第11話告白

部活に行く途中で咲は、呼び止められた。


「あ、あのー加藤東四郎と言います。」


「はぁ、何か用ですか?」


「好きです。付き合って下さい。」


「……。」


久しぶりに、告白されて嬉しかったけどわたしよりもチビなんだよな。


「牛乳好きですか?」


「あまり…。」


「牛乳毎日飲んでわたしの身長越えたら付き合っても良いですよ。」


「はい!頑張ります!」


と東四郎は言って廊下をダッシュしてその場を去った。


変な子…。


「遅刻だぞ!」


直也が、咲にガミガミ言ってきた。


頭にきたので


「告白されてたので遅くなりました!」


と大声で言った。


体育館は、静寂した。


「練習始めるぞ!」


と直也は言った。



「本当?」


愛が咲に聞いてきた。


「うん。えっと加藤…東四郎って言ったかな。」


「告白は、OKしたの?」


「いや、わたしより小さいからわたしの身長越えたら付き合っても良いですよって言っておいた。」


「ヤバいよそれ!」


「何で?」


「今の男子はこれから身長伸びるよ!」


「ふーん、そっか。」


気のない返事をした咲に愛は呆れた。


「羨ましいな…。」


渚は、小さな声で言った。


「渚にはサルがいるじゃん。」


咲は、一生懸命練習している昇を見て言った。


「告白された事ないもん。」


「そうよ、渚は可愛いけど、近づいてくるなオーラを出すから誰も告白出来ないのよ!」


愛は、言った。


「ふーん、そんなもんか…。」


咲は、あっけらかんとしている。


「ちょっと調子乗ってない?」


未夢が、咲に突っかかってきた。


「何が?」


「告白なんてわたしは山のようにされたわよ。」


「じゃあ、良いじゃん。」


「普通隠すもんだし。」


「ゴリラがうるさいから黙らせただけ。」


「そういう時だけ女を使うんだ。」



「別に良いでしょ?女なんだから。」


未夢は、ため息をついてそっぽを向いた。


部活が、終了して咲、愛、渚は帰り道で他愛もない話をしていた。


「もう、四月もおしまいだね。」


愛が言うと三人共、桜の木を見つめてた。


何かが始まってまたゼロになるというわけだ。


家に着くと光が珍しくリビングで女の子とテレビを見ていた。



「お帰り姉ちゃん。」


光は、そう言うと女の子とテレビを見て爆笑していた。


咲は、シャワーを浴びて部屋でネットを見ていた。


未夢の言葉を思い出す。


山のように告白されたか…。


確かに未夢は小悪魔的存在だ。


男の心なんてウィンクひとつで奪えるだろう。


わたしは、どうだろう?


考えるのを止めてベッドに入った。



次の日、加藤東四郎を咲は、探していた。


しかし、見つからなかった。


理由は、不登校らしい。


住所を教えてもらい部活をサボって東四郎の家を訪ねた。


インターホンを押すと母親らしき人が出て来た。


「あの、東四郎君に会えますか?」


「部屋からは出てこないと思いますけど…。」


部屋は二階にあった。


「加藤君!桜井咲だけど!」


ドアの向こう側から物音がした。


「あのさ、何で昨日は学校に来たの?」


「…。」


「話したくないなら一方的に話すけど良い?」


咲は、誰にも話した事を永遠と話し始めた。


そうすると


「明日、学校行きます。」


と声がした。


咲は、別に不登校のままで良いと思っていた。


「じゃあ、明日。」


と言って家に帰った。


次の日、新入部員が一人、入部してきた。


東四郎だった。


東四郎と咲は、お互い何も話さなかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る