第38話貧困ビジネス


「貧困ビジネス?何それ?」


「まぁ、簡単に言えば生活保護受けてる受給者が、病院行って無料で処方箋書いて貰って精神安定剤なんかを大量に薬局でこれまた無料で貰って売人に売って買った売人はホームレスに売り付ける。」


「ふーん。」


「アルコールと精神安定剤を大量に飲んでホームレスが最近次々と死亡してる。」


「春男ちゃん詳しいね。」


「あぁ、それに、置きじいが一枚絡んでるらしい情報を得たからな。」


太郎は、報告書に落書きをしながら窓の外を見つめた。


「勝てるかな…。」


「さてな、でも、止められるのはお前だけだろ?」


春男は、花粉症なのか、くさゃみを連発した。


「置きじいいる?」


太郎は、梓を連れて置きじいのビニールハウスに来たが、中には大量の血以外無かった。


「もしかして…。誰かに連れ去られたとか?」


「あるかもね。置きじいずいぶん衰弱してるみたいだし。」


喘息の薬が丸机の上に置いてあった。


「裏切った上に俺たちを投げ飛ばすわ殴るわ、調子乗るなよジジイが!」


海の砂浜で十人ほどの少年達が置きじいを袋叩きにしていた。


ただ、置きじいは苦しそうに激しく咳き込んでいる。


「そのくらいにしなよ。老人は、知恵袋なんだから。」


太郎が、ゆっくり歩いて近いて来た。


「てめーサツだな?」


鼻にピアスをしている少年が太郎に近いた。


「ここは、フェアにいこう。置きじいが、喘息の薬を飲んで落ち着いたら袋叩きでも、殺しても良い。でも、君たちが負けたら潔く置きじいを解放しろ。」


「良いぜ。」


置きじいは、太郎の前に投げ飛ばされた。


「置きじい薬。」


精気も枯れたような置きじいの口に太郎は薬を飲ませた。


少しすると置きじいは、太郎に笑いかけて


「お前は、最後まで、分からん奴だった…。」


そう言うと眠るように息を引き取った。


「確保!」


梓の号令で逃げ惑う少年達は、一人残らず逮捕された。


太郎は、仮眠室で、ぼーっとしていた。


「木村さん、加藤さんが、あの時に無理ですけど少年達に向かって行ったらどうしてました?」


梓は、コーヒーを飲みながら聞いた。



「そりゃあ、置きじいの好きにさせたよ。」


「そうですか。」


梓は、涙を堪えて上を向いた。


置きじい事、加藤清三は、難病を患っているホームレスのために貧困ビジネスに手を貸した。


死亡したホームレスは皆、身寄りがなく末期ガンだった。


置きじいがした事が正義か悪かは、太郎には分からないと思っていた。


ただ、最後まで置きじいは、必死に生きた。自ら命を絶たずに…。

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