第39話呪い


夏の日差しを避けるように大木が囲んでいる公園があった。


中には砂場と滑り台にトイレ、ブランコがある。


公園の奥の小さな山には神社があった。


誰にも思い出してもらえない神社が。


そこに、足を踏み入れると異空間に飛ばされて二度と帰って来れないという噂があった。


「って何テレビ観てるんですか?」


「やっぱり夏はさ、お化けで寒い感じになった方が涼しいじゃん。」


「わたしは、反対です。」


「何々?あずあずって幽霊とかダメなの?」


太郎の横で寝転がっている春男が聞いて来た。


「春男ちゃんは、生見てるじゃん。毎日。」


「バカ!仏さんと幽霊は違うんだよ。マジで夏場の現場は悲惨なんだよ。だから、こうしてリフレッシュに来てんだろうが。」


「ただのサボりじゃん。」

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「でも、小さい時って色々な、噂がありましたよね。となりの町で公園で遊んでた女の子が消えたとか、変質者や不審者、露出狂。」


「春先と夏は危ないんだよね。暑いからおかしくなるのかな?俺は、エアコンの素晴らしさは、革命的だと思うけどね。」


「後は、祭りだろ!祭りと言ったら。」


「広島風お好み焼きでしょう。」


醒めた顔で太郎が春男に言った。


「カバチタレ!」


「あのさ、春男ちゃん広島出身じゃないんだからね。広島の人が迷惑するよ。」


「そういえば、あの人、ちゃんと探偵してんのかよ?」


「誰?」


「ノ庄さんだよ。お前のお手本みたいな、ぐうたら刑事だったよな。」


「誰ですか?」


「先輩刑事。優秀過ぎて警察からはみ出しちゃった人だよ。」


「クビだろ?ありゃ、優秀じゃねーよ。ただのバカ刑事だよ。」


「そういえば、こないだメール来てたけど返事してないや。」


「え?何、お前、ノ庄さんと仲良しかよ。」


「別に、ただ暇だからまた、あの神隠しの事件を調べてるみたいだよ。」


梓は、アイスコーヒーを飲みほした。


暇ではないがリフレッシュに、太郎、春男、梓は、ノ庄賢二郎探偵事務所を訪ねた。


「ちょっと!先輩、今どき扇風機だけですか?」


何故か太郎は、暑さには耐えられない体質らしい。


「カバチタレ!この暑さをパワーに変化させてこそ、男だろ!」


「意味も筋も通らない理屈ですね。スポ根かよ。」


「相変わらず生意気だな、木村太郎!」


「フルネームすらウザい。」


ノ庄賢二郎は、全体的に体格が大きく黒スーツに黒ネクタイ姿というミスマッチな姿をしている。


賢二郎いわく、常に喪にふしてるらしい。


「先輩、元気そうですね?」


春男がニヤニヤしながら言った。


「おうよ!精力の源から生まれた男たる者、毎日鰻丼だ!今年で子供が五人目だ!」


「野球チーム作るならスカウトしますよ。」


太郎は、冷淡に呟いた。


「ところで頼んでいたブツは持って来たか?」


「はい。」


と、分厚い封筒を太郎は、賢二郎の前に出した。


賢二郎が、手を出すとその手のひらを太郎が叩いた。


「先輩…ただとはいきませんよ。」


「むむ、足元を見やがって。」


賢二郎と太郎はにらみ合いを始めた。



結局、賢二郎は、太郎に鰻丼を与えて封筒を手に入れた。


「先輩、あんまりあの事件は掘り起こさないほうが…。」


「バカ野郎が!だから、俺みたいな名も無き名探偵が調べてちょちょっと解決するんだろうが。」


「ふーん、迷探偵なんじゃないですか?」


「それより、お前、女は出来たか?ずっと引きずってんのか?それともその可愛い子ちゃんと…」


「じゃあ、帰ります。」


太郎は、暑い暑いと言いながら出て行ってしまった。


「喜多島、木村を頼んだぞ。あいつは、暴走するからな。」


「常にしてますよ。」


春男は、ため息をついて言った。


「あと、お嬢ちゃん今度一緒にお茶でも。」


春男は、梓を引っ張って事務所を出た。


「何か、全然、木村さんと似てないですね。ノ庄さん。」


帰りの車の中で梓は、賢二郎の印象を言った。


「あずあずが、昔の太郎を知ったら引くよ。」


春男は、汗で曇った眼鏡を拭きながら言った。


「相変わらず、暑苦しいエロジジイだな。」


太郎は、珍しくイライラした様子で言った。



そんな折に神隠しの事件が多発する。

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