第13話視線
「合格?」
「ええ…そうよ桜木」
「なんに?」
「今のは、入部テストよ」
「入部?」
みやび様は、シルキーボイスで何を言ってるんだ?
入部だと?
「ちょっと待ってくれ。
俺は、入部するなどとは言ってない。
それに……ここが何のクラブなのかもしらないんだ」
「ここは、知っての通り『ロダン部』よ」
はぁ?
「ロ…ダン部?」
「ええ…そうよ、ここはご存知『ロダン部』なの」
「いや……知っての通りとか、ご存知とか、言っているが、俺はそんな部活は、聞いた事がないぞ…」
「そうなの……って事は、桜木は勘は鋭いけど、アンテナは伸ばしてないって事ね」
おお、少しだけ褒められたぞ。
そして、すぐにけなされたぞ。
「そう…なるのか?
まぁ、いいが……それで、何をする部活なんだよ?」
「…!」
ん?…なんだ、みやび様が急に不機嫌な顔になった…
俺は、なんかまずい事を言ったか?
「桜木……どうしたの?…あなた、さっきから質問ばかりしてるわね…」
「ああ…入部やら、部活やらと、わからない事ばかりだからな」
「そう……どうやら私の見込違いだったのかしら?」
「はぁ?」
「あなたの頭蓋骨の中に入っているのは、作ったばかりのカレーかって言ってるのよ!」
「はぁ?」
アゲイン。
「少しは、自分で考えてみようとは、思わないワケ?」
「……」
…ほう……なるほど。
確かに、みやび様の言う通りだ。
俺は少し、混乱していて、自分の頭で考える事を放棄してしまっていたかもしれない。
ちょっと、考えてみよう。
……ロダン部?
ロダンと言えば、有名なのは、フランスの彫刻家、オーギュスト・ロダンだ。
その代表作には、「地獄の門」があり、その中に「考える人」という像がある。
それと関係しているのだろう。
ロダンを研究する部活…という事か?
それとも、彫刻部だろうか?
ってか、それは美術部だろ?
しかし、この部室は、どう見ても美術に関連するものじゃない。
ただの休憩室みたいなもんだ。
なんだ?
一体、なんの部活なんだ?
俺は、アゴに指を当てて考える。
「フフフ……どうやら、チャツネが入ったようね!
そう!それよ!……桜木!」
チャ…チャツネ……なんだ?
急に果物のぐちゃぐちゃしたのが、入ったぞ?
そして、みやび様は立ち上がって腰に手を当て、俺を指差す。
「桜木!…それが、我がロダン部の正しい姿よ!
覚えておきなさい!」
!!
「ま…まさか……『考える人』の形をする…それがこの部活の内容……!」
「違うわ」
違うんかい!
「そんなバカみたいな事、誰がするのよ」
ごもっとも。
「ここは、『考える人が集まるサロン』なの」
「考える人…?」
「そう、この世には様々な謎が溢れている。
なのに、ほとんどの人は、巷に氾濫している情報に踊らされ、与えられた物を消費するばかりで、
自分の頭で考える事を忘れてしまった…」
なんか、始まったぞ…
「でも、そんな事では、誰かの作った考え方をなぞるだけで、正しい自分と向き合う事ができなくなってしまう。
しかし、人はそれを自分の考えだと誤解したまま、生きていくの。
でも私は、そんな誰かに作られた人間にはなりたくない!
その為には、どうするか?
そう…考えるのよ……それが、この部活『ロダン部』なの!」
……おお…ちっとも、わからん。
ほんとに、そのふろしきで合っているのか?……みやび様よ?
「しかし、バカにしないで……ロダン部…それは、凡人どものはびこる世間を欺くカリソメの姿……
実は、このロダン部には、裏の顔があるの……」
ちょっと待ってくれ……
俺にはまだ、ロダン部さえまともに理解できていないのに、早くも裏の顔が出てきそうだ。
展開のスピードが急に加速している!
どうした!?
アシスタントを雇ったのか?
編集者が変わったのか?
考えるヒマを、与えてくれないじゃないか!
だが、みやび様は、言いたがっている。
ロダン部の裏の顔を、早く言いたくてしょうがなさそうだ。
RGだ。
こういう奴には、言わせてやるしかない。
すでに、もう人の事など、関係ないんだから。
ただの言いたがりになってるんだから。
ならば、言え!
みやび様よ!
裏の顔とはなんだーー!
「ロダン部……その裏の顔は、この欺瞞に満ちた世界を、誠で研がれた光の刃で切り開く…
そう……それこそが、我ら…『放課後 殺人クラブ』なのよっ!!
ドーーーン!!」
がーん!!
「そうなのかーー!
じゃあ、俺は帰る…」
「待ちなさーーーい!!」
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