第12話黒王子に白王子
周りがざわついている。
その理由は、咲自身が一番良く知っている。
軽蔑の眼差し?ふん!そんなの関係ないし!
購買部でパンを買おうと並んでいると女の黄色い声がした。
こんな感じ。キャー!黒王子!
黒王子だか目玉焼きだか知らないが咲よりも軽く背の高い男子が横入りしてきた。
なので、咲はその無礼者の首を掴んで引っ張った。
そして床に倒れた。
「誰だ?俺様の首を掴んだのは!」
キャー黒王子が倒れてる!
また黄色い声だ。
「わたしだけど文句ある?横入り野郎が!」
「何だとこのアマ!」
二人はにらみあった。
しかし、お互いに引き離された。
咲は、愛に、黒王子は女子達に。
「何で止めるのよ?」
咲は、愛に聞いた。
「知らないの?黒王子。」
「知らない。ってかあいつが割り込んで来て順番守らないのがいけなくない?」
愛は、咲の手を強く握った。
「確かに愛は、正論を言ってる。でも、黒王子には効果無いよ。」
「だから、黒王子って何よ?」
「アメリカスクールから転校して来たヤリチン男だよ。」
「何だ、ヤリチン男か…。」
「話すだけで妊娠するって噂だよ。」
咲は、爆笑した。
放課後、体育館に黒王子が現れた。
「久しぶりですね。須賀先輩。」
「お前とまたバスケするとはな。」
「尾崎流星です。よろしく。」
「遅刻だ!」と体育館に入って転んだ男子が来た。
「おお、奇跡か。」
「尾崎奇跡です。」
黒王子と白王子が揃った?
そっくりな顔、身長だった。
「双子だからな。」
と直也が紹介した。
「あー!デカ女!」
咲は、そっぽを向いた。
流星は、歯ぎしりした。
「マネージャーの桜井咲です。」
満面の笑みで咲は、自己紹介した。
練習中、未夢が咲に話しかけてきた。
「もう取り込んだの?」
「何が?」
「黒王子よ。」
「わたしは、知らないけど。」
愛と渚は心配そうな顔をした。
帰り際に、流星が咲に
「覚えてろよ!俺に恥かかせた事。」
「もう忘れたし。」
咲は、愛と渚の腕を掴んで体育館を出た。
「咲、ヤバいよ、黒王子に目をつけられてるよ。」
「大丈夫。わたし失うもんなんて無いもの。」
渚は、泣き出した。
「わたし達がいるじゃん!」
「ありがとう。忘れてた。」
愛が、笑って家路に着いた。
家に、帰ると光がいなかった。
たまに、光は外に出て朝になって帰って来る事がある。
部屋に入ると咲は、涙を流した。
久しぶりに涙が出た。
アイツが死んだ時も涙が出なかったのに…。
友達、友情なんて小さな物と考えていた。
ちゃんとわたしを見てくれてる人がいるじゃん。
自分自身を咲は、抱きしめた。
「姉ちゃん、どうしたの?」
いつの間にか帰って来た光が聞いてきた。
「何でもない。」
「強がりだな。」
光は、自分の部屋に入って行った。
次の日、下駄箱に黒王子からの手紙が入っていた。
ガチンコ勝負だなと思って咲は手紙を開いた。
《放課後、屋上で待ってる。》
咲は、武者震いがした。
放課後、屋上に咲は、来た。
五人の男子の中心に黒王子はいた。
「女一人に随分多い人数なんだね。」
「アホかよ。マジで一人で来たのかよ。」
「情けない男…。」
内心、しまったと咲は思っていた。
「ビデオ係と写真係がいる。お前の恥ずかしい写真を学校中に流してやるよ!」
「ぞくぞくするな。」
ビデオ係の男とカメラ係の男が咲にレンズを向けた。
「おい!女の子一人に随分な数だな。」
息を切らして昇と東四郎が駆け付けた。
「チビチビコンビが、何か用事かよ?」
流星がバカにしたように聞いた。
「用心棒だよ、うちの大切なマネージャーには手は出させない!」
と昇は、叫んでカメラと写真を持っている男を殴った。
「正当防衛だやっちまえ!」
流星の声が震えていた。
何故かというと二人が意外にも強かったからだ。
流星以外の男は、みんな昇と東四郎が倒してしまった。
「まぁまぁ、待てよ。ジョークだよ。テレビであるだろ?ドッキリだよ。」
流星の顔面が、東四郎の正拳突きでブ男となった。
「おい!桜井、良い友達持ったな。」
愛と渚が屋上に入って来て咲に抱きついた。
「お前の様子が、おかしいから俺達を呼んだってわけだ。感謝しろよ。」
次の日、流星と他男子は退学処分になって
サルと引きこもりがヒーローになった。
季節が、変わり暑くなってきた。
学校のヒーローになった東四郎だがバスケは全くダメダメだった。
何度も直也に怒鳴られている。
昇は、経験者だけにバスケがみるみるうちに上手くなって一年生ながらレギュラーになった。
ある日、帰り道で愛が昇と東四郎どっちがカッコいいか聞いてきた。
当然、渚は昇君が好きですと顔を真っ赤にして言った。
咲は、どっちも好きじゃないと答えた。
「じゃあ、東四郎君にわたし告白して良い?」
「え?マジで?」
「うん、男らしいし優しいし。」
愛は、嬉しそうに言った。
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