第3話 いつもこう

「お嬢様、何度言えば分かるのですか?」


今日もいつもの習い事である。

部屋に響くのは少女と師の声である。


「だっていつも出来ないのよ。」

「出来るようになる為のレッスンでございます。」

「練習したわよ。」

「量が足りないのか、質が悪いのでは?」


固いわねぇ、とぶつぶつ師に言う少女。レッスンは再開される。


今日のレッスンは


「んもう! また間違えてしまったじゃない! ここの連符が難しいのがいけないのよ。」


ピアノである。


そんな光景を部屋の隅から見ながらため息をつく1人の付き人がいる。いつも同じ、に飽きたのなら色々な曲が出来る音楽を習ってみては、と薦めたのは自分であった。


社交の場や一つの趣味として何かになればと思ったがまさかここまでとは……。


頭を抱えたいばかりである。


さんはい、教師の声が部屋に響くとリズムがなんとも取りづらい音色が流れ出す。もはやこれは『音色』なのだろうか。


この後もそれは凄いやりとりをしていたが、やがて時間が過ぎ、教師がお帰りになった。


するとどうだろう、さっきまでとは大違いの表情をしている少女がそこにいた。



そして一言。


「ねぇ、ガレイ。おやつはまだかしら?」

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