第2話
意識が覚醒し始め、目蓋が開く。
周りは位が頭上と十数歩先の道は明るい。
腰には一振りの刀が差してあり、服装は紺色を基調とした着物に変わっていた。
先ずはステータスの確認をしようか。
name
リュート
race
鬼人族
sex
男性
age
18歳
job
侍 魔導師 忍者
level
1
permanentskill
分魂 黒鬼の王祖
uniqueskill
総庫 魔改造 完全複製
extraskill
解析
jobskill
明鏡止水 全属性魔法 忍法
normalskill
刀剣術 槍術 弓術 体術 馬術 礼節
へえ、最低限は何とかなりそうだ。
じゃあ刀と着物の鑑定をしようか。
※
無銘刀 希少級
唯一神アルファティナが自ら創った刀。
特殊能力は無いが、熟練の鍛冶師が創った武具を容易く断ち切れる程に、鋭く硬い。
※
※
妖狐の和装(一式) 神話級
唯一神アルファティナが自ら創った和装。
完全偽装、手加減、修行が付与されており、対価無しで発動出来る。
※
因みに武具・防具・道具には等級が幾つかあり、下から通常級、希少級、宝物級、英雄級、国宝級、伝説級、神話級、幻想級がある。
スキルは宝物級、国宝級を抜いた階級分けになっている。
と言う説明を終えたから、完全偽装、手加減、修行の効果を見ようか。
※
完全偽装 幻想級スキル
見た目を偽装する。
例え神であってもその偽装を見破る事は出来ない。
また、感触や造形も偽装後に合わせて変化する。
※
※
手加減 英雄級
ダメージを任意で減らす。
また死に至るダメージを割合ダメージに変える事が出来る。
※
※
修行 希少級スキル
発動時に身体能力が下がるが、獲得出来る経験値が大幅に増える。
※
うん、どれも良スキルだな。
じゃあ、完全偽装で角を隠しステータスも偽装するのと修行で身体能力を低下させておくか。
っと、少し体が重くなった気がするが問題になる程じゃないな。
さてと、この狭い路地を出ますか。
あ、そう言えば証明書は何処に有るんだろ?
三具庫か?
うん、有るな。金も三十万G《ガルダ》も有るな。
簡易証明書だけどな。
なら冒険者ギルドに行こうか。
にしても賑やかな街だな。
流石は王都と言うべきか。
冒険者ギルドの場所は知らないし、街の人に聞いてみるか。
「すいません、少し良いですか?」
「はい、どうしましたか?」
「冒険者ギルドの場所を教えてもらっても良いですか?」
「大丈夫ですよ。そこの噴水が在る広場を右に曲がった通りの左手側に有りますよ」
「ありがとうございます」
男性に教えてもらった通りに歩いて行くと、デカデカと『冒険者ギルドソリティア王国王都支部』と看板に書かれた建物を発見した。
中は大勢の人で賑わっていて、食事を摂っている人や談笑している人、掲示板と睨めっこしている人や受付に並んでいる人等、様々な人が居た。
種族も様々で、魔族と竜族、竜人族、の種族は揃っている様だった。
鬼人族は……居るな。あの女性は白鬼か。
あれ?俺は二本有るけどあの女性は一本しか無い?
まあ、気になるが、先に冒険者登録をしようか。
受付の列は三列有り、その内一つはかなりの人数が並んでいた。
少し位置を変えてその先を覗く。
ああ、成る程ね。美人な受付嬢さんに惹かれて並んでいると。
じゃあ、一番空いている所に行こうか。
五分程で俺の番になった。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。本日はどの様なご用件ですしょうか?」
「冒険者登録をしに」
「はい。では、此方に血を一滴お願いします」
「分かりました」
受付嬢からナイフを受け取り、指先に滑らせる。
血がツーっと垂れ、受付嬢が差し出した水晶に掛かる。
血は水晶の中に吸い込まれて消え、水晶は青白い光を放った。
「はい、完了です。こちらが貴方の冒険者カードとなります。先ずはご確認下さい」
※
リュート 人族 男性 18歳
侍 魔導師 忍者
ランク十級
任務達成数
所属
※
うん、合ってるね。
「確認が出来た様ですね。では、これにて終了です。あちらの掲示板から依頼は取ってきて下さいね。自分の一つ上のランクまでしか依頼は受けれませんがご承知下さいね。それと、基本的に冒険者同士の喧嘩には介入しませんが、冒険者以外への暴力を行ったり触法行為をした場合は最悪、冒険者カード没収の上新規登録不可、ブラックリストへの記録と賠償金を支払う事になりますので、絶対に行わないで下さいね。まあ、貴方はしないと思いますが規則ですので」
「分かりました。注意ありがとうございます」
さて、簡単な依頼からやっていくか。
