第33話さ迷う
1週間過ぎても、太郎の所在は掴めなかった。
署内では、色々な憶測が飛び交った。
自殺、他殺、失踪。
警察上層部も、太郎の消えた足取りを探してるとの噂。
「喜多島さん…も心当たり無いんですか?」
梓が、田島という男の事を言い出せずに引目を感じながら仏頂面の春男に聞いた。
「知らねーな。あいつ、プライベートは秘密主義だったからよ。捜査も本来はチーム組むのに1人で解決しちゃうからな。仕事面でも俺の知らないあいつの顔があっても分からねーな。」
春男は、最近タバコを吸わない。
「心配ですね。何か事件に巻き込まれたとか?」
「無くはないよな。あいつが逮捕した犯罪者なんてたくさんいるし、恨んでる奴なんて山ほどいるからな。」
しかし、署内では、木村太郎の事に関しては勧告が出されて騒ぎ立てしないようにと上から指示か出された。
自宅の中も調べたがルナもレナもミルキーも消えていた。
ただ、その他の物は全て残されていた。
梓は、必死に見えない太郎の背中を追いかけた。
何かわたしに残してないか?期待した。
でも、何も見つからなかった。昔の写真やアルバムなどはなかった。交友関係も分からなかった。
梓は、想像してみる。太郎の行動を朝起きてルナとレナを連れてミルキーも小さな箱に入れて扉を開く太郎の姿を。
分からない…。
「木村さん…。疲れちゃったんじゃないかな。」
緑が、仮眠室の畳の上を触りながら言った。
「そうだよね…。ずっと事件解決したって何も残らないもんね。」
梓は、へらへらしている太郎を思い出して呟いた。
「まぁ、あいつが勝手に事件解決しちゃうからな。」
春男は、投げやりに言った。
「それに、事件が発生すると反射的に身体と頭は動くけど、心が置き去りになったんじゃない。いくら仕事とは言え、本来は、木村さんだって普通の人だもん。」
緑は、沈痛な顔をして言った。
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