第1幕

☆ 落ちこぼれと夢の女の子 ☆

第1公演 : 佐倉実姫の憂鬱

佐倉実姫さくら みきは深く、ため息をついた。


年に1度だけ行われ、2千万もの応募の中からたった1人だけが選ばれる「スタドリプロジェクト」。


実姫は今年の「スタドリプロジェクト」の最終選考である「スターオーディション」開催地である浜鳴村はまなきむらに参加者として訪れていた。


3歳から子役として芸能界入りし、「天才子役」とまでは言われなかったがそこそこ活躍した。


しかし、14歳になり子役を卒業。卒業後はアイドルグループ「fairy light」で活動している。そんなの16歳。


・・・。ツッコミ待ちなんだけどな。


それにしてもこの村は、でかい。


受付を済ませた時に「広場にてしばらくお待ちください」とあったので、その広場に行ってみて驚いた。


50人全員がすっぽり入ってしまうであろう広い野原をそのままに全員分の椅子が置かれていた。


実姫は、自分の受験ナンバーである「03」と書かれた椅子に座り、なぜか圏外の携帯に映る自分をぼぅっ、と眺めていた。


そのとき、


「佐倉実姫ちゃんですよね!?」


実姫の頭上に甘い、可愛らしい声が降ってきた。


「わっ、わ、私!実姫ちゃんの大ファンなんです!!」


声の主は可愛らしいが、美人・・・ではない。

しかし、ふわりと優しく膨らんだ胸のあたりに「43」と書かれた大きめのバッチが付けられているので、おそらく「スターオーディション」の受験者なのだろう。


「あ、ありがとう。あなたはどこの事務所の子かな?」


「あっ、ち、違うんです!えっと、私どこにも所属とかしてないんです。」


ほんの一瞬胸のあたりがチクリと傷んだ。

無意識に、苦笑いをしているこの子を睨みつけてしまいそうになる。


「へぇ・・・、お互い頑張りましょうね」


募る苛立ちを抑えつつ、アイドルとして最高の笑顔を見せる。


「はい!!あっ、あと最後に・・・」


「握手、いいですか・・・?」


実姫は眉間にしわを寄せながらも、握手を交わしてやる。


緊張感が全くもって感じられない。


「ありがとうございま〜〜す!!」


笑顔で大きく手を振る彼女に適当に手を振りつつ、小さな舌打ちをかます。


素人みたいな一般人が、実姫すら2回も失敗したオーディションに選ばれるなんて到底信じられない。


きっと、親のコネか金だろうに、そんな事だけでは芸能界なんてやっていけない。すぐ辞めてしまうに決まってる。


・・・、でもあの子。私のファンだって言ってたよね・・・。


出てくる皮肉とは裏腹に、少しだけ暖かいほんのりした気持ちになってしまう自分に、


佐倉実姫は深く、ため息をついた。

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