やっぱりスライムとかゴブリンの討伐からだよな。
これにしようか。
※
依頼内容 ゴブリンの討伐
依頼人 冒険者ギルド
任務場所 王都東の森
討伐対象 ゴブリン
討伐証明 右耳を十個
成功報酬 2000G
※
※
依頼内容 ヒール草の採取
依頼人 ウィール錬金術店
任務場所 王都東の森
採取対象 ヒール草
提出最低量 ヒール草を十本を三束
成功報酬 最低6000G
※
※
依頼内容 薪の確保
依頼人 ディビアノ
任務場所 王都東の森
採取内容 薪
提出最低量 五十本
成功報酬 6000G
※
先程並んだ少女の受付に並ぶ。
「これをお願いします」
「はい、ギルドカードの提出をお願いします。……こ、こんなに受けるんですか?」
「ええ。何か問題が有ったでしょうか?」
「いえ、初依頼ですので一つだけの依頼じゃない事に驚いただけですよ。規則的には何の問題も有りません」
「そうですか」
「はい。受理されました。依頼内容はカード裏に提示されていますので、分からなくなったらご確認下さい。では、御武運をお祈りしています」
と言う訳で、王都から出た。
早速東の森へ入ったが、魔物の気配は感じられない。
なら、木を相手に武具を使う事の慣らしをしておくか。
先ずは刀から。
木の表面に滑らせる様に斬撃を加える。
袈裟懸け、左切り上げ、唐竹、逆風、逆袈裟、右切り上げ、左薙ぎ、右薙ぎ、魔力で強化、刺突。
おっと。倒れちゃったか。
じゃあ、他の木で次は槍の動きの確認をしようか。
斬撃、刺突、石突での殴打。
様々な方向や体勢からそれらを繰り出す。
うん。刀よりはこっちの方が馴染むな。
でも、両方鍛えた方がいいか。こっちがメインになるだろうが。
因みに三具庫の中には、刀が三振り、太刀が二振り、小太刀が二振り、脇差しが一振り、槍が三本 (ここまで全部鋼製。槍に関しては持ち手(柄)も)。
弓が二つ、矢が二百本、替えの着物(現在着ているのと同じ物)が三つ。
が入っている。
お遊びで二槍流で戦ってみようか。
まあ先ずはゴブリンを見つけなくちゃいけないんだけどさ。
おっ、ヒール草発見。しかも群生地。
ついでに薪になりそうな枝を取っておきますか。
よし。完了だな。
はてさて。ゴブリンどこに居るのかねえ?
ん?あれか?
解析。
※
ゴブリン 小鬼族 雄 3歳
棍棒術
※
合ってるな。
しかし、ほぼ人間じゃないか。
肌も少し青白いだけで肌色。
額には黄色く小さい角が生えているが、見た目人間の子供と変わらない。
敢えて異なる点を挙げるなら、理性の欠片も無い瞳。涎が垂れっぱの口。聞き取れない言語なのかも怪しい言葉。
はっきり言って、日本に居た頃の俺なら討伐するのを躊躇っただろう。
しかし、転生した事によって作り替えられてしまったらしい。
槍でその胴体を貫いても、その頭を穿っても、叩き割っても、吐き気も嫌悪感も湧いてこない。
湧いてくるのは、強者と戦いたいと言う戦闘欲。
しかし、それを否定している自分が居る。
酷い矛盾だと思う。『
……すいませんでした。
さて、依頼の十体所か集落も殲滅してたら五百体位集まっちゃった。
刀と槍と弓を試しながら討伐してたけど、やっぱり槍が一番シックリ来る。
ああ。勿論一本でやったよ?
慣れてない戦闘にスキルの補正が掛からない戦い方をするなんてあり得ないからね。
さて、街に戻りますか。
返り血は浴びなかったが、汗は掻いた。
無駄に動き回って、色んな戦い方を模索してたからな。
「おお、帰って来たか。ゴブリン退治にしちゃあ時間が掛かったもんだから心配してたんだぜ?」
「そうだったんですか。心配していただきありがとうございます。ですが、何の問題も有りませんよ。ただちょっと集落を幾つか潰してきただけなので」
「はあっ!?ウソだろ!?」
「ギルドカード見ますか?」
「ああ、見させてくれ」
※
依頼
ゴブリン討伐 未提出
ヒール草採取 未提出
薪確保 未提出
討伐
ゴブリン 五百七十八
オーク 百八十二
ゴブリンジェネラル 十八
オークジェネラル 三十二
ゴブリンキング 一
オークキング 一
※
「ふぁっ!?」
「あはは、ちょっとやり過ぎてしまいまして」
「やり過ぎたとかの話じゃないだろ……まあ、魔物の数が減るのは良い事だからな。これからも頑張れよ」
門を通って、ギルドへ向かう。
空を見上げると既に緋色に変わっており、夕方を知らせる鳥が鳴いていた。
「こっちにも鴉と似た様な鳥が居るんだな」
そう言えばまだ宿を取っていなかったな。
報告したら急いで向かうか。
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