第10話希望

「あぁ、やっぱりカッコいい。田中先輩。」


「咲って面食いだっけ?」


愛が、嬉しそうに聞いてきた。


「うん、男もやっぱり面よね、面。」


「あのー、わたしもマネージャーになりたいんですけど…。」


視線を、合わせない物静かな女の子が聞いてきた。


「鎌倉じゃん、どうしたんだ?」


昇が、駆け寄って来た。


「あわわ、こんにちは昇君。」


「俺達、幼なじみなんだよな。」


「サル!聞いてないし。」


「俺は、サルじゃねーよ!」


昇と咲がにらみ合いを始めた。


「マネージャーになりたいって言ってるわよ!」


「そうかよ!鎌倉、自己紹介してやれ!このデカ女に。」


鎌倉と呼ばれた女の子はモジモジし始めた。


「あのーえっと、鎌倉渚と申しますよろしくお願いします。」


「わたしは桜井咲、このチンチクリンが高橋愛、わたしの友達。」


「ちょっと!チンチクリンはないでしょ!」


愛は、咲に文句を言ってきた。


「てか、何で鎌倉がマネージャー?お前、中学生の時、吹奏楽部だったじゃん。」


昇は、不思議そうな顔をした。


渚は、モジモジし始めた。


「前からマネージャーに憧れてて。」


「マネージャーに?変わったヤツだな~。」


「朝日!練習中だぞ!」


須賀に呼ばれて昇はコートに戻った。


渚は、またモジモジし始めた。


「ねぇ、あのサルのどこが良いの?」


「え?」


渚は、真っ赤な顔をして下を向いた。


「咲、ストレート過ぎるよ。渚ちゃんよろしくね。」


愛は、渚の肩を軽くポンと叩いた。



帰り道、咲と愛と渚は誰が好きなのか話していた。


「朝日君は、わたしのヒーローなんです。」


渚は唐突に言った。


「どういう事?」


すかさず咲は、聞いた。


「わたし、暗いし、極度の対人恐怖症なんです。そんなわたしに声をかけてくれたのが朝日君なんです。朝日君は、ずっと話しかけてくれてわたしは頷くだけでしたけど…中学三年間幸せでした。だから今度はわたしが朝日君に恩返ししようと思ってマネージャーに志願しました。」


「ふーん、あのサルがね。」


いまいち咲にはピンとこなかった。




「素敵な話し。」


愛の瞳がキラキラしている。


「お二人は、好きな人いないんですか?」


渚が、咲と愛を見て聞いてきた。


「わたしは、田中大輝先輩かな。」


「でも、田中先輩には、金本さんがいますよね?」


「わたしは、奪うつもり!」


「え~スゴいですね。」


「渚ちゃん、まともに受け止めなくて良いからね咲の場合、妄想入ってるから。」


「妄想じゃないし!」


「高橋さんは?」


「わたしは、秘密。」



「ずるーい!愛だけ秘密なんて!」


咲が、ブーブー言っている。


「恋は乙女の花園ですからね。」


渚の言葉に二人は感心してしまった。


「詩人みたい。」


愛が、言った。


渚は、顔を真っ赤にしてうつむいた。


散りゆく桜の木の下で三人は無邪気に戯れていた。

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