気を揉むことに長けている

 ……邪魔、だったろうか。

 自分が隅に位置取りたいという理由だけでこの席を取ったが、見ればここにはコンセントやUSBポートがある。コンセントがある席はよく見るがUSBも挿せるなんて珍しいな、便利だな、なんて一瞬考えが逸れたけれど、そうだ、本来そういう、これを必要としている人が座る席だったんじゃないだろうか。

 ひとつ空席を挟んだ男性はノートパソコンで作業をしている。もちろんコンセントを使っている。まだ熱いくらいのカフェラテをすすり悪いことをしている気分をかき消そうとしていると、女性が隣の席に来た。

「お隣、いいですか」

 作業をしている男性にだけ声をかける。私が眼中にないわけではないと思いたい。ただその男性の方が、作業をしていて忙しそうで、何なら使っていたスペースも少し空席側にはみ出していたから――きっとそうだ。

 私はというと、カフェラテの入ったマグカップひとつと、さっき衝動買いした本を一冊しかテーブルに置いていないのだから。

 女性はスムーズな動きでスマートフォンの充電器を鞄から取り出し、コンセントに挿した。

 やはりそういう席なのだな、と気持ちが沈む。なぜこうも色々勝手に考えてしまうのだろうか。こういった思考をどこかへやる為にも、さっき買った本を少しでも読むべきだな。

 そうして気づけば、カフェラテはぬるくなっているのである。

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