良さが分かんないのに文句言うなよ。」


太郎は、春男に文句を言っているグループに言った。


「木村、お前大丈夫か?こんなやつかばって良いのかよ。」


「かばってねぇよ。喜多島のおかげで10周多く走れて体力もつくのに文句言うなって言ってんだよ、俺は。」


「は?どんな理屈だよ。やっぱり天才は違うな。」


太郎は、そう言った輩を殴った。


「今度、喜多島に舐めた事言ったら俺がお前を殺す!」


鬼の形相で太郎は言った。


輩は、覚えておけよと舌打ちして行ってしまった。


「木村君ありがとう。」


「ありがとうじゃねーし!お前悔しくないのかよ?」


「あいつらが言ってる事は間違いないからな。」


「お前見てるとイライラするんだよ!もっと自分を持てよ!抵抗しろよ!」


春男は、少し考えてそうだよねと答えた。


「お前はお人好しで優しすぎるんだよ。警察官には向かねぇかもな。」


「そんな…木村君まで。」


「まぁ、こんな事まで言われてぶれないお前はすごいぜ喜多島。」


「僕には我慢する力だけは人一倍あるからね。」


太郎は優しく笑って


「そりゃMなだけだろ?」


と言った。


それからも春男は、バカにされながら忍耐強い精神力で警察学校を最下位の成績で卒業した。


太郎は、成績トップで卒業した。


鑑識になった春男は死体を見るたびに吐くか気絶していた。


「おい!喜多島、遺体現場見るたびに吐くからゲロゲロ王て有名になってるぞ。」


捜査一課の刑事になった太郎は呆れ顔で春男に言った。





喜多島春男は、警察学校に戻されてもう一度再教育させられた。


太郎は、教官として警察学校に進んだ。


「春男ちゃん、何でそんなに頑張れるの?」


太郎は、素朴な質問を腕立て伏せしている春男に聞いた。


「分からない…。」


「分からない?」


太郎は、驚いた。


結局、警察官は被疑者逮捕すれば仕事終了である。


それなのに…と答え聞いて太郎は衝撃を受けた。






次の日から太郎は鬼教官になった。


「なめてんのか?命がけという事を忘れるな!」


春男は、同期の太郎の叱咤激励を受けて強くなって警察学校をトップの成績で卒業した。


鑑識に喜多島春男ありと噂されるほど緻密な人間に成長した。


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