第36話 新人がやってきた!
広報活動は私たちに予想だにしない影響をもたらした。なんと、選手志望者が集まって来たのよ。といっても5人で、そのうち2人はちょっと厳しかったんだけど。
で、入団テストに合格した選手を発表するために、再び記者会見を開くことになったのね。だけどその前にマスターのアイデアで、私も選手登録されることになってしまったの!
これはもちろん、話題性というかノーブラの知名度をさらに押し上げるためのお飾りとしてだったんだけど、会見での質問が私に集まってしまったのは誤算だった。
「ミオ選手、ポジションはどこですか?」
「QBで~す♡」
「ミオ選手、女性初のスポーツ選手とのことで注目が集まっていますが、すでにチーム内での貫禄は十分のようですね。選手として今後の抱負をお願いします」
「一日も早くウェイトレスタッチダウンを決められるよう頑張ります!」
「ミオ選手、今後注目の選手を教えてください」
「それはもちろん、ここにいる同期入団の3人です!!」
「ミオ選手、現在のレギュラーメンバーの中で好きな選手は?」
「攻撃陣ではセンター選手とベン選手ですね。守備陣はカルナック選手とティポー選手が頼りがいがあって好きです」
「ミオ選手、トミー選手はいかがですか?」
「仲良くさせていただいてますよ。もちろんホークルじゃない方とですが(笑)」
「ところでミオ選手、実はご当地アイドル『マナミーズ』として活躍されているという噂を聞きつけたのですが」
「こ、こんなところで私の黒歴史をさらさないでください(汗)」
ところが、笑いごとではすまなかったの。マスターが突然、
「実はここに、マナミーズの活動の映像があってですね……」
まてまてまてまて! 誰だよ! あそこに残って撮影していた魔術師は!
「ミオ選手、この三人の中央で一番ノリノリなのはどなたですか?」
「……すみません、うちの社長です」
最悪なことにこの記者会見は全国区で報道されていたの。その反応は当然、
「このダンスが酷い!(笑)」
というもので、マナミーズは全世界的に有名になってしまった……。
というわけで、思わぬところで醜態をさらしてしまった私ですが、そんな努力の甲斐もあってか、チームブラウザーバックス、収益はかなり安定してきました。話題性も業界No1!
もちろん国がバックアップしているチームとは規模が全然違うけど、それでも運営の見通しは立ってきたし、良い問い合わせがひっきりなし! ナオの話では商品の在庫を自宅に抱えるとか無理で、きっちりビジネスとしてやるって言ってたから、役員報酬が楽しみだわ(笑)。
ノール・コロシアムのテナントもさくさくっと決まってしまい、平均観客数予測は一試合当たり一万二千人にまでふくれ上がりました。え? まだ全然少ないって? だから地方都市レベルなんだってば。だけど来季からは放映権とかコロシアム入場料とかを各国で決めるらしいから、ここは是非増やしたいってマオは言ってた。
そんなこんなでいろいろとばたばたしちゃったけど、私はチームのためにできることをこなすのみ。もちろん次戦に向けての調査も始めているわよ。今回からは順位表も掲載するわね。
1.ブラウザーバックス 6勝1敗
2.シックスティナイナーズ 5勝2敗
3.ダメンズ&ドラゴンズ 5勝2敗
4.マルデラバーズ 5勝2敗
5.キャッツ&ドッグス 3勝4敗
6.ポメラニアンズ 3勝4敗
7.クラウゼヴィッツ 3勝4敗
8.ダークダックス 2勝5敗
9.ワナビーズ 2勝5敗
10.ジャイアントカプリコーンズ 1勝6敗
今週戦うヌーディスト・ポメラニアンズ戦についての情報だけど、彼らはここまで6位。ただ、直近で3連敗中。そしてここも新しいマネージャーを招聘したらしい。嫌なパターンよね。レイモンドって人で、ナショナルチームを率いた経験があるって噂。マスターに知っているか聞いたところ、マスターの世界じゃよくある名前らしくて、それだけじゃわからんって怒られちゃった。
で、ヌーディスト国ってゴブリンの国なのね。そのせいかポメラニアンズの選手もゴブリンとホブゴブリンだけで構成されているんだけど、チーム登録人数がなんと千人を超えるの。しかもレギュラーメンバーがまったく固定されていなくて、ローテーションもめちゃくちゃ。
だからスカウティングがほぼ、無意味なのよ。しょうがないからこれまでの試合を選手に見てもらうだけで勘弁してもらった。マネージャーも変わるし、ベンチ入りの50人に誰が選ばれるかさえわからないんだもの。
ちなみに彼らがこれまで勝ってきた相手はワナビーズ(9位)と前回対戦したキャッツ&ドッグス(5位)、そして新マネージャーが就任する前のクラウゼヴィッツ(7位)なんだけど、どのチームとも組織的に戦って良い勝負をしていた。ラインに抜擢されるホブゴブリンの力強さとスピードに優れるゴブリンの組み合わせは確かに脅威かも。
「そういえばマスター、相手マネージャーのフルネームわかりました。レイモンド・メネクさんだそうです」
「聞いたことないな……」
「ナショナルチームを率いたこともある監督だそうです」
「記憶にないが」
「そうですか」
「ん? まてよ?」
そう言ってマスターは何かを思い出そうとした。そして、
「あ! わかった! あいつだ! 最悪な奴だ!」
嫌な予感がしました……。
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