メモ帳とペンは持ち歩くべきである

 メモ帳とペンは持ち歩くべきである。たいして大きくない鞄にも入るような小さなものが良い。何ならポケットに入るくらいのものの方が好ましいかもしれない。いついかなる時もメモが取れる装備というのは心の余裕と、ついでに財布の余裕も生む。

 自分は出先で咄嗟にメモを取ることができなくて困ることが多い。散歩中、買い物中、ふと浮かんだことから文章や風景を思い描く。それを帰るまで憶えておく自信がない。じゃあメモを取っておこう。そう思った時、鞄からすぐにメモ帳とペンが取り出せたためしがない。

 メモ帳を持っていないわけではない。なんなら人並に手帳も持っている。たいしてスケジュールの埋まらないカレンダーを時折眺めたりもする。それなのに、軽い気持ちで出かける鞄にはその手帳を入れていない。メモ帳もペンも入っていない。

 困ったことに、そうして軽い気持ちで出かけた時に限って何かを思いついたりメモを取りたくなってしまう。一度そう思うとメモを取らないと落ち着かない。いつまでも忘れないように同じことを頭の中で繰り返すのは疲れる。新たな思考もできない。

 ではどうするか。雑貨屋や文具屋に寄って、メモ帳とペンを買うのである。

 そしてゆっくり腰を落ち着けてメモを取るためにカフェに寄るのである。

 すると思いの外とんだ出費になってしまう。ただでさえ寂しい財布が更に寂しくなって、やっと書けたメモに満たされた気持ちはすぐに「やってしまったな」という後悔に変わる。

 今どきは携帯電話を持っているのだからメモ帳機能を使えばよかったんじゃないかという自分と、いやいやこういうものは手書きでやった方がいいんだという自分が、今日もまた喧嘩している。

